「コールドマウンテン」 03英・伊・ルーマニア 評価3(5点満点) メジャー度3

監督:アンソニー・ミンゲラ
出演:ニコール・キッドマン、ジュード・ロウ、レニー・ゼルウィガー、ドナルド・サザーランド、ナタリー・ポートマン、フィリップ・シーモア・ホフマン他

 時代は、南北戦争末期。南軍兵士としてヴァージニア州の戦場に送られたインマンは、瀕死の重傷を負って病院に収容される。回復を待つ間、彼の脳裏に浮かぶのは、3年前に離れた故郷コールドマウンテンの懐かしい情景。そして、出征前にただ一度だけ口づけを交わした神父の娘で教養高い女性エイダの面影だった。戦争の無意味さ、惨さを感じ始めていたインマンは、脱走兵として死罪に問われるのを覚悟で、故郷への道を歩み出す。一方、エイダもインマンのことを忘れられず、戦地に何通もの手紙を送っていたが、その間に父を亡くす不幸に見舞われ、生活の手段を失い、窮地に立たされていた。そんな彼女に、救いの手をさしのべるのが田舎で自立して育ってきたルビー。そして彼女の指導を受け、辺境の地で生き抜く術を身につけていくエイダの元へ、インマンが帰り着く日がやって来る...

 ジュードとニコールの美男美女コンビに文句はないが、どうも心に訴えるものがないというのが率直な感想。原作は20世紀を代表する傑作と言われているらしく、どうも偉大な小説を基にした場合の失敗のパターン、つまり様々なエピソードを入れすぎて話が散漫になる、に陥っている。インマンは故郷を目指す途中で様々な人と出会うのだが、それが何を意味し、何をインマンに感じさせたのか、インマンが寡黙な男という設定も輪をかけて、よくわからない。

 また、撮影時のニコールは36歳で、どんなに頑張ってもエイダは20代には見えず、30過ぎの女性の一目惚れは不自然である。それに、映画を通してインマンの魅力として、美男で正義感が強く、誠実というそれこそ深みのないものしか描かれないので、なぜ教養高い30代のエイダがインマンに惹かれたのかも不明。なので、インマンの遠い道のりを旅する使命も希薄となる。これなら、68年のオリビア・ハッセーの「ロミオとジュリエット」のように一目惚れというのに違和感を感じないような本当に若い男女を主役とするか、もっとインマンの魅力を掘り下げる必要があっただろう。

 とはいっても、上記のように出演者は主演、準主演級が勢ぞろいし、全体に流れる雰囲気や高尚さには好意を感じる。上述のような辛い評価とはなるが、その原因には、もう純愛映画を信じられない年齢に差し掛かったことも多少なり影響しているかもしれない。