静刻暦千三〇七年。

エンキが滅亡し"南部争乱"は終わりを告げた。

瓦礫の山となった廃都エリシュからそう離れていない場所。

向かい合う、五人の存在。

全員が仮面を着けた怪しげな集団。

一人目は白いコートを着て顔の上半分を拘束帯で覆う者。

二人目は黒の礼服に悲劇の怪人が持ちいていた様な仮面をした者。

三人目は赤い外套に兜の如く顔全体を覆う仮面をした者。

四人目は白い外套に顔の上半分を覆う、涙する女性を模した仮面をした者。

最後の五人目は黒いコートに目視用の穴が開いただけの簡素な仮面をした者。

周囲に風は吹けども、そこは無音。

その中の一人、黒いコートに簡素な仮面をした者が指で通貨コインを弾く。

チャリン、と地に落ちた通貨コインは金音をたて――

――そして全員が其々に背を向けて歩み出した。







東方追想詩
The past episode -And seasons blood-


stage.1 戦闘潮流