外が騒がしい。

 新しい救世主候補が現れたとか。

 まぁ、それは確実にここに来るから後回しでいい。

「………」

 幻影石から映し出される一つの画像。

 メイド服を着た、あどけない感じなのにどこか落ち着いた雰囲気を醸し出す女性。

「おとーさん?」

 娘が呼んでいる。呼ばれたからには行かなければいけないな。

「ああ、どうした? クリミア?」

「えへへ、そろそろご飯だよ」

 クリミアが笑顔を浮かべながらジャンプ。

 肩の上に乗っかる。

「まったく、お父さんの上に乗っかるなって言っただろう?」

「ごめんなさい、でもここが一番落ち着くから」

 重さを感じさせない身体を揺らしつつ、ご満悦のクリミア。

「こういう所はあっちそっくりだな………」

「ふぇ? おとーさん何か言った?」

 その言葉を誤魔化すかの如く走り出す。

「ほーら、超特急だぞ~!」

「きゃははははは!!」

 そんなやり取りをしながら二人は食堂へと向かった。







































Wiz☆Savior

第1話 召喚医師





































 そんな裏舞台とは全く関係なく大河が闘技場でハーレム計画を語り、未亜にジャスティで倒滅されかけている。

 デュオ側はといえば、アリスがデュオの顔に張り付き、窒息寸前の様相を醸し出していた。

「で、誰がこの騒ぎの収拾をつけるのですかぁ?」

「………任せました、ダウニー先生」

 ミュリエルは深いため息と共に四人を眺めていた。

(当真大河、それにデュオ=ファーネク………果たしてどうなるか………)

 未来は未だに闇に包まれていた。












「では、デュオ=ファーネク、こちらの方は?」

 ダウニーによって収拾をつけられ、学院長室へと案内される。

 そこでは難しい顔をしたミュリエルの質問タイムが待っていた。

「うむ☆ アリスはアリス=アリステル=ファーネクという。デュオの姉じゃ!」

 一瞬にして場が凍り付いた。

「む?」

 気がついていないのはアリス一人。

 そしてデュオが呆れたように一言呟く。

「これじゃリオルみたいだが………そして時は動き出す!」

『なんだってえええええええええええええ!!!!!!!』

 ミュリエル以外の絶叫が学園全体に木霊する。

「あ~、この補足は非常に不本意だがその通りとしか言いようがない」

「本当、なのですか? デュオ=ファーネク」

 疲れたように首を振り、

「事実です」

 と言葉を紡いだ。

「でででも、こんなちっちゃいのに」

「ストップ。世の中には知らなければいい事が多々ある」

「うむ、たとえちっちゃかろーがアリスはちゃんと生きておる」

「しかし、召喚器も無しにゴーレムを一撃で倒すとは………」

 口々に意見を言う中、ダウニーからの発言にみんなの視線が集中する。

「アリス=ファーネクは魔法使いとしても優秀すぎるのでこのまま魔法科に配してもレベルの差が出てしまいますね~」

 ダリアの言は的を射ていた。

「別な意味でレベルの差が出そうだけどな、座学とか」

「にゅるる~!!!」

 デュオの呟きにもしっかりと反応して噛みつくアリス。

 こうして、救世主クラスに四人の生徒が加わるのだった。








 なんとか事情の説明を終え、案内役のダウニーを含めた一行は食堂へと足を運ぶ。

「お、ダウニーさん」

「これは、ドクター。お食事ですか?」

「クリミアに引っ張られまして」

 ドクターと呼ばれた男性がダウニーの後ろにいる大河たちを見る。

「あっちのが今度の救世主候補か? 野郎までいるとは珍しいな」

「あの、ダウニー先生、こちらの方は?」

 ああ、そうでしたとダウニーが半身を横にずらし、

「こちらは召喚医師(サモンドクター)の七代崇さんだ」

「七代、もしくはドクターって呼んでくれ」

 大河に手を差し出し、握手する。

「それより、召喚医師ってなんなのじゃ?」

「ああ、ちょっとした都合で元いた世界からこっちにきたんだ。
 で、その一回の次元移動を最後に生体召喚とか次元移動が出来なくなったんだ。
 物体だけは召喚可能だからそれでこっちに機材持ち込んで医者をやっている」

 手短に話すと、イスに座る。

「まあ、立ち話もなんだから飯でも食おうぜ」

「じゃあ、お言葉に甘えさせて頂きます」

 全員がイスに座る。

「でも、料理とか誰が持ってくるんだ?」

「もうすぐ来ると思うんだが………来たか」

 そう言って崇は厨房の方を見る。

「ご飯出来たよおとーさん? あ、新しい救世主さんだ!」

「この子は?」

「ああ、娘のクリミアだ」

「クリミアです。よろしくお願いしまーす」

 金髪を団子状に纏めた頭が勢いよく振られる。

「さて、飯にしようかクリミア?」

「はーーーい!」

 クリミアが持ってきた給仕台から料理の載った皿をテーブルにのせる。

「………クリミア」

「なに? おとーさん?」

「これはなんだ?」

 お皿に載っているのは大きな黒い固まり。

「お肉」

 そう言いながらも全員に茶を配るクリミア。

 非常に危険な香りがする状況下で、

「いくらなんでも中身は食べられるでしょう………!?」

 ダウニーがそう言いつつナイフを入れて半分にする。

「………」

 切ったダウニーもそれを見ていた周りも絶句する。

 肉の固まりを切ったので普通は肉っぽい部分が見えてもおかしくない。

 しかし、どう見てもそれはほんの一部分、肉の固まりの芯の部分しかなかった。

 それ以外は全て焦げ。

 苦みしかない黒い部分がそのことを物語っていた。

「あ、俺食欲無いからお茶だけで………」

 大河が苦し紛れに手を出した紅茶。

 口に含んだ瞬間に一気に吐き出す。

「お、お兄ちゃん!?」

「げほっ、げほっ………! なんだこのお茶!?」

「露店のおばちゃんからお酢は身体に良いって教わったから」

「入れたわけだな?」

「うん!」

 誰がその邪気のない彼女を攻める事が出来ただろうか?

「たっくさん食べてね?」

「あ、私少し用事が………」

「待て、逃がさん」

 逃げようとするダウニーの首根っこを崇は掴んでいた。

「俺を殺す気か?」

 料理の事については否定しないが、崇は必死だった。

「ア、アリス…死ぬ時は一緒だぞ」

「にゅるる~………あんなのはもうこりごりなのじゃ………」

 アリスとデュオはお互いに震えながら消し炭を見つめていた。

 当真兄妹は完全凍結。 

(練習すればうまくなるんだろうけど…初期方向でこれやられると………やっぱり血かなぁ)

 崇は少し懐かしく思いながらダウニーの口に消し炭を運んでやるのだった。

「ごぶぼばばなごなごあ!!(苦い! 苦しい! 破滅活動前なのに殺される!!)」















続く






はい、ウィズセイなのにエンジェルブレスまで来てしまいましたある意味ダメ作家の森部っす。

誰ルートなのかは今後の展開にこうご期待!(バレバレです)

そんなこんなでアリスとデュオが救世主の仲間入り。

次回どうしよう………(かんがえてないんかい