いよいよ年が明けましたが,TPが1998年に見た(映画館,ビデオは問わず)映画のベストテンを発表しましょう。なお,再視聴のものは除いています。
第1位
「プライベート・ライアン」評価5 メジャー度5
製作年:98年
監 督:スティーヴン・スピルバーグ
出 演:トム・ハンクス,トム・サイズモア他
詳細は“TPの映画の話1”を参照していただきたいが,スピルバーグ映画の中でもNo.1といって差し支えないといえよう。いつまでも心に残る,見たい,見せたいと思わせる映画である。
第2位
「ユージュアル・サスペクツ」評価4.5 メジャー度3
製作年:95年
監 督:ブライアン・シンガー
出 演:カブリエル・バーン,ケヴィン・スペイシー他
吹き替えが嫌いな人はたくさんいるが,私はあまり字幕にこだわらない。もちろん,よっぽど合わない場合は論外だが。吹き替えと字幕では表現できる情報量が格段に違うというのは周知であり,話が複雑な映画は特に吹き替えの方が良い場合がある(英語が完璧に聞き取れれば何も問題無いのだが)。この映画は特にそう思った。ケヴィン・スペイシーが早口でいろいろ話しまくるし,話も複雑である。
話は複雑だが,非常に良くできていて,見た後すぐもう一度見たいと思った(TV放映を見たが15分くらいカットされていたのでなおさらだ)。さすがはアカデミーの脚本賞を獲っただけある。なぜこんな面白い映画をTV東京でやったのだろう?
いわゆるフィルム・ノワール,犯罪映画である。ちょっと,一昔っぽい設定ではあるが,とにかく話が面白い。これから見ようと思う人はセリフの一つ一つに注意して見るがよい。有名な俳優が出るわけでもなく(この映画の後,ケヴィン・スペイシーがブレイクした),地味な映画だが,予想外に面白いと確実に思うはずである。
第3位
「L.A.コンフィデンシャル」評価4.5 メジャー度3
製作年:98年
監 督:カーティス・ハンソン
出 演:ラッセル・クロウ,ガイ・ピアース,キム・ベイシンガー他
これも「ユージュアル」と同じ犯罪映画だが,久しぶりに男気を感じさせる映画だった。何年かぶりに一人で映画館に行って,見終わった後鳥肌が立ったくらいである。これも脚本がよくできていて面白いし,登場人物達がかっこいい。キム・ベイシンガーの娼婦もとても魅力的だ。ケヴィン・スペイシーが助演で出ており,演技の達者なところを見せている。なかなか味のある俳優だ。
第4位
「ディープ・インパクト」評価4.5 メジャー度4
製作年:98年
監 督:ミミ・レダー
出 演:ロバート・デュバル,モーガン・フリーマン,ティア・レオーニ他
彗星が地球にぶつかって人類滅亡の危機!という話。SFXがすごいというので,是非映画館で,と思った。予想に違わずSFXは凄いし,それより,物語部分がしっかり描けているのが良かった。確かに,粗を探せばいくらでも出てくる映画だと思うが,純粋に感動できたからいいんじゃないの。彗星がぶつかるのであたふたする人間達のドラマと彗星の軌道をずらそうと宇宙に飛ぶ飛行士達のドラマと,それぞれが1本の映画になりうる話を1本にしているので密度が濃い(ちょっと描き方が雑だともいえるが)。特に総てがハッピーエンドで終わらないのがよい。彗星の軌道をずらすのに失敗,各国の迎撃ミサイルも失敗。現実はこんなものだろう。ロバート・デュバルやバネッサ・レッドグルーブ,モーガン・フリーマンが脇を固めて手堅い人間模様を見せる。
第5位
「突撃」評価4.5 メジャー度1
製作年:57年
監 督:スタンリー・キューブリック
出 演:カーク・ダグラス他
キューブリックの初期の頃の作品。キューブリックは今やすでにピークを越え,つまらない映画を作りつつある(「フルメタル・ジャケット」はつまらなかったし,近々公開の「アイズ・ワイド・シャット」もつまらないのでは?)が,若い頃は作るたびに物議を醸す,映画史の節目になるような映画を撮っていた。
これも,当時としてはかなり辛辣に軍人思想を批判した内容になっている。戦場場面もリアルだし,ヒーローも何もないという点では「プライベート・ライアン」へと通じる部分もある。軍隊の中で1個人はただの道具でしかないこと,死ぬことなんて権力の下ではたやすく,不条理に行われてしまうことを客観的に描いている。キューブリックは「時計仕掛けのオレンジ」まで,どの作品も傑作を作っていた。
第6位
「ゲームの規則」評価4.5 メジャー度2
製作年:39年
監 督:ジャン・ルノワール
出 演:マルセル・ダリオ他
ブルジョワ階級の生活を皮肉った名作の誉れ高き作品。ブルジョワ階級の意味のない,いい加減で虚栄渦巻く生活ぶりを平坦に描き出す。強烈に皮肉っているわけではないが,それだからこそかえって無意味な生き方におもえてしまう。あまり期待して見たわけではなかったが,物語の構成,役者の演技,カメラワークとも1流で,決して飽きさせない。
第7位
「サンセット大通り」評価4.5 メジャー度2
製作年:50年
監 督:ビリー・ワイルダー
出 演:グロリア・スワンソン,ウィリアム・ホールデン他
