「アンダーグラウンド」 95年仏・独・ハンガリー  評価3(5点満点)メジャー度1

監督:エミール・クストリッツァ
出演:ミキ・マノイロヴィチ、ラザル・リストフスキー、ミリャナ・ヤコヴィチ他

 第二次世界大戦中のユーゴスラビア。ナチスの侵攻から身を隠すため、地下にもぐったクロとマルコ率いる窃盗団。地上に残ったマルコはその後20年詩人として、武器密輸商人として名をあげたが、地下に潜った仲間の窃盗団にはまだ戦争が続いているとして地上に上がることを禁じ、終いには爆弾で地下の町を破壊してしまう。更に20年が過ぎ、内紛の真っ只中にあるユーゴで、マルコと、かろうじて生き延びたクロはそれぞれの立場で内紛とかかわっていた。

 カンヌ映画祭で作品賞を受賞した評論家受けする映画。ヨーロッパの戦争を描いた映画は、全編暗く重い宗教じみたものと、主人公の立場等を利用してコメディ的なスパイスを効かせつつラストは暗いというものの2通りにほぼ大別でき、本作は後者の部類。なので、地下に20年も潜んでいるという設定は然るものの、話の流れや展開に目新しさはない。また、ラストの宴会のシーンはもろフェリーニを意識しておりこちらも興冷め。

 80年代以降の歴史というものは習う機会がなかったため、よほど真剣に新聞を読んでいなければよくわからない。日本人は私を含めとかく習わなければ知らない人種であるため、ユーゴの事情を良く知らないという点が、この映画の本質をつかみきれない理由なのかもしれない。

 どちらにせよ、ヨーロッパ映画を見るといつも感心する、役者のうまさ(演じているとはとても思えない)があって平均点ではある。しかし目新しさはなく、最近の悲惨な歴史のひとつであるユーゴの紛争を正面切って描いたためにカンヌグランプリをもらえたといっても過言ではないだろう。