富士通 FMV-C610/620

富士通FMV-C610/620はFMV-C600/601の後継機種として開発された省スペース型のビジネスパソコンである。
2002年10月に登場したFMV-C600は先代のFMV-7000CL2をベースに
企業向けパソコンに要求される優れた処理能力、小型・省スペース性を実現。
筐体容量8リットルというコンパクトな筐体ながらIntel Pentium4プロセッサー2.40GHz/2.0A GHzを搭載可能にし、
さらに優れた排熱処理機能の設計・静音動作を可能にし、企業向けビジネスパソコンの定番マシンとしてデビューした。
 
ビジネスユーザーに好評を得たFMV-C600であったが、
FMV-7000CL2ベースであったため、いくつかの欠点も存在した。
 
1、競合他社多数が先駆けてパソコン本体のメンテナンス性、メモリ・PCI増設のための内部アクセスを容易にした
ツールフリーのワンタッチ筐体カバー開放を採用している中、
FMV-C600は時代遅れのネジ固定式の筐体カバーで、筐体カバー開放には手間が掛かった。
2、フロントのマイク・イヤホン端子が無く、
接続には背面の端子を使うしかなく、未使用時に取り外すには手間が掛かる。
3、USB2.0端子の数も前面:2個、背面:2個と少なく、USB機器の増設には不満があった。
 
2003年4月にFMV-C600のマイナーチェンジモデルであるFMV-C601が登場。
搭載CPUをIntel Pentium4プロセッサー2.40B GHz/2.80GHzとし、
チップセットもIntel 845GからIntel 845GVへ変更された。
 
しかし、FMV-C601は所詮はFMV-C600のマイナーチェンジモデルであるため、
上記の欠点は改善されてない。
さらにCPUの高性能化に伴い、より排熱処理の優れた設計の筐体が望まれ、
FMV-C600/601はわずか1年あまりでモデルチェンジする事となる。
そして2003年10月、FMV-C600/601の後継マシンとして登場したのがFMV-C610である。
FMV-C610はFMV-C600/601の反省を踏まえ設計を見直し、以下の様な改良がされている。
 
1、筐体内部の設計を変更し、さらなる排熱処理機能を実現。
高性能なIntel Pentium4プロセッサー 3GHz/2.60C GHz/2.66GHzを搭載しながらも、
人のささやき声と言われる30dBよりも静かな23dBという静音性を可能にした。
2、FMV-C600/601の反省点でもあったインターフェイス類を充実。
フロントのマイク・イヤホン端子の追加と、USB2.0端子を前面:2個、背面:4個に増設。
3、競合他社が先駆けて採用していたツールフリーの筐体カバー開放を取り入れ、
内部アクセスが容易となり、メンテナンス性と内部パーツ増設性が向上。
 
FMV-C610はFMV-C600/601よりもさらなる性能向上も果たし、
チップセットはIntel 865GVを搭載。
LANもそれまで100BASE-TXまでだったのを1000BASE-Tに向上した。
 
こうしてFMV-C610は完成度の高いビジネスパソコンとして多くの企業に採用される事となる。
 
2004年5月にFMV-C610のマイナーチェンジモデルであるFMV-C620が登場。
搭載CPUをIntel Pentium4プロセッサー 3E GHz/2.80E GHz/2.80GHzに変更。
メインメモリ共有のビデオメモリを64MBから96MBへ向上させた。
 
FMV-C610はNorthwoodコアのPentium4を採用してきたが、
FMV-C620はPrescottコアのPentium4 3E GHz/2.80E GHzと
Northwoodコアの2.80GHzを採用。
 
PrescottコアCPUは消費電力・発熱が高い事で知られている。
FMV-C610/620は優れた使い易さ・静音排熱処理設計の完成度が高いマシンでるため、
筐体のモデルチェンジはされず、富士通はこの発熱処理をより向上させるため、
2004年10月に登場したFMV-C630は本体側面のCPUの通風口の面積を広げている。
 
しかし、2005年4月にFMVビジネスモデルの新たな主力として
5インチベイを搭載した省スペース型の「D」シリーズがラインナップに加わり、
スリムベイの「C」シリーズは下位機種に位置づけされる。
 
そして2006年1月のラインナップに
FMV-C610/620ベースの最終後継機FMV-C5200が最後の掲載となり、
2006年4月のラインナップからは「C」シリーズは廃止され、
以後「D」シリーズがFMVビジネスパソコンの完全なる主力となった。
 
だが、FMV-C610/620は今日の富士通ビジネスパソコンのコンセプトである
数字的性能には現れない、“使い易さ”“思いやり”重視の機能的デザインの先駆けとも言えよう。

FMV-C620本体前面。
 
FMV-C620はC610のマイナーチェンジモデルであるため、
外観に変わりは無い。
 
しかし、FMV-C610までは
FMVビジネスパソコンの基本であった本体色全てが白色。
FMV-C620からはデザインに統一性・一貫性を持たせる事と、
本体前面のピクトグラム(絵文字)が見易いようにするため、
アクセントカラーパネルの基本色を黒とした。

FMV-C620本体背面。
 
各接続端子には誰もが分かり易い様に色分けされている。
 
FMV-C600/601まで背面のUSB2.0端子は2個だったが、
FMV-C610/620からは4個に増やされ、
USB機器の拡張性が向上した。
 
 
また、ビジネス向けのFMVでは
電源にサービスコンセントを内蔵。
モニターと電源連動し、省電力化に貢献している。
またケーブルの混線を防ぐメリットもある。
 
他社ではサービスコンセントを内蔵したものは
殆ど無くなってきたが、
FMVのビジネスモデルでは昔から標準的に搭載されている。
 

FMV-C620本体側面右側。
 
筐体には有害物質となり得る
六価クロムを使用しないクロムフリー鋼板を採用。
また、筐体のプラスチック部品は
再生プラスチックを使用し、
環境への配慮もされた製品となっている。

