「リトル・ダンサー」 00英 評価4.5(5点満点) メジャー度1

監督:スティーヴン・ダルドリー
出演:ジェイミー・ベル、ゲイリー・ルイス、ジュリー・ウォルターズ 他

 ビリーは炭鉱夫の父と兄を持つ11歳の少年。母は最近亡くなった。学校と週末のボクシング塾の日々に生きがいを見つけられないでいた頃、ボクシングを習っている体育館の端で、女の子達が練習しているバレエに興味を示し、バレエの先生に教えを受けるうちに才能を開花させていく。しかし炭鉱夫一筋に生きてきた頑固な父と兄はバレエというだけで猛反発する。

 話の筋としてはオーソドックスなのだが、それがうそ臭くないのは、筋以外に浮ついたところがないからだ。これがハリウッドと欧州映画の大きな違いである。出演者は地味、お涙ちょうだい的な演出がない、それにいつも感心するヨーロッパ映画の子役の素晴らしさ、これらが硬質な雰囲気をたたえているからだろう。子役の素晴らしさはハリウッド的な可愛さや泣かせる演技が出来るというところから来るものではなく、子供の心理や行動を十分納得させる演技力が最も優先される配役から来るものだ。主人公を演じたベルは子供の(母をなくした)心理を眉間の皺やふてくされた態度で見事に表現している。ビリーが徐々にダンスが上手くなっていく、しかもそれが美しさや上手さではなく躍動感という部分で感じさせるその過程は、見てる側もビリーがなぜそこまでダンスに夢中になるのか、その素晴らしさを十分に理解させる。

 最近つとにリアリティのある映画が好きになり、ハリウッド的な映画に惹かれなくなっている。映画に華を求めるのではなく、一介の人生の中でどのような幸福を見つけていくかという点に興味が移りつつあるのだろう。