「世界の中心で、愛をさけぶ」 04日 評価3.5(5点満点) メジャー度5

監督:行定勲
出演:大沢たかお、柴咲コウ、長澤まさみ、森山未來、山崎努他

 東京で働く朔太郎は、結婚のための引越しを行うその日に、突然婚約者の律子が行方をくらましたことを知り、朔太郎と律子双方の故郷の四国の空港にいることを偶然TVで見、十数年帰っていない故郷へと律子を追う。しかし、朔太郎にはその故郷に忘れることの出来ない思い出があふれていた。非の打ち所のない女子高生亜紀との交際、しかし亜紀は、白血病で死んでしまったのだった。

 映画版、テレビ版共にヒットを記録し、セカチューとよばれて大ブームとなった。白血病で恋人が死ぬというべたな展開ながら、意外と最近涙腺が弱い私にとってはいいかもと思ってみてみた。

 美人でスポーツ万能、頭もいい完璧な女子高生亜紀がなぜ、何の変哲もない平凡な朔太郎を好きになったのか解せない部分はあるが、高校生の頃なんかそんなものか。その部分を多めに見れるほど、この回想部分はとてもよい。もどかしく進展しない恋愛、ふてくされたところを垣間見せる会話、私とほぼ同じバックグランドということで、高校時代の甘酸っぱさを存分に思い出させてくれる。

 一方ダメなのが現代と、現代と過去のつなぎの描き方だ。小説では過去を振り返るような構成ではないらしいが、映画版で出てくる律子の存在意義がない。なぜ結婚直前に、思い出深いとはいえ台風の中を故郷に突然帰らなくてはならなかったのか、十数年前の恋人を忘れられない婚約者朔太郎を目の当たりにしながら、なぜすぐに抱き合えるのか、オーストラリアまで一緒に行って亜紀の遺灰をまくにいたって、精神的にどこかおかしいのではないかと思ってしまう。また、朔太郎は故郷に帰っても律子の存在を全く無視。ただ三角関係にして、安直に泣かせる要素を作ろうという魂胆が見え見え。また、故郷に戻れない過去を持つこと、すれ違いで最後のメッセージをもらえなかったこと、こういうシチュエーションは『ニュー・シネマ・パラダイス』の模倣でしかないが、現代の朔太郎が全く大人気ないのと、過去との繋ぎが写真館だけと希薄なので『ニュー〜』に全く及ばない。

 とはいえ、平均点をクリアするのは先に述べた高校生時代の描き方が、今どきっぽくない当時の純粋な気持ちをベースに描けているからにほかならない。