「父親たちの星条旗」 06米 評価3(5点満点) メジャー度4
監督:クリント・イーストウッド
出演:ライアン・フィリップ、ジェシー・ブラッドフォード、アダム・ビーチ他
1945年2月。第二次世界大戦において日本の敗北が濃厚になりつつある中、米国領土(グアム)と日本本土の中間点として空軍の重要ポイントとなった硫黄島における戦いと、その硫黄島の摺鉢山の頂上に星条旗を立てる写真によって英雄に祭り上げられ、戦時国債徴収の道具とされた3名のアメリカ軍兵士の葛藤の物語。
クリント監督の映画なので、期待して観た。映画としての出来は良い。しかし、全く感情が動くことがなかった。その理由は明確で、まず第一が、現代、戦時中の戦闘、国債徴収運動の3場面が入り乱れて進行することだ。元々、戦争の場面というのはみんなが同じ格好をしてヘルメットをかぶっているので、よほど丁寧に描かないと誰が誰だかわからない。それなのに飛び飛びになるため、誰が死んだとか、本当の英雄はだれだとかいっても戦闘シーンは1時間弱しかないため、人も人物像もぴんと来ない。第二に映画の主題「戦争に英雄はいるのか」を映像で見せないで、過去をリサージュしている英雄になった3人のうちのひとりの息子の語りで明らかにすることだ。これははっきり反則に近い。また現代の回顧の場面が時系列的にどうもおかしい。
元々この映画で描きたいのは英雄として扱われたことと現実とのギャップで悩む3人の心であるため、戦闘などは本筋ではないかもしれないが、その肝心な部分の描写も飛び飛びで描かれるので、どうも観ているほうの人間の感情のつながりも物切れになってしまう。やはり全く感情を動かされないというのは問題だろう。