「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」 03新・米 評価4.5(5点満点) メジャー度5
監督:ピーター・ジャクソン
出演:イライジャ・ウッド、イアン・マッケラン、ヴィゴ・モーテンセン等
3部作の完結編。サウロンの指輪を滅びの亀裂に葬るため、指輪をもって亀裂を目指すホビット族のフロドとサムと案内人のゴラムの組とそれを外側から守る人間、エルフ、ドワーフ、魔法使い、ホビット族の一行の2組。指輪の魔力で心を侵されていくフロドがいかにして指輪を葬るかと、人間の王の血をひいたアルゴランがサウロンの力で蘇った化け物の軍団をどう退け、人間世界をひとつにまとめるかの二つの物語を丹念に描き、SFXを多用したファンタジーにしては異例のアカデミー賞11部門を制覇した。
今回はスペシャル・エクステンディッド・エディションを観たため、劇場公開版より50分も長い約4時間という長さ。前作のときも書いたがこの妥協のないつくりがこのシリーズを一編のファンタジーに甘んじさせない何かを紡ぐ。ホビット族たちの成長物語も、アルゴランの人間の王としての帰還も、時に泣かせ、興奮させ、格好よく、また、エルフのレゴラスとドワーフのギムリの超人的な活躍も、その丁寧なエピソードの重ねあわせにより嫌味がなく、全く長さを感じさせない中身の濃い仕上がり。SFXもその技術は目を見張るものなのだが、決してそれを表面には出さず、あくまで物語の脇役というのも好感が持て、まさにファンタジー映画の最高峰で、今後しばらくこのレベルの映画は出ないだろうとさえ思う。
この成功の影のスパイスとして、脇役として贅沢に達者な役者を使っていることと、ファンタジーとして必須な”子供”としての役割をホビット族に担わせているが、演じた4人は子供ではなく十分なオトナであり、演技的にも陳腐さがないことが確かに挙げられると思う。このことも、映画の重厚さを重畳している要因である。