「街のあかり」 06年 フィンランド 評価3(5点満点) メジャー度1

監督:アキ・カウリスマキ
出演:ヤンネ・フーティアイネン、マリア・ヤンベンヘルミ、イルッカ・コイブラ、マリア・ヘイスカネン 他

 フィンランド・ヘルシンキで夜勤警備員の仕事をしているコイスティネンは上司からも同僚からも疎まられている寡黙な中年男だが、自分の警備会社を立ち上げようという夢だけは持っている。ある日、飲み屋でミルヤという名の女が彼に声をかけ、二人は付き合いを始める。しかしミルヤはマフィアの情婦で、コイスティネンの警備員という立場を利用して宝石店の強盗をすることを目的に付き合ったのだ。そうとも知らないコイスティネンは生きてきて初ともいえるこの状況にのめりこんでいく。

 アキの前作『過去のない男』がとても心に響いたものだから、新聞で新作が公開されると知って期待大きく観にいった。しかし本作では『過去のない男』にあった暖かさがないし、主人公に対する共感ももてない。コンスティネンは孤独で、特に技能もないさびしい男で、映画では悲しいくらい悲惨な目にあっているのだが、彼は自分に備わってしまった資質に正直に向き合うことをせず、ただ見果てぬ夢を見ているだけ。ラストで自分自身を受け入れようというシーンがあるのだが、それも抽象的で短く、彼が救われるのかどうか、心が変わるのか、考えさせる前に幕引きとなってしまう。がっかりしたというのが正直な感想だ。