ときめきメモリアル
for Kanon Ladies
(Kanon:) |
第6話 交錯する恋心
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written by シルビア
2003.10 (Edited 2004.3)
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「お互いに、今の相手に恋をしている……昔の二人ではなくて」
「私、後悔してます。
ユウ君を信じてあげられなかったこと、後悔してます。
ユウ君のお嫁さんになりたい、その気持ち、嘘じゃないです!
でも、今の祐一さんを好きな気持ちも、嘘じゃないです!
でも、私……私……祐一さんを裏切ってるんです」
「栞……」
「ユウ君を想い……祐一さんを好きでいる、それは祐一さんへの裏切りなんです。
こんな私……こんな私、大嫌いです!
祐一さんが好きでいてくれると尚更……こんな私、大嫌いです!」
【香里】
「栞……」
まったく、木偶の棒みたいに突っ立っちゃってからに、もう〜
『いつまで、そんなところで突っ立ってんのよ!!』
思わず叫んじゃったない、みっともないことさせないでよ。
「香里……」
まだ、寝ぼけた顔をしてるわね。
仕方ないわ。
************ バシッ ************
あ〜、痛ッ。
大分、強くひっぱたいてしまったかも。
「思わず力入れすぎたわ。相沢君、大丈夫?」
「いきなり何をするんだよ!」
「貴方が悪いのよ、分かってないの? 相沢君、いいえ、「ユウ」!」
「……・」
********* バシッ バシッ ************
手の平が熱いわね。
「いい加減にしなさい、ユウ! 貴方、本当に何すべきかわかってないの?」
「一体、何を言ってるんだよ。痛いな〜、もう」
「はぁ〜」
私は溜息をついた。
分かってないらしい。
「なによ、男のくせに。栞の気持ちの方がもっと痛いわよ。
だいたいユウね、貴方がユウでも祐一でもそんなのどうでも良いことじゃない。
今は栞のこと嫌いなの?」
「いや……栞を……好きだと思う」
「じゃ、ユウの時は、栞のこと好きだった?」
「あ……うん」
「だったら、何を迷うのよ。
ユウも祐一も、”貴方”であることにかわりないでしょ。
貴方がそんな態度だから、別の人物のように言うから、栞は悩むのよ。
ユウと祐一、二つとも同じ気持ちなら、もう迷わないで!
それに……私を振ったということは、栞を迎えると言うことでしょう?」
「……あ、そうだな。分かったよ」
全く意気地なしなんだから。
でも、私もそんな彼の事好きだったし、好きなんだよね。
「相沢君!」
「何だ?」
「今回は栞に譲ってあげるけど、私との昔の約束は果たしてもらうからね」
「???」
「正直に答えなさい! 私、綺麗になった?」
「ああ、香里はとても綺麗な女性になったな」
「私にどきどきした?」
「栞には悪いけど……少しはどきどきした」
「よろしい!
では、今度の日曜日は私とデートすること! 良いわね?」
「は?」
「大きくなったら必ず会おうって、それに、絶対"でーと"しようって、
私はユウと約束したわよ。
だから……今度の日曜日は私とデートすること!
私だってユウの幼なじみよ。
ユウと一日ぐらいデートしても、栞に文句は言わせないわ。
いいわね、ユウ?」
「はい」(恐縮)
ふふふ。
『大きくなったら必ず会おうね。
その時は私ももっと綺麗になっているんだから。
だから、絶対"でーと"しようね』
でも、それは今の祐一にではなく、過去のユウとしたもの。
今の祐一の気持ちが栞にあるってことぐらい、そばで見てればわかるわよ。
負けたわ……栞。
だから、これからは姉として妹の恋愛、応援させて貰うわね。
この目の前にいる、幼なじみにも幸せになってほしいし。
「ほら……まずは、服装をちゃんと正してね。
いい? 栞を捕まえたら、今度は離しちゃだめよ。
ユウも祐一も、貴方なのよ。
貴方がどんな生き方をしてきても、今の貴方が貴方なの。
思い出に縛られないで、今の気持ちを伝えてきなさい。
愛してるんでしょ、栞のこと?」
「ああ、栞のこと愛してる。
すまないな、香里」
「私の事を気遣う余裕があるわけ? 本当にジゴロなんだから。
ほら、さっさと栞の心を奪ってらっしゃい」
ただ、今の祐一はあなただけのものだけど、昔のユウと一緒にデートさせて貰うわ。
それで勘弁してあげるから、早く栞の許に行きなさい!
私は祐一を教会の入り口にむき直させて、彼の背中をポンと押した。
彼はきょとんとしながらも、教会の入り口めがけて走り出した。
「ありがとな、香里。後で埋め合わせするから」
「いいわよ、どうせ日曜日にデートするんだから」
「げっ!」
「はいはい、さっさと行く!」
もうこっちに振り向かないでよ、祐一。
私だって……私だって……好きだったし、今も好きなんだから!
