ときめきメモリアル for Kanon Ladies
(Kanon:)
 第4話 想いをかけて 
written by シルビア  2003.10 (Edited 2004.3)



【栞】

(祐一さん♪)

あ〜、やっぱり私、祐一さんのことばかり考えてる。
あの微笑み、時にちょっと意地悪な笑みをうかべるけど、弱いんですよね〜。

でも、お姉ちゃん、強敵です〜。

(勉強だって)……学年主席
(容姿だって……胸ぼいん・腰きゅっ・尻ぽわ、とスリーサイズは抜群
(女の子らしさ)……料理上手、化粧上手、服のセンス良し

わ〜、勝ち目ないです〜、ううう〜。

「栞、祐一さんの事は諦めなさい」
「え〜、お姉ちゃんずるいよ。私に勝つつもり?」
「ふふ、言葉通りよ。譲らないわよ」

えぅー、お姉ちゃん、今度は本気だ〜。
どうしよう〜。

「私だってお姉ちゃんに負けないんだから〜」
「それ、本気で言ってる?」

(本気だもん)
乙女が本気になったら、怖いモノなんてないんだから〜!
そうよ、私だってやれば出来るのよ。
お姉ちゃんの妹なんだし、きっと素質はある……と思う。

--------次の日、学校にて

「栞ちゃん、何悩んでるの?」
「沙希ちゃん……」

虹野沙希ちゃん、私の親友、野球部のマネージャーでエースの彼と恋をしている、とても心の優しい娘。
あ、そうだ!

「実はね……2年の相沢祐一さんのこと……」
「好きになったとか? そっか〜、いよいよ栞ちゃんも恋する乙女になるのね」
「うん、……そう」

沙希ちゃん、私に彼がいないのを気にしていたから。
だって、沙希ちゃんと彼、とても仲よくて3人で居るときはいつも私に気をつかってくれるから。
この前も彼の友人を連れて、遊園地でダブル・デートしたし。

「じゃ、私、栞のこと応援するわ。それで、何からはじめようか?」
「何からはじめるって?」
「栞〜、本気で言ってる? 
 相沢祐一さんってかなり格好いいわよ。ぼけーっとしてたら他の娘にとられるわ。
 ラブアタックは先手必勝、最初に彼の心を射止めた人が圧倒的に有利よ」

そうかもしれない。
確かに、沙希の彼氏も1年では上位3人に入る人気者、優しいし頭もいいし格好もいい。
その彼が彼女に夢中になっているんだから、この言葉に嘘はないと思う。

「ね〜、沙希は彼をどうやって射止めたの?」
「そうね、彼の側でタオルを出して上げたり、弁当を作って上げたりと
 いつも彼のそばに距離をおいていたことだったかな〜。
 ふふ、こう見えても料理には自信あるの。
 一度食べさせたら、離れられなくさせる自信はあるわ。
 それに、大好きな彼につくるお弁当なら……」
「お弁当か〜……料理、私、あまり得意な方じゃないんだよね」

そう言えば祐一さんは昼はいつもパンばかりたべてますね。
ようし、私も頑張ってみようかな。

「じゃ、特訓ね。決まり。今日、私の家においで。
 ふふふ、鍛えてあげるわよ〜!」
「特訓って……でも、やっぱりお願いしていいかな〜」
「親友のためだもの、OKよ。明日は彼を"食殺"するのよ、栞ちゃん」

(さて明日の弁当のメニューは何にしましょうか)
  ←そうおもった時、声ならぬ声が聞こえました。『たこさんウィンナー』

……翌日……

「あれ、香里、今日は弁当持ってこなかったの?」
「ええ……実はね……」
「祐一さん♪ あの〜、これ食べてくれますか?」
「それはいいが、栞、この3段重箱はなんだ?」
「私の気持ちです」(ポッ)
「栞、気持ちってね〜……だからって、家の食材、全て使いきらないでね」
「いいんです。お姉ちゃんは弁当を作れなくても♪
 さあ、祐一さん、たくさん食べてくださいね」
「栞〜!怒るわよ」
「栞、それはやりすぎだぞ?」
「えぅー、分かりました。
 祐一さんがそう言うなら、お姉ちゃんにも分けてあげます。
 ……みんなで食べましょう」
「仕方ないわね。今日はそれで許してあげる」
「ははは〜、ま、とにかく食べようか。……うん、たこさんウィンナー、なかなかいける」
「まあまあね。(汗)(う〜、何故栞がこれほどの味をだせてるのよ〜?)」

お姉ちゃんの料理にはまだ叶わないけど、私だって負けないんだから♪
それにしても沙希ちゃんって料理上手で教え上手、これからも伝授して貰おうっと。
でも、明日から量を減らさないと、お姉ちゃんの制裁をくらいそう……(怖)

★★★★★「祐一の好感度ゲージ」★★★★★

ポイント数   感情  祐一のいらいら爆弾
_______________________________________________
香里 7 不機嫌 なし
栞  10 普通 なし

