「インサイド・マン」 06年米 評価3(5点満点) メジャー度2

監督:スパイク・リー
出演:デンゼル・ワシントン、クライブ・オーウェン、ジョディ・フォスター他

 NYマンハッタンの信託銀行に4人組の強盗が襲撃し、50人の人質と共に立てこもった。彼らを説得するため交渉人フレイジャー(デンゼル)が接触を試みるが、犯人サイドはまるで時間稼ぎをしているように無理難題を吹きかけてくる。銀行の会長であるケイスは強盗達、マスコミにどうしても知られたくない秘密があるため、別に有能な弁護士(ジョディ)を雇って、何とか説得しようと行動する。果たして犯人たちの真の目的とは?投降時に消えた犯人4人の行方は?会長の秘密は何なのか?スパイク・リー初の娯楽映画。

 社会派スパイク・リー作品、出演者があくの強い名優ばかり、ストーリーも凝っているようだから結構期待して観た。確かに観ている最中、3/4ぐらいまでは面白い。役者が上手いし(デンゼルはまるで映像化されていない部分の生活臭も感じさせ、クライブは冷静で知的な主犯格をクールに表現)、展開も先が読めなくて引き込まれる。しかし、投降後の展開がいまいち煮え切らない。犯人は人質全員に同じ格好をさせ、3人は解放される人質達にまぎれ、一人は立てこもり中に掘った穴から倉庫室の裏部屋に身を潜めるのだが、人質全員に同じ格好をさせたことによる効果がいまいち上手く描ききれていない。

 また甘い展開として、いくら人も殺されていない、表立っては何も盗られていないとはいえ、犯人を一人も捕まえていなければ、もっと警察は徹底的に銀行内を捜査するはずで、倉庫室の穴が見つからないことはあり得ない。確かに表からガンガン掘れば作業は早いが、倉庫室の裏に部屋を作った段階で、いつでも目的のものは盗めたはず。最後に主犯者が倉庫の裏部屋からわざわざ営業中の銀行内を通って正面玄関から表に出るが、それまで冷静な行動をしていた人間と同一人物とは思えない軽率な行為。最後の1/4の展開で一気に凡作になってしまったといえる。