「A.I.」 01米 評価2(5点満点) メジャー度4
監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:ハーレイ・ジョエル・オスメント、フランシス・オコナー、ジュード・ロウ等
近未来。地球温暖化により、海岸沿いのすべての都市が水没した地球ではロボットが日常的に利用されていた。地球上の人間が住める地域が狭くなったことから必然的に産児制限が行われており、あるロボット会社は愛情をインプットした子供のロボットを作成し始める。その第一号となるロボット(デイビッド)が子供を不治の病で冷凍睡眠している夫婦のもとに届けられ、デイビッドは無償の母の愛を求めるとともに、人間になりたいと強く望むようになるのだった。愛に飢えたデイビッドが家族に捨てられるまでが第一部。その後、ピノキオが人間にしてもらうときに出会った青い妖精を捜し求めるのが第二部。2000年後、高度化したロボットに凍ったデイビッドが発見されてからが第三部というような構成になっている。故スタンリー・キューブリックが長年温めていた企画としても話題になっていた。
私はスピルバーグ擁護派で、映画の醍醐味を間違いなく味わわせてくれる監督として多いに信頼している。失敗作といわれている「マイノリティ・レポート」もドラマ部分はいまいちでも、映画としての面白さは図抜けており、評価は高い。しかし、この映画は・・・やっちまったね。巷で言うように、これは駄作でしょう。スピルバーグの映画として初めて、まだ終わらないのかと時間が気になった。
第二部のデイビッドの原動力が、母親に愛されたいという気持ちなのだが、第一部がなぜデイビッドは捨てられることになったのかを主眼に描かれているため、デイビッドの奇抜な行動を多く描くことになり、母親のデイビッドへの愛情がどうして湧いてきたかが全く理解できないため、この原動力の根拠があやふやで、ただ単に愛されたいと思うロボットとしての機能としか感じられず、デイビッドに感情移入できない。同時に、母親がデイビッドを捨てるときに悲しみに沈むがこれも理解不能。第二部では、ロボットを憎む人間の団体に捕まり、ロボットを壊すイベントで壊される直前に逃げ出すのだが、それまでロボットを壊すので大盛り上がりしていた観客が、子供型ロボットを壊す段階で手のひらを返したようにデイビッドの味方をするなんて、無理矢理な話の展開も甚だしい。ラストでは髪の毛のDNAから母親が蘇るのだが、蘇った母親がデイビッドのことしか覚えていないのもおかしい。夫は、蘇生した実の息子は思い出さないのか?ジゴロ・ジョーの存在や言葉も後の展開になんら生かされていない。
スピルバーグ作品としては圧倒的に話がつながらないし、冗長な展開(そこがある意味キューブリックを意識したとも取れるのだが)も彼らしくない。ラスト・クレジットに「キューブリックに捧ぐ」と出てくるが、「2001年宇宙の旅」や「時計仕掛けのオレンジ」といった名作を作っていたころのキューブリックではなく、退屈な作品を作っていた晩年のキューブリックに捧げられたようだ。