「ターミナル」 04米 評価2.5(5点満点) メジャー度4
監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:トム・ハンクス、キャサリン・ゼダ=ジョーンズ、等
東欧の小国クラコウジアからある目的でアメリカに渡ったビクターだったが、ろくに英語も出来ないため入国審査に手間取っているうち、クラコウジアではクーデターが勃発。パスポートの効力を失った彼は入国出来ず、かと言って帰るべき祖国もなく、彼はターミナルから一歩も出られない状況となってしまった。何とか空港内で生活をし始め、9ヵ月後にやっと祖国に帰れることになったが・・・
ストーリーとか出演者自体に問題はないのだが、まずなんとも納得できない展開、いいとこ取りの完全に先読みできる展開が脱力させる。メインストーリーでは、権力者と、弱者であるビクターに味方する少数民族出身者があまりに類型的であり、完全に先が読める良くありがちな展開。また、祖国を失い、親類の安否もわからない40過ぎのいい年をしたビクターが、各国に愛人を作るスチュワーデスと恋をするというのもなんか腑に落ちない。サイドストーリーでは移民審査官が言葉を交わしたこともない食堂勤務者と結婚するだとか、老清掃作業員が飛行機を止めるとか、ありえない展開が多すぎる。
私は以前から言っているようにスピルバーグ擁護派である。しかし、リアリティにあふれる傑作『プライベート・ライアン』以降(総ての監督作品を見ているわけではないが)、『A.I』、『宇宙戦争』(まずまずだが)、本作と駄作を見せられては、もうそうとも言ってられなくなった。それらの作品に共通するのは現実味のない非常に甘甘な展開である。映画素人ならともかく、千本近い映画を見ている人間にとって、現実味のないヒューマンドラマほど嘘臭いものはない。
何とかすくわれるのは、ゼダ=ジョーンズが思いのほか魅力的で、彼女演じるスチュワーデスとビクターとの恋だけが唯一現実的な破局で幕を下ろすのと、ビクターがニューヨークを訪れた目的がなかなか粋な点。