「アビエイター」04年米 評価4(5点満点) メジャー度3

監督:マーティン・スコセッシ
出演:レオナルド・ディカプリオ、ケイト・ブランシェット、ケイト・ベッキンセール、
   ジョン・C・ライリー、アレック・ボールドウィン他

 両親から受け継いだ莫大な遺産を元手に、素人ながら、第一次世界大戦における空中戦を八十機という戦闘機と二十数台に上るカメラを駆使した壮大な映画に纏め上げ、また、飛行機の高速化、航空会社を買収し国際線を含む航空網の発展に執念を燃やしたハワード・ヒューズの史実に基づいた伝記映画であり、02年の「ギャング・オブ・ニューヨーク」に続くスコセッシとレオのコンビによる作品。

 強迫性障害を持ったヒューズは、晩年は奇人としての生涯を送り、表立って燦然と歴史に名を残した人物ではないものの、特に航空機にかけた執念は、その目を見張る発展振りに大きく寄与したはずであり、彼のエネルギッシュな生き様と合わせ、映画女優とのスキャンダルにも事欠かない“色”の部分でも、映画としてとても魅力的な題材である。ただ、彼自身は190cmの大男で、小柄で痩せ型のレオは、成りきり演技は文句ないが、イメージ的に違和感を感じてしまう(特にアメリカ人にとって)のは致し方ないところか。

 ここ数十年、伝記として語れるほどの人物がほとんど出ていないし、そうなるほどおおそれたことをできる時代ではないため、最近は伝記物は一般受けしないが、昔はよく製作されていたジャンルで、本作は3時間という長尺ながら、巨匠スコセッシは丁寧に、メリハリをつけ、昔の伝記映画に劣らず格調高く仕上げていて、これはこれでよくできた作品であるが、映画、航空機への2点の情熱の矛先、女優たちとのスキャンダル、精神的な病という接点の少ない題材をそれぞれ丁寧に描き、生涯の中盤で終わってしまうため、なんとなく人物像がぼやけてしまった感は否めない。