「海を飛ぶ夢」 04スペイン・仏 評価3(5点満点) メジャー度2
監督:アレハンドロ・アメナバール
出演:ハビエル・バルデム、ベレン・ルエダ等
19歳のときに船乗りとなり、世界中を旅して暮らしていたラモン・サンペドロは、25歳のときの海の事故で首から下が不随となり、その後26年間をベッドの上で過ごしてきたが、その年、自ら命を絶つ決断をする。ラモンの尊厳死を合法にするため雇われた弁護士のフリアは、ラモンの話を聴き、法廷へ出る準備を進める中で、ラモンの人間としての魅力、文才に惹かれていった。
昨年度のアカデミー外国語映画賞受賞作品で、実話の映画化である。事実かどうかは不明だが、ラモンに接する人たちみんながラモンを愛するようになり、だからこそラモンの死が悲しくなる。その意味ではわずかに写真で若き日のラモンのありようを描き、あとは首から上だけを動かすだけでラモンその人の魅力を感じさせるハビエル・バルデムの演技は素晴らしいといえる。
しかし残念なのが、ラモンが尊厳死を選んだ理由は、多分「自分を愛してくれている人たちに申し訳がない、これ以上迷惑をかけたくない」ということだと思うが(ただ単に自分の身勝手であれば、26年間も生きているわけがない)、ラモンを魅力的に描けた半面、不随であることの苦労、ラモン自身の中の心の葛藤の描き方が希薄であり、その死を選んだ過程、根拠が感じ取れない。そのため実話でありながら、どこかファンタジーのような雰囲気があり、尊厳死という思いテーマを扱っているのだから、もう少しシリアスに、汚いところも見せたほうがよかったのではないかと感じてしまう。