「スリング・ブレイド」 96年米  評価4(5点満点) メジャー度1

監督:ビリー・ボブ・ソーントン
出演:ビリー・ボブ・ソーントン、ドワイト・ヨーカム、ルーカス・ブラック他

 母親とその不倫相手を殺したことが原因で精神病院に入れられ、20数年ぶりに退院した精神障害者カールと、母とその男友達と暮らす少年との友情を描いた人間ドラマ。退院したカールはゆっくりと、無感情にしか話せないがそれ以外は暮らすのに支障がない。しかし、20数年ぶりに故郷に帰った彼を迎えてくれる者はなく、たまたまコインランドリーで出会ったフランクという少年と仲良くなり、彼の家のガレージに住ませてもらうことになる。カールはフランクとの仲が深くなるにつれ、彼を大事に思うようになり、それと同時にフランクに対し父親然とする彼の母親のどうしようもない男友達をどうにかしようと考えるようになる。実は昔の殺人も母親を愛するがため起こしたもので、カールは人一倍人を愛する気持ちが強かったのだ。

 地味な映画だが、口コミで人気が広まった。ストーリーも後半は読める展開なのだが、映画全体に流れるゆったりとした雰囲気が、単純な人殺し映画という印象を帳消しにしている。純朴で素直なカールは何も悪いことをしていないが、世の中には悪いやつらが多すぎる。それがカールにはどうにも許せなく、自己犠牲という美徳に惹かれながら人殺しを行うことになる。カールは一種の伝道師のようでもあり、現代人にとっての理想の生き方かもしれない。しかし、そのような生き方は現代ではできないということを静かに、ゆっくりと諭してくれる映画だ。

 しかしビリー・ボブの出演映画は数本見ているが、主演がビリー・ボブとは気がつかなかったぞ。それが一番の驚きだったかな。