「シービスケット」 03米  評価2.5(5点満点) メジャー度4

監督:ゲイリー・ロス
出演:トビー・マグワイア、ジェフ・ブリッジス、クリス・クーパー他

 世界恐慌後、復興が進む1930年代のアメリカに現れた驚異的なタフネスと強さを持った競走馬シービスケットとそれに関わった馬主、調教師、騎手の挫折と成長の物語。

 シービスケットの生涯成績は89戦33勝。なんと2歳の1月から走り始めて(現在は早くても2歳4月)、2歳時には35戦もした。日本でも昔はそうだったが、強い馬と弱い馬の差が激しく、毎週走るのが当たり前の時代の話で、今の馬の尺度で見てはいけない。時代背景からすると、日本ではオグリキャップというよりハイセイコーに近いか。そう考えるとシービスケットの走りが当時のアメリカ人を熱狂させたことは想像に難しくない。靭帯断絶からの復活は作り話かと思ったが、そうではなく、まさに時代のヒーローだったのだろう。

 しかし、競馬以上に映画にうるさい私にいわせれば、映画の出来は悪い。原作本は400万部を売り上げたベストセラーで、その内容を出来るだけ忠実に再現しようとしたのだろうが、その結果、話が散漫になってしまった。意味を察し得ないエピソードの数々、登場人物の成長物語も突飛で納得しがたい。役者達は典型的なアメリカ人顔で個性が無く、といって馬を中心に描いているかと言うとそうでもなく、なんとも核になるものが掴めない。よくこの内容でアカデミー作品賞にノミネートされたものだ。

 結論すると、競馬好きだから観てみたものの、とても映画オタクの評価を甘くさせるレベルに達してはいなかったということ。ただ、この後映画出演のオファーが来るようになったと言うアメリカの名ジョッキー、ゲイリー・スティーブンスは素人の割りにいい味を出している。彼のおかげでレースシーンが締まったといえるくらいに。