無声映画時代の大女優(スワンソン)の家に若い売れない脚本家(ホールデン)がちょっとしたことで迷い込んできた。彼女は,昔の日々を忘れることができず,またいつまでも自分は大女優だと思い込んでおり,精神錯乱状態。脚本家を使って,また銀幕に復帰したいと願うが・・・
この映画が名作として評価されている最大の要因は,実際の無声映画時代の大女優で,当時はテレビの仕事しかしなくなっていた,映画の主人公そのままのスワンソンを主演にしたことにあるだろう。その鬼気迫る演技はすさまじいし,名匠ビリー・ワイルダーは良くぞここまでハリウッド映画界の内幕を描いた。
第8位
「ヨーロッパ・ヨーロッパ」評価4 メジャー度1
製作年:90年
監 督:アグニエシュカ・ホランド
出 演:マルコ・ホーフシュナイダー 他
第2次大戦中,ユダヤ人でありながら,ドイツ兵になりすまし,終戦とともにユダヤ人になることで波瀾万丈の人生を生きぬいた人の実話に基づく映画。いかにもヨーロッパ映画らしい雰囲気が何ともいえず硬質だ。しかし,どうしてヨーロッパの子役というのはあぁもうまいんだろう。
第9位
「ファーゴ」評価4 メジャー度2
製作年:96年
監 督:ジョエル・コーエン
出 演:フランシス・マクダーマンド、スティーヴ・ブシューミ他
まず,味のある役者達が良い。どの出演者も一癖ありそうで,何かが起こりそうな雰囲気。しかし舞台がド田舎ののんびりした土地であり,そのコントラストがなんともユニークだ。ある殺人事件を追う妊娠中の婦人警官の話だが,コメディ的要素も多く,オドロオドロしい展開の割に,さわやかと形容しても良いような後味を感じさせる。
次点(参考。複数回見ているので)
「羅生門」評価5 メジャー度4
製作年:50年
監 督:黒沢明
出 演:三船敏郎,志村喬
多分この映画を見たのは3回目。何回見ても素晴らしい。人間の見栄とエゴは前回見たときよりも更に強く感じ取れた。人間はなんと弱く,ずるいものなのか,黒沢はそのような人心の深層を抉り取り、映像にしながらも,映画としての面白さも決して難しさに埋没させることがない。そして,映像のなんと美しく,恐ろしいことか。当時各国の映画関係者が,どのようにこの映像を撮ったのかわからないと絶賛したほど,映像の素晴らしさは群を抜いている。
ついでにワースト5も。
ワースト1
「ぼくの伯父さんの休暇」評価1.5 メジャー度2
製作年:52年
監 督:ジャック・タチ
出 演:ジャック・タチ
評論家筋の評価が高い映画だが,さっぱり面白くない。コメディーだが,当時で20年以上前から活躍していたチャップリンと何ら変わらないし,また,チャップリンのように何かを風刺したり,感動を呼ぶようなものも何もない。公開当時は"新しい映画の流れ"と評判だったらしい。しかし,いくら評論家に認められているとはいえ,見ていて退屈で何度見るのをやめようと思ったことか。そのたび"名作だから"という理由で見続けたが,やっぱり面白くないものは面白くない。ちなみに同じシリーズでこれまた名作の誉れ高い「ぼくの伯父さん」は見ずに消してしまった。
ワースト2
「ビートルズがやってくるヤァ!ヤァ!ヤァ!」評価1.5 メジャー度3
製作年:64年
監 督:リチャード・レスター
出 演:ビートルズ
今で言う,ミュージックビデオみたいなものだ。話の内容はまるでないも同然。初めのうちは,ビートルズの曲がかかる毎に「やはりビートルズは天才だ」なんて思っていたが,同じ曲が何度もかかるので,だんだん聞き飽きてくる。まぁ,当時はこれで良かったのだろう。
ワースト3
「フラッド」評価2 メジャー度3
製作年:98年
監 督:ミカエル・ソロモン
出 演:クリスチャン・スレーター,モーガン・フリーマン
試写会で仕方なく見た。落ち目のスレーター主演の何の変哲もないアクション映画。だいたい,「ツイスター」の製作スタッフが製作したということからして期待薄(「ツイスター」は一昨年見た映画のワースト1。キンキンやかましいし,ストーリーもありきたりの子供だまし。俳優も全く魅力ない)。特に物語の設定が夜のため,全体的に画面が暗く,何をやってるのかよくわからない。「俺達は天使じゃない」「紅の豚」以来久しぶりに映画館で寝てしまうか?と思われたが,中盤で話の展開が変わり,ちょっとは面白くなった。とはいってもよくある話,先が読める展開であることに変わりはなく,おまけに画面は終始暗く,不快感とともに映画館を出た。モーガン・フリーマンさんよ。60を過ぎて,あなたはもう大物なんだから,こんな映画に出ちゃいかんよ。
ワースト4
「007/リビング・デイライツ」評価2 メジャー度4
製作年:87年
監 督:ジョン・グレン
出 演:ティモシー・ダルトン
ボンドガールに魅力ゼロ。ありふれたストーリー。しっくりこないジェームズ・ボンド。どれをとっても退屈極まりない。
ワースト5
「6デイズ7ナイツ」評価2.5 メジャー度4
製作年:98年
監 督:アイバン・ライトマン
出 演:ハリソン・フォード,アン・ヘッシュ
"TPの映画の話3"を参照。まぁ,つまらなくて途中で見るのを止めたかったとまではいわないけどね。