「マディソン郡の橋」 95年米  評価5(5点満点) メジャー度5

監督:クリント・イーストウッド
出演:メリル・ストリープ,クリント・イーストウッド他

 第2次世界大戦後,アメリカ兵に見初められて故郷イタリアを後にし,今はアイオワのとある田舎町で平凡な主婦になっている女性が,そこを訪れた初老の写真家との不適切な関係に心揺れる。

物語を説明すると,このようになんてこともない内容になってしまうが,その中に,真実の恋,人間としての責任,大人としての節度等を縦横無尽に織り交ぜ,格調高い作品に仕上げた。イーストウッドは初監督作品「恐怖のメロディ」から並々ならぬ才能を見せていたが,今やすっかりアクションヒーローを卒業し,映画界の重鎮となった。

 アクションスター上がりで大根役者のイメージがあったイーストウッドも,メリル・ストリープという大女優に触発されたのか,一世一代の名演を見せる。かっこいい中にも少年のような瞳のきらめきを見せ,魅力十分。また,もともと大のジャズ・ブルースファンであり,映画中の音楽の選択も心憎い。

 さて,この映画の主役選びには随分喧喧諤諤があったらしく,ストリープに決まったときはかなりのブーイングだったが,彼女はさすがに大女優で,見た者に全く文句を言わせない演技をみせる。彼女でなければここまでの映画にはならなかったろう。きれいすぎれば(例えばシャロン・ストーンやメグ・ライアン等)不倫の美しさが強調され,無名であればイーストウッドだけが強調され,本当に良くぞブーイングの中,この配役にしたものだと感心する。

 さてさて,映画本来の素晴らしさは別にして,問題は吹き替えだった。ストリープの声が丘みつ子。なんとなく顔の輪郭なんかが似ていることは認めてもいいが,どうしてもあの顔が目に浮かんでいかん。イーストウッドの声が最悪。あれじゃぁ,おじいさんだよ。今までイーストウッドといえば,ルパンの山田康男だった。山田康男だったら良かったとはいわないが,最初コロンボかと思ったよ。コロンボとバスマジックリンで風呂掃除に精を出す中年女性じゃ話にならんよ。映画館で見といてよかった。最初にテレビで見てたらそんなに感動しなかったかもしれない。