(バイバイ、ユウ。私の初恋の人)
あーあ、ユウにも祐一にも振られちゃった……
でも、もう泣かないからね、ユウ。
「言った通りだろ、美坂」
その時、教会の入り口の方で声がした。
「見てたの?」
「泣きたかったら、泣けよ。なんらな、俺の胸を貸そうか?」
そう言う北川君が姿が扉の影から現れた。
「そうしようかな」
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【栞】
はぁはぁ〜、もう駄目。
私って体力ないな〜、嫌になっちゃう。
(とりあえず、座ろう)
私は中庭まで駆けてきたみたい。
「祐一さんのこと、もう終わりですね」
「一体、誰がいつ終わらせたんだ?
俺はそんなつもりは全然ないぞ、栞」
え? 背後のこの声はもしや……祐一さん!
「祐一さん以外にこんなセリフは言わないよな?栞」
「こんな私に、まだそんなことを言いますか?
冗談にしては酷いですよ」
「本気さ。
ユウも祐一も栞が好きだからな。離れたくないってさ」
「でも私はユウ君も祐一さんを裏切ったんですから、彼女失格です」
「裏切った?何を?
第一、ユウは俺だぜ。ユウは祐一なんだぜ?
同じ奴を思うのがなぜ裏切りなんだ?」
「え?ユウは祐一なんだぜって、本当にそう思うんですか?」
「ああ、栞のことを考えると、ユウも祐一もへったくれもなくなった。
俺が栞を愛している、それだけでいい、そんな気がした」
「ふふ……ふふふふ……」
「はは……はははは……」
「「馬鹿みたい!」」
「ええ、そうですよね」
「ああ、そうだよな」
私、何を悩んでたんだろう。
よく考えたら、私の悩みって、すべて目の前のこの人の事ですもんね。
「ううう〜、私にずっと会いに来てくれなかったユウ君、大嫌いです♪」
「ちゃんと来たじゃないか?再会の約束は果たしたぞ?」
「いいえ、まだ駄目です。
"今度会う時、お姉ちゃんか私のどっちをお嫁さんにするか決めるんだよ。"
という約束はまだです」
「ほほ〜、その時、
"その時は、お姉ちゃんにだって負けないんだからね"
とも言ってたな。
栞、おまえさ〜、お姉ちゃんに勝ってると思うか?」
「えぅー、そんな意地悪なこと言う人、嫌いです!」
「今度の日曜にな、香里とデートするんだ、”でーと”をな。
さっき、約束してきた」
「え〜〜〜、じゃ、私はどうなるんですか?」
「どうしてくれようかな〜〜〜、なにげに俺のこと"嫌いです"って言ってるし〜」
……
「祐一さんの事、大好きに決まっているじゃないですか、信じてくれないんですか?」
私は焦りました。
お姉ちゃんに負けてしまう……そう思ったからです。
「じゃ、一生大好きな俺のそばにいるか?」
「そんな事当たり前です! ……って、あれ?」
「ふふふ……ははは……
俺は栞をお嫁さんにすることに決めた。
……昔の約束、たしかに果たしたからな」
祐一さん、はっきり言って意地悪です。
それに、お嫁さんだなんて、お嫁さんだなんて。(ポッ)
まずいです、これは祐一さんのペースです。
気を取り直さないと……またボロが出ちゃいます。
「はい、そうですね。
それでは……祐一さんのお嫁さんになります。
こんな私ですが、祐一さんのお嫁さんにしてください」
自然に答えが出ました。
私の背中から首ごしに回す彼の手が、とても愛しく思えたからです。
「じゃ、栞、結婚の誓いをたてる場所は、あそこで決まりだな?」
「ええ。私たちの教会以外では考えられません」
わ〜、するとウェディング・ドレスですね。
着たかったんです♪
七色の光の差し込む教会で、愛する人の前に純白のドレスに身を包む私……
ウェールを持ち上げられてキスされる私……
昔、一緒にあそんでいたユウ君の面影の残る、今の想人と。
ユウ君……
「ねえ、祐一さん」
「何だ?」
「昔の物語の続き、読んでくれませんか?」
「いいぞ、」
「じゃ、明日の土曜13:00、教会で待ち合わせしましょ」
「ああ」
幸せです♪
でも、ふと、思い出してしまいました。
少し前の祐一さんの言葉……
「ところで、お姉ちゃんと日曜にデートするって一体?
あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜
祐一さん! 一体、どういうことですか〜!!」
「そ・それは……」
その夜、私お姉ちゃんをたっぷりと責めました。
でも、結局、姉に勝てませんでした。
最終兵器「姉の涙」を使われてしまい私はあえなく撃沈です。
……ずるいです〜、お姉ちゃん。
(つづく)
香里:「作者〜、どうして私を痛い系のキャラで書くのよ!はずかしいじゃない」
(バギボギバギ)……うぐぅ〜
作者:「いつもこれだもの。やっぱり女性はやさしいのが一番だな。
栞を主役にしておいてよかったよ」
栞: 「お姉ちゃん〜♪ 頼まれたオレンジ・ジャム持ってきたよ〜」
作者:「ひぇ〜、それではまた」
栞: 「????
アオハタのオレンジ・ジャム、美味しいのに」
香里:「栞、あなたが羨ましいわ」(はあ〜)