FMV-C620本体側面左側。
 
こちら側にはCPUの通風口が備えられている。
CPUファンが人のささやき声と言われる
30dBよりも静かな23dBで動作しているので、
音が殆ど聞こえない。
 
この富士通独自の冷却ファン制御による優れた静音性は
使用者からは非常に高い評価を得ている。
 
 

FMV-C620本体上面。
 
電源装置の排熱口が設けられている。
稼動時は発熱するため、
注意書きのステッカーが貼り付けられている。

FMV-C620本体底面。
 
底面からも空気を取り入れる設計となっているが、
フット(縦置きスタンド)を取り付けずに
縦置きした場合、十分なエアフローが得られない。

フット着用時。
 
このFMV-C620も中古で入手したものだが、
中古市場に出回るビジネスパソコンは
付属品の欠品が多い。
 
FMV-C610/620に限ったことではないが、
特に縦置きスタンドの欠品が目立つ。
 
パソコンの設計によっては
縦置きスタンドを着用しないと
設計通りのエアフローが得られない。

フットのネジ。
 
くぼみが2重構造になっており、ドライバーで回すための穴と
コインなどで回せる穴が備えられている。
 
たかがネジと言えど、こんな部品にまで気遣いがされている。

FMV-C620本体前面のインターフェイス。
 
FMV-C600/601で課題となった
マイク・イヤホン端子が設けられている。
 
FMV-C610/620はFMV-E600のデザインを
取り入れたようにも見受けられるが、
真相は不明。
 
また、FDDとUSB2.0端子の間にある部分は
カスタムオプションでICチップ内蔵の
スマートカードを読み込ませる
カードリーダーが搭載される。

主な排熱機構。
 
本体背面よりも上面へ熱を排する設計で、
静かで効率の良い排熱を実現している。
 
このFMV-C620はNorthwoodコアの
Intel Pentium4 2.80GHz搭載モデルで、
消費電力・発熱はかなり低い。
 
ラインナップがPrescottコアのみの
FMV-C630は排熱向上のため、
側面の通風口の面積が広くなっている。
 
これはAthlonXP搭載モデルの
FMV-C330も同様である。

FMV-C610/620の筐体には
競合他社が標準化している
工具不要で筐体カバーが開けられる
機構が採用された。
 
写真の様にロックをスライドさせる事により
簡単に筐体のロックを外す事が出来る。
 
 

FMV-C620内部。
 
ケーブル類がキレイに配線されているので、
エアフローへの影響も無い。
 
また、生産効率を上げるためか、
内部構造もかなり簡易になっており、
分解・組み立てが手軽に行える。
 
特に、ネジの使用本数がかなり少なく、
ワンタッチで組み込める簡単な構造となっている。
 
この生産性の高い設計・構造からも
完成度の高さが伺える。

CPUファン周り。
 
CPUファンの空気の流れを一定化させるための
トレーが備えられている。

CPUファンを取り外したところ。
 
電源装置のファンが自身の熱と
CPUファンが処理しきれない熱を外へ排する。

FMV-C620本体前面カバー取り外し時。
 
CDドライブ・FDD・HDDが取り付けられている
ベースユニットを取り外す際は
ネジ2個を外す必要がある。

ベースユニットを取り外したところ。
 
CDドライブ・FDDはその上を押さえているプレートを
スライドさせることで簡単に取り外すことが出来る。
 
かなり簡易な構造なので、
誰でも分かり易い設計となっている。
 
IDEケーブルも最低限の長さで、
筐体内部を埋め尽くすような事はない。

HDDが収められているベースユニット。
 
写真の様に固定金具を外すことで
簡単にHDDを取り外す事が可能。
 
このFMV-C620には
Westarn Degital WD400(40GB)が搭載されている。

電源スイッチはスプリング式で耐久性が高い。
 
プラスチックの弾力を活用したタイプでは
長年の使用による劣化で折れてしまう事がある。
 
こんな電源スイッチの品質にもこだわるのが
富士通らしい。

フロントのパネルを外したところ。
 
他のカラーパネルとの交換も容易に出来るが、
カラーバリエーションの流通が少ないため、
入手は困難である。
 
またカスタムメイドにより、
筐体のロックキーを搭載させる事が出来た。

フット(縦置きスタンド)はFMV-C600/601用と
FMV-C610/620用とでは異なり、
見た目の形状が同じように見えても、
ネジ穴の位置が異なるので、流用は困難である。
 
写真左がFMV-C600/601用、
写真右がFMV-C610/620用である。
 
ネジ穴、ゴム足の位置が事なる。

FMV-C620 管理人所有品構成
FMV-C620 管理人所有品構成

富士通 FMV-C620
 
OS:Windows XP Professional SP2
CPU:Intel Pentium4 2.80GHz
チップセット:Intel865GV
メモリ:DDR-SDRAM 512MB(256MB×2)
HDD:40GB
ドライブ:CD-ROMドライブ、FDD
USB2.0:×6(前面:2.背面:4)
 
 
管理人が所有しているFMV-C620は
2004年6月に製造された。
 
製造工場は言わずと知れた
富士通のデスクトップPCの国内製造拠点
福島県「富士通アイソテック」。


Last updated: 2008/3/19