「ビッグ・フィッシュ」 03米 評価4.5(5点満点) メジャー度2

監督:ティム・バートン
出演:ユアン・マクレガー、アルバート・フィニー、ビリー・クラダップ、ジェシカ・ラング、ヘレナ・ボナム=カーター他

 ウィルの父エドワードはどこまでが本当かわからない大げさで夢のような話と上手い話術でみんなの人気者だが、ウィルの結婚式でも自分中心の話をしたため、それ以降3年も二人は絶縁状態であった。しかし、エドワードが病気で倒れ、妻と共に実家に帰った際の身辺の整理や少しでも父親と話が出来たことで、ウィルは父の実像と人生の喜びを知ることになる。

 回顧形式でつづられるエドワードの過去話は実に幻想的で、このあたりの映像や演出は「シザーハンズ」や「チャーリーとチョコレート工場」などで独特の世界観を見せるティム・バートンの独壇場で、彼らしい魅力にあふれている。一方現実のウィルと周りの家族はこの監督にしてはとてもオーソドックスな描き方をしており、世間離れしがちな他作品と比べるとこの対比が感情移入しやすい要因になっている。
 エドワードのような人物をどう感じるかというのが評価の分かれ目にもなるかと思うが、私は身近に祖父・栄蔵(メインページの「TPの予想者ペンネーム「栄蔵の一番弟子」とは?」参照)という非常によく似た人物がおり、彼の人間的魅力に惚れているので、エドワードにとても魅力を感じる。映画の後のほうでわかるのだが、エドワードの話は総てが作り物ではなく、ある本当の話をベースにして広がりを持たせているのである。作り話しかしない人間というのはしょっぱなから相手にされないし、人間的な魅力があるわけがない。また、凄い話が出来るということを勘違いし、人が話をすると、それよりも凄いことをしたことがある、した知人を知っているという話をかぶせてくるような人間は知ってる中にも何人かいて、これもまたうっとうしい。で、実際エドワードのような人間も身内にしてみれば同じ話を何度もしてうっとうしいというのもこれまた事実。だから、彼が息子に嫌われるのも私には良くわかる。しかし私が幸せだったのは、栄蔵さんが元気なうちに、彼の話が実際にあった話から膨らませていることに気付いたこと。だからウィルのように嫌うことはなかった。

 ちょっと話はそれたが、私にとってはエドワードの魅力もウィルの気持ちも非常によくわかるため、とても魅力にあふれた映画であるとともに、もちろん人にはそれぞれの個性があって、あぁはなれないのはわかっているが、私の憧れもやはりエドワードであり、栄蔵さんであると認識した次第。

 と、とても好きな映画だが評価5にならないのは、そのように話を膨らませるおじいさんに成長したエドワードだが、若き日を演じるユアン・マクレガーがあまりにイノセントなのでちょっとその性格面のつながりが薄く感じられるのと、ティム・バートンとの間に未婚のまま一子をもうけたヘレナ・ボナム=カーターがちょっと年齢的に無理のある役を演じているため(顔つきは非常に好きな女優だが)。