「奇跡の海」 96年 デンマーク 評価2.5(5点満点) メジャー度1

監督:ラース・フォン・トリアー
出演:エミリー・ワトソン、ステラン・スカルスゲールド他

 時代は使用されている曲から70年代中期か。スコットランドの片田舎に住むベスは油田掘のヤンと結婚するが、偏屈な地元の長老達は部外者であるヤンとその仲間達を快く思わない。そのような環境の中、式と一連のハネムーンが終わった後、ヤンはまた北海油田掘りに出稼ぎに行くが、作業の最中に頭をうち、全身不随になって帰ってくる。ベスは献身的に介護するが、ヤンは愛の証を確認するため、ベスに他の男と寝て、その内容を報告しろと迫る。苦しみながらも実践するベス。しかしヤンの病状はよくならず、ベスは自らの命を絶つことでヤンは救われるという信念のもと、ある行動をとる。

 今年の初めに衝撃を受けた「ドッグヴィル」の監督フォン・トリアーの96年の作品で、世界中で数々の賞を獲得している。ドキュメンタリータッチの揺れる映像はこの監督の持ち味か。主演のエミリー・ワトソンの演技はすごいというか、すさまじいし、音楽の使い方、演出に秀でたものは感じる。

 しかし残念ながら、ベスはもともと精神的に弱く不安定な女性なので、ヤンの言うことを鵜呑みにし、思い込みによって自分の行動を正当化していくことも、度重なる手術とそのための麻酔による朦朧とした意識の中で行われているであろうヤンのベスに対する無謀な要求も、どちらも同調できないし、最後の唐突な海上で鳴り響く教会の鐘を含め、別の世界での物語、私のわからない人種の物語としか感じられない。

 映画としての出来は高レベルとは思うが、私にとって内容が、揺れる映像とともに苦痛を感じさせるとともに、「ドッグヴィル」とは違いメインになる人間が尋常でないため同調も出来ず、評点は低い。