「プライベートライアン」 98年米 評価 5(5点満点) メジャー度5
監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:トム・ハンクス,マット・デイモン他
話の内容としては,第二次世界大戦時,4兄弟のうち3人が戦死してしまったので,残った1人を戦場から故郷に無事帰還させる,というもので,なんとなく信憑性が乏しい気がするが,実際に似たようなことをしていたそうなので,まぁ,それはいいだろう。
前評判通り,冒頭30分間続くノルマンディの上陸作戦の戦闘シーンがすさまじい。悲惨とか,残酷とかという以前に,とにかく機械的に殺戮が行われる。強いもの,英雄が生き残るというものではない。運のいいものが生き残るのだ。戦争とはそういうものだ,ということが良くわかる。
そして,映画全編を通して英雄的に,感動的に死んでいく姿は一つもない。誰もがそこで死ぬことに疑問を抱きながら,時には男気もない姿をあらわにしながら死んでいく。カッコ良く死ぬなんて,今までの映画で作られた嘘の姿であるとの説得力が,この映画にはある。それが逆に戦争の無意味さを助長しているのだ。
スピルバーグの演出の手法は「シンドラーのリスト」とほぼ同じだが,「シンドラー」では感動を誘うような場面が少々多く,うんざりしたところもあったが,この映画は"淡々"と表現してもオーバーでないほど,ストーリーは展開していく。それゆえ,逆に最後のトム・ハンクス演じる大尉の言葉が,非常に胸に染みる。良くできている。
戦争とはなんと無意味で,そして,生きていることはなんて素晴らしいのかをしみじみと感じさせる,"売れ筋"作家スピルバーグがまた一つ脱皮したと感じさせる傑作である。大ヒットはしないだろうが,間違いなく傑作である。久しぶりに泣いた映画だし,見終わった後も,場面場面が思い出せる、心に残る映画である。
役者ではトム・ハンクスはやはり素晴らしい。その他も,あまり著名でない役者を使ったことが成功している。狙撃手を演じたバリー・ペッパーという俳優が「ディア・ハンター」の時のクリストファー・ウォーケンに顔も雰囲気も似ている。もうけ役だ。