「アメリカン・ビューティー」 99年米 評価4.5(5点満点) メジャー度3
監督:サム・メンデス
出演:ケヴィン・スペイシー、アネット・ベニング他
アメリカの高校生の娘1人を持つ中流家庭。父親は娘の同級生に一目ぼれ。それだけに現を抜かすさえないサラリーマン。母は不動産業を営んでいるが、大手不動産業の実業家と不倫の関係。隣に越してきた、娘と同学年の息子を持つ家族の父は海軍上がりで病的なまでに規律に厳しく、母はその父に従って生きてきたため植物人間のような状態。息子はヤクの売人。話はほぼこの7人だけで終結する。父親(ケヴィン)は隣人の息子からヤクをもらってから人が変わったように強気になり、会社をやめ、それまで尻に敷かれていた妻に対しても言いたいことを言うようになる。そんな父親の変わりようを中心にしてこの2つの家族と娘の同級生の人間としての成長(退廃も)を描いたアカデミー作品賞受賞作。
現代のアメリカの病的な部分を代表的に描き出している。最もまともなのは、常にデジカムをまわし、なんでも記録にとどめる変人と見られ、ヤクの売人である隣人の息子か。彼だけは物事の本質をわかっているようだ。大筋的には皆が破滅へと進んでいき、最後は父親が殺され、全く救いようがなく、何故この映画がアカデミー賞に?と単純に考えると疑問に思ってしまうのだが、私は確かにヤクの常習者になり、仕事も辞め、傍から見るとまさに人生を捨てているとしか思えない父親だが、その心の中に芽生える幸せの自覚が、そこだけを感じると実にリアルで、何かほっとしてしまったのだ。天真爛漫な幸せなど求められない現代に嘘っぽい作り物の幸せを描くよりも、体裁に囚われない幸せを観るものに感じさせる只者でない映画と感じた。