中央大陸フォーネルトから海を挟んで東方にある国。
三つの島と連なる諸島からなる海洋国家群。
――
その主軸たる三島のうち最も西側、中央大陸寄り島メグメル。
メグメル島元メグメル国首都、現"連邦"首都エスラーナにて話は始まる。
epilogue
第二代東方参陸連邦代表の彼女――相楽美佐枝はそこに居た。
「……代表、この書類に目を通して下さい」
ドサリ、と書類の山が美佐枝の仕事机の上に築かれる。
書類を置いたのは長い髪を二つの三つ編にした少女。
少女の名は里村茜、旧ネクストン国出身の連邦行政官。
「はあ……なんであたしがこんな事やってんのか……」
溜息を吐きつつ、書類の山に立ち向かう。
書類の内わけの半分近くが始末書関係というのが更に溜息を誘う。
良くも悪くも連邦の人材は個性的だと言うことか。
「里村さん、やってみない?」
「…嫌です」
すっぱりと切って捨てられる。
はぁ、とまた溜息を吐く、その動作が様になっている。
初代代表が出奔して、代表代理として尽力したのが彼女だった。
人を惹きつける
を持つ者も居た。
類稀なる戦闘能力を持つ者も居た。
優れた政治力を持つ者までも居た。
だが、それでも彼女が代表代理になった。
それはそれぞれ候補者が性格に難があった事。
それに加えて美佐枝が世話焼きな性格の為であった。
そのままずるずると代理から正式代表になってしまった。
「はあ……
出奔した初代代表を探そうとは思わない。
初代代表を知る者はそう言うだろう、それは知っているから、
を。
と、その時外から喧騒が聞こえる。
「今日も皆元気よね」
「原因はいつもの三人みたいですね」
「はあ、頭痛いわ……」
溜息を吐きこめかみを指で押さえる美佐枝。
日常と化した事なので茜はそのまま部屋を後にする。
ひいぃ、という悲鳴が聞こえ、また溜息を吐いた。
美佐枝は書類に目を通していた。
書類の山の内半分に同じ名前が記載されている。
その全てが始末書だというのは愛嬌だが。
被害額までも纏められており、頭痛の種だ。
コンコン、と扉がノックされる。
美佐枝が許可するとファイルを持った一人の女性が入ってくる。
長い紫色の髪を顔の左側にリボンをした女性――藤林杏。
旧メグメル国五大家の一、藤林家の長女。
「代表、確認をお願いします」
美佐枝は差し出されたファイルを受け取る。
表紙に書かれた文字は"中央大陸進出案件"。
「二年か、長いようで短かったわね」
二年、それは統一してからの年月。
彼女の元で戦かった日々、それは全てを糧にして。
「藤林さん、案件は承認するわ」
「有難う御座います」
ファイルを残して杏は部屋を後にした。
はあ、とまた溜息を吐き、ファイルを机に投げ出す。
これでまた忙しくなるのかと思ったのか、溜息が重い。
ふと二年前を思い出す。
今が充実してないとは思わない。
それでも、思い出さずにはいられない、あの強烈な星を。
自分達を率いて三島を統一してしまった彼女を。
美佐枝は「あたしも年取ったもんだわ」と呟き、また溜息を吐いた。
――それは二年前の物語――
――まだ統一される前の三島の争いに塗れた歴史――
――それは統一までの物語――
――坂上智代が東方で奏でた戦いの詩――
――此れより二年前に回顧する――
To be next stage...