ある夏の帰り道

あぁ、けれど……

どことなく異質な空気を孕んでいた。

あの夏の昼に支配された庭園は色鮮やかに覚えている…

あの少女の顔も
ぼんやりとしか思い出せない

「その"庭"が
貴方を導いてくれる

杖…雪洞、だろうか。
先端には提灯ではなく砂と植物を封じた宝珠のようなものが取り付けられている。

答えられるはずもなく
黙りこくっていると

「何故、ここへ…?」

周囲は黄昏の橙に染まり、

滝を見るなり手に感じたチリチリとした痛みに喉の渇きを堪え

と呟くように少女が言った。

東屋に辿り着くと少女が一人、腰を下ろして庭を眺めていた

ぼんやりと歩くうちに はたと気づくと
見慣れたアスファルトはそこになく、

足は見たこともない小道の上にあった。

導きの庭(箱庭珠)制作:朱々様
(http://shushu.hacca.jp/shumon/index.html)
人形制作・写真撮影:七緒
ロケ地:目白庭園
(http://www.seibu-la.co.jp/mejiro-garden/)

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やはり全ては
夢だったのだろうか

手にあった"庭"はいつの間にかなくなっている

はっと顔を上げると、黄昏に包まれたいつもの道があった

"庭"が指し示すまま、暗がりの道を選んだ…

「行ってはいけない」と聞き覚えのある声色で語り掛ける鯉を素通りし

東屋を出て、手になんとなく伝わってくる感覚を頼りに
再び歩き始める。

「何が見えても
何が聞こえても
庭の導きの通りに進んで」

そういって少女は持っていた何かをこちらに差し出した。

「魅入られてしまったのね…」

終ぞ見覚えのない場所に途方に暮れていると、

池の畔に東屋らしき屋根が見える

驚いて顔を上げると、
そこには夏の昼に染まった庭園が広がっていた…

「貸してあげる」


けれども空には
    昼間の蒼が居座り、

こちらに気づいた少女は
不思議そうに首をかしげる