「崖の上のポニョ」 08日 評価3(5点満点) メジャー度5

監督:宮崎駿
出演:アニメ

 重鎮宮崎駿の4年ぶりの新作。5歳の宗介はある日海で弱っている”人面魚”を助ける。宗介はその魚を体型から”ポニョ”と名づけ、バケツの中で飼うことに決める(宗介はポニョを金魚と思っている)が、ポニョは人間でありながら地上の世界を捨てた藤本と”海の女神”というような存在の母の間に生まれた、特別に魔法が使える魚であり、まもなく藤本に取り返される。宗介の思いやりを忘れられないポニョは魔法で5歳の女の子に変わり、宗介のもとへと向かう。しかし、昔から”人面魚”が陸に上がると大変なことになるという言い伝えがあり、実際そのとおりになってしまう。

 想像力に富んだ展開、表現力はさすがというものだし、ポニョのキャラクターの作り方も相変わらずのうまさを感じさせるが、何か芯に食わないというか、私の好みの境界の外にある感じがしてしまう。

 その原因は、物語の軸足が人間社会と御伽噺の世界のどちらに置くのかが曖昧で且つ、どちらかといえば後者にあることに結論付け出来る。私は海外産のアニメが苦手だが、それは日本人にとってはオーバーすぎる表情の作り方や、踊っているような不自然な身体の動きが、どうしても現実の人間社会のものと思えないわけで、結果として何にも感情移入できないからだ。宮崎駿作品の中で一番嫌いな『紅の豚』は、軸足が曖昧で、主人公は豚になった人間ということで全く受け入れられないため、観ながら寝てしまったものだ。『ナウシカ』と『ハウル』は軸足は御伽噺だが、映画の背景全体がそうなっていて、それに入り込めさえすれば何も違和感がない(『もののけ』もこのジャンルだが、話的に好きではない)。『ルパン』『ラピュタ』『トトロ』『魔女』は軸足が人間社会で、そこに非常に魅力的な想像が入っている。『千と千尋』は物語の大部分は御伽噺だが、軸は人間社会。このように私の映画の嗜好では、現実社会とのつながりが感じられるか否かというのは重要な要素で、世界観的に『豚』に似ている本作は中途半端で、どうしても心の中に話が入り込まないのだ。

 それと、声優が前作と同じく芸能人にやらせているのだが、その抑揚のなさが、御伽噺の世界であるので、余計不自然である(特に藤本役の所ジョージ)。