‐次の春まで、続く夢‐
第十二話 『伏線』
翌日、俺が目を覚ましたのは昼前だった。
今日は日曜日。特に用事もないので家でごろごろしていた。
親がいなかったので昼食は戸棚にあったカップラーメンで済ます。
何か、おとといからまともな食事を取ってないような気がするが……
食後、家にいても本当に暇なだけなので、近所の本屋に立ち読みにでも行くことにした。
お目当ての漫画雑誌を読んでいると、
「よっ」
という声とともに肩を叩かれた。
振り返るとそこには、
「あっ、山名先生」
山名先生がいた。
「立ち読みか?」
「そんなとこです。何か、先生と会うの久しぶりな気がしますね」
考えてみれば木曜日以降、先生の姿を見てなかった。
「あぁ、何かと先週は忙しかったからなぁ」
「先生は何してんですか?」
「立ち読みだな」
そう言って笑う先生の腕に、俺の注意は向いた。
「あっ、その時計」
「これか。あの時のやつを修理したんだ」
先週、田中先輩が金属探知機で見つけた壊れた時計を直して着用していた。
「あれですか。よく直りましたね」
「まぁな」
「それ、先生の時計だったんですか?」
「うーん、まぁ一応」
あいまいな返事をする山名先生。
「そうですか」
「ん?安藤、何か気になるのか?」
「まぁ、ちょっと」
時計を探していた愛璃の事が気にかかった。
「そんなに気になるか?この時計が」
「何となくですけど……」
「?」
「ちょっと知り合いが腕時計を探してたんですよ。もしかしたらそれかなーって思ったんですけど」
「時計を探してた?」
急に先生の顔色が変わった。
「誰だそれは?」
「誰って…、後輩の女の子ですけど」
何か先生の様子が変だ。
必死になっていると言うか何と言うか、身を乗り出して聞いてくる。
「後輩って事は、一年生か?」
「まぁそうですけど。北山さんって言う人です」
「北山……、下の名前とか分かるか?」
「はい。北山愛璃って言う人です」
「なっ!?」
先生が固まった。
……これがいわゆる『絶句する』って事か?
「……いつの話だ?」
「いつって……、先週の事ですけど」
「……安藤、冗談じゃないよな?」
「え?いや、本当のことですけど」
「……嘘だろ……」
「せ、先生?」
完全に様子がおかしい。
……なんか変な事言ったっけ?
「先生?大丈夫ですか?」
「……あっ、……大丈夫だ」
絶対大丈夫じゃないと思う。
「……どうかしたんですか?」
「う、ちょっと気になることがあってな」
「はぁ」
「……じゃあこの辺で失礼するよ」
「あ、ちょっと……」
呼び止めようとしたが、先生は逃げるようにこの場を立ち去って行った。
あの時計を見つけて以来、先生の様子がおかしい。
……何なんだろう。
‐続く‐
あとがきと言うか美術部思い出話
どーも、舞軌内ですー
今回、本編の方短いですよねー。
まぁ、ちょっといろいろと忙しい身なもので……
なので今回は思い出語りもお休みです。スンマセン。
あと、また萌のみの丘でコンペやるっぽいですねェー。恐らく私も参加予定。
今回は二次創作で頑張ろうかなーとか思うてます。
ま、それはその時に。
ではこの辺でー