「キング・コング」 05米 評価3(5点満点) メジャー度5

監督:ピーター・ジャクソン
出演:ナオミ・ワッツ、ジャック・ブラック、エイドリアン・ブロディ等

 1933年の古典的名作とされている「キング・コング」を「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソンがリメイクした作品。私自身は1933年版を見てないので、純粋な新作という観点で見た。

 1930年代、恐慌時代のアメリカが舞台。不況のあおりで仕事を失ったコメディ女優のアンは同じく金がかかりすぎるということで映画作りをやめさせられかかったカールにうまくのせられ、未開の島での冒険映画に出演することになる。しかしその島には原住民から、恐竜、そして巨大類人猿(キング・コング)が生息し、アンはキング・コングに捕らわれる。しかしコングは人間に捕獲され、ニューヨークで見世物として公開される。

 売り物のCGは、人間とのアップとの合成ではまだモロにわかってしまうものの、3時間を越える大作でありながら娯楽映画としてはなかなか良く出来ていると思う。話の展開はだれたところがないし、コングVS恐竜、コングVS人間(特にエンパイヤステートビルに登ったコングと戦闘機の戦いは見もの)など、見所も多く、この辺はさすがピーター・ジャクソンといった感じ。

 しかし、いくつか不可解なシーンがあり、それがどうしても引っかかってしまう。だいたい1930年代に恐竜が生息しているか(コングよりそっちのほうが重大)?東南アジアからニューヨークまで船で何ヶ月?コングをどう持って行ったのか?といった、オリジナルの内容に忠実にしたのかどうかは知らないが、少なくとも現在社会の情報量から推測される常識では明らかにあり得ない設定。それ以外にも最初はコングへの生贄として差し出されたアンは、コングに腕に巻かれた縄ごと引きちぎられるが、そんなことしたら腕がもげるでしょ?また、コングに握り締められながらジャングルの中を右往左往しているのにアンはどうしてほとんど無傷なのか?ラスト、冬のニューヨークで薄手のドレスひとつでエンパイヤステートビルに登ったら、すかさず凍えるでしょ?なぜ、ただの戯曲作家が超人的活躍が出来る(だいたいこの戯曲作家が出てくる意味がいまいちわからない)?首をひねる場面が所々に出てくるため、なかなか物語に入っていけない。

 救いは、コングとアンに愛情に似たものが芽生えるものの、コングが変に人間っぽくなったりせず野獣のままであること、主演のナオミ・ワッツが本作ではとてもチャーミングなこと。彼女は、同じオーストラリア出身で親友であるというニコール・キッドマンと雰囲気がそっくり(色の白さから線の細さ、芯の強そうなところ等々)。ただ、キッドマンほど整った顔ではく、そこがかえってこの映画ではプラスに働いている。

 正直なところ、純粋に映画として楽しめるかと思い、この映画を観たのだが、もう年齢的なものかどうかわからないが、スター・ウォーズやロード・オブ・ザ・リングなど、完全なファンタジーやSFならともかく、現実世界を舞台にしている場合、つじつまが合わないところが多いとそれだけで物語に入っていけない。この点は今後、観る映画を選ぶときの基準となるだろう。