「武士の一分」 06日 評価3(5点満点) メジャー度5
監督:山田洋次
出演:木村拓哉、檀れい、笹野高史他
山田洋次の『たそがれ清兵衛』『隠し剣、鬼の爪』に続く藤沢周平原作小説3部作の3作目。主演にSMAPのキムタクを迎えたことも話題になった。
一連の3部作の流れ、方言から、同じく江戸末期の東北が舞台と思われる。新之丞は殿様の食事の毒見役。わずか30石を与えられ、役目に全くやりがいを感じていないものの、将来子供相手の道場をひらくことを夢見て、美しい妻加世と暮らしている。しかし、ある日貝料理にあたり、失明してしまう。扶持を取り上げられ、生きていけないと感じた加世は、知り合いの番頭・島田に相談にいく。弱みを握られた加世は手篭めにされ、それを知った新之丞は盲目のまま、武士の一分をかけた島田との果し合いに向かうのだった。
まず、キムタク。元々侍らしくない現代的な顔つきで違和感あるが、盲目になってからは頑張っている。それより、これは演出上の問題もあると思うが、盲目前の新之丞がやる気のない男で、盲目でありながら一流の侍に果し合いで勝つという展開も無理がある。もうちょっと、前振りのやり方があろうというもの。
そして、いかんのがラスト。一度自ら家を飛び出した加世は新之丞の中間にかくまわれていて、果し合いのあと家に戻ってくるのだが、あれだけの覚悟で家を出たあの時代の女が、生きているとは思えない。原作ではあからさまな登場はないらしいが、そのラストを変えるべきではなく、つがいの小鳥の片方が死んだ、というあたりから先の展開が見え見え。
正直、1作目からだんだんと良くない映画になっている。描いた時代というものを忘れ、現代的にアレンジしていったのが失敗としか思えない。主人公は真田広之は顔つき、佇まいとも侍にぴったり。永瀬正敏は顔つきは昔の日本人顔、キムタクはどっちもダメ。相手役は顔つきはともかく、薄幸で奥ゆかしい宮沢りえから、やけに肌艶の良い女中という役柄が不自然な松たか子、精神的に昔の女性っぽくない壇れいと、内容もさることながら、配役(演出)も段々と評価を下げる方向に向いている。