「父の祈りを」 93年米 評価4.5(5点満点) メジャー度2
監督:ジム・シェリダン
出演:ダニエル・デイ・ルイス,エマ・トンプソン、ピート・ポスルスウェイト他
1970年代後半。アイルランドに住むチンピラ,コンロン(デイ・ルイス)は,とあることから故郷にいれなくなって友人ポールと英国に行く。おりしも,アイルランドの英国へのテロ活動が活発だった頃であり,二人とその友人達及びコンロンの父ジョゼッペを含む親戚一家がテロリストの汚名を着せられつかまってしまう。冤罪でつまかった彼らの15年後に無実を勝ち取るまでの実話ストーリーを父と息子の葛藤を交えて映像化している。
結構よくありがちなストーリーだと思うが,何しろ役者が達者である。デイ・ルイス,トンプソンは筋金入りだし,父ジョゼッペ役のピートもうまい。俳優達の名演で非常に見ごたえある映画になっているし,ストーリー展開以上に父と子の心の葛藤が5年間同じ牢獄にいることで打ち解けていく様,コンロンと女弁護士(トンプソン)が無罪に向けて協力し合うようになるまでの心理描写(このような内容でありながら,男と女の関係になりそうな描写がちっともないというのも現実的だ)が秀逸で,単なる犯罪・裁判もので終わらせていない。
ちょうどデイ・ルイスがちょっとブレイク(日本では美男俳優として)していた頃で公開当時はまずまず評判になっていたが,なにぶん話が地味でデイ・ルイスもかっこいい役ではないため,あまりヒットしなかったと記憶している。デイ・ルイスは端整な顔立ちだが,自分自身をカッコよく見せることに全く執着しない役者バカであり,日本人のミーハーにわか映画ファンにうけるタイプではないということだ。しかしこの映画は面白いし,デイ・ルイスの本当の魅力を堪能できるはずである。