「硫黄島からの手紙」 06米 評価4(5点満点) メジャー度4
監督:クリント・イーストウッド
出演:渡辺謙、二宮和也、伊原剛志、加瀬亮、中村獅童、裕木奈江他
第二次世界大戦末期1945年2月〜3月の硫黄島での米軍と日本軍の戦闘を描いたクリント・イーストウッド監督作品で、先に公開され、米軍側の視点で描かれた「父親たちの星条旗」と対の硫黄島2部作となっており、本作は日本軍側の視点から見た硫黄島の戦い、特に日本軍がどのような思想で戦ったかが描かれる。
印象としては「ミリオン・ダラー・ベイビー」に近い。上等兵西郷を狂言回しとして、指揮をとった栗林中将、ロサンゼルスオリンピックの馬術で金メダルを取り、栗林中将と同様海外勤務経験も有り、栗林の奇抜なやり方に共感する西中佐、典型的な帝国軍人伊藤などの人物描写を軸に、過酷であった戦い、勝つ見込みはなくいかに長期間耐えるかという戦略を淡々と描き、何かを大いに主張するということがない。それでも、戦争がいかに無益か、国家のためと言う大義名分の下どれだけの個人としての幸せを犠牲にしてきたかが切々と胸に迫ってくる。
この映画のすごいところは、ハリウッド映画でありながら、日本人を典型的な日本人像でも、といって自由人でもなく描ききっているところ、アメリカ人を決して美化していないところだ。戦うのは家族のためと思っている狂言回し西郷は確かに今風の若者ではあるが、といって、「天皇万歳」を言わないわけではないし、上官の指示には素直に従う。これまでハリウッドで描かれた帝国軍人においてこのような描写は皆無であった。このような描写をなぜ外国人がするのか、日本の映画でこのあたりを忠実に描けはしないのかというのが悔しくもある。
むやみに構成をいじくり、主題が不鮮明となった「父親たちの星条旗」と比べると、わかりやすい。ただ、私は「父親たちの星条旗」を観た後、硫黄島の戦いについてちょっと勉強したので、史実とは違うところ、明らかに脚色しているところが明確にわかってしまうため、多少冷めた目で観てしまうことは否めない部分があり、評価は4。