「カールじいさんの空飛ぶ家」 09米 評価3.5(5点満点) メジャー度5

監督:ピート・ドクター
出演:アニメ

 子供も将来映画好きになってもらいたいという思いから、私は努めて子供と一緒に映画館に行くようにしているのだが、もともと子供に宮崎駿映画以外は見せないで育てた私は、もちろん、ピカチュウやらドラエモンなんかに一緒にいこうという気はさらさらない。といって寡作の宮崎駿作品を待っているわけにもいかず、また、最近のは子供には難解なこともあり、子供と見に行く映画としては、大人の鑑賞にも堪えうるピクサー映画が現状では恰好の対象。

 冒険が大好きな子供時代に知り合ったカールとエリーはそのまま結婚。子供には恵まれなかったが、幸せな生活を送ってきた。しかし、エリーが先立ち、残されたカールは昔からの家に静かに暮らしていたが、開発が急速に進む中、老人ホームに入ることになってしまう。しかし、エリーの残した「私の冒険ブック」を振り返ると、彼女の夢は南米の幻の滝の上に住むことであり、カールは一念蜂起。たくさんのヘリウムガス風船をつけて家ごと旅に出る。

 宮崎駿の言うとおり、冒頭のカールとエリーの回想シーンが一番心に残る。その後はそれなりに楽しめるが、なんとなくしっくり来ないというが、映画としてバランスが悪い印象。回想シーンと風船で旅立つまでがとても現実的に描かれている反面、特に、いとも簡単に(GPSを落としてしまうことが後で全く生かされない)南米、しかも幻の滝の近くに着いてしまうという非現実性のギャップの激しさや、その後もあまりに人に懐き、人の言うことを理解する怪鳥、言葉をしゃべる犬、設定上90歳以上と思える元冒険家と70以上のカールじいさんの身体能力など、アニメであるので大目に見れる部分はあっても、「モンスターズ・インク」や「ウォーリー」のような非現実社会が舞台ではないため、やはりやりすぎ感が否めないというところに、原因があると考えられる。