コメント:
栞の妨害にあって、なかなか弁当が作れなくなった香里。
結論からすれば、祐一はすっかり栞の弁当にとりつかれた。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

---------とある金曜日の放課後

「相沢、今度の日曜日は暇か?」
「ああ、特に用事はないが」
「だったら遊園地にいこうぜ。
 ちなみに俺たち二人の他に、女の子を二人誘った。
 お前がいくならということでな。だから必ず来い。決まりだ」
「分かったよ。で、女の子二人って誰だ?」
「それは当日のお楽しみというわけだ」

……日曜日の朝、祐一の家の前

「祐一さん♪」
「あれ、栞、なんでここにいるんだ?」
「祐一さんをお迎えにあがりました。
 今日、私も一緒に遊園地にいくんですよ。聞いてません?」
「栞が女の子の一人か。ということは……」
「お姉ちゃんと北川さんなら駅で待ってます。さあ、行きましょう」
「おいおい、栞……」
「いいじゃないですか、今日ぐらい♪」

私は祐一さんの腕を組んで、駅までの道のりを二人で歩いたんです。キャ♪
遊園地にいく条件で、北川さんに相沢さんの住所をこっそり教えてもらったんです。
これで一歩、お姉ちゃんを出し抜きました♪

駅につくと、お姉ちゃんは仏頂面をしてます。
だって、私、今でも祐一さんと腕を組んで歩いて居るんですから。
北川さんが必死になだめています。
それでも、祐一さんが(よう、香里だったのか)とにっこり笑って話しかけると、なぜかお姉ちゃんも機嫌がすぐによくなってしまいました。
祐一さんの笑顔って、凄いですね。

「さて、何に乗る?」北川さんが言います。
1.ジェットコースター
2.お化け屋敷
3.観覧車
4.メリーゴーランド

平等になるように、私達は乗り物に乗る都度、ペアを入れ替えてます。
今度は私と祐一さんのペアです。

私は悩みました。
(観覧車……いいかもしれません)
  ←そうおもった時、またもや声ならぬ声が聞こえました。『祐一は高所恐怖症だ』

高所恐怖症?それでは観覧車はいけませんね。残念です。

「それでは、お化け屋敷に行きましょう」

実は私は幽霊の類は苦手です。
昔、入院したときに、病院の怪談に恐れて、夜に手洗いにいけなくて困った位です。
でも、今日は祐一さんも一緒だし……怖かったら抱きついてしまいましょう。

でも、不思議ですね、祐一さん、なぜかホッとした表情をしてます。
そういえば、お姉ちゃんと落差の激しいジェット・コースターに乗っていたような。

「じゃ、入ろうか」
お化け屋敷はとても怖かったです。
肌にべろんとした感触がしたり、急に悲鳴が聞こえたり、いきなり闇夜に提灯が飛んでいたり……私は途中で意識をなくしました。

「栞……栞、大丈夫か?」
「うう〜、大丈夫です……って、あれ?」

目がさめた時、私は祐一さんと並んで座ってました。
目先には彼の膝が見え、私は彼の右肩に頭をもたげてました。
右肩には彼の腕が回ってました。

「気を失ってたぞ、栞。はーーん、怖いのは苦手か?」
「本当はとても苦手なんです。
 あの〜、祐一さん……この姿、とても恥ずかしいのですけど」(ポッ)
「そうか? 恥ずかしいのか? こういうのは、男冥利につきるといってだな〜」
「祐一さん!」

でも、幸せです。
私はしばし、そのまま甘えてました。

★★★★★「祐一の好感度ゲージ」★★★★★

ポイント数   感情  祐一のいらいら爆弾
_______________________________________________
香里 7 激怒   じりじり
栞  10 良好 なし

コメント:
祐一の困る顔みたさに、ジェットコースターに無理矢理乗せた香里。
気絶しながらも、おばけ屋敷を選択した栞。
軍配は……祐一の男のロマンをかなえたのは栞だったのだ。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

遊園地を出た4人は喫茶店「キタガワ」に入った。

なんでも、ここは北川の親戚がやっている店とかで、特別料金にしてくれるらしい。
金欠の相沢にとってみれば、それもひとつの救いらしい。

なんか、お姉ちゃんと北川さんがこそこそ話しをしてますね?
何を話してるんでしょうか?

(北川君、こういうところにはおきまりのカップル・メニューがあるわよね?)
(当然。おすすめはだな、恋人専用トロピカル・フロートだ。
 フルーツの甘みがなんともはやで、好評らしいぞ)

私の注文はというと、バニラの入っているものです。
え〜と……これがいいですね。

栞「チョコレート・パフェをください」

祐一「キリマンジャロ・コーヒーとカツ・サンドイッチで」
北川「レモンティー」

香里「特別メニューのトロピカル・フロートを」

あれ、お姉ちゃんの頼んだメニューって……うん?
メニューを覗いた私は顔色が変わりました。
(お姉ちゃん、ずるいよ〜!)
悔しいですが、後の祭りでした。

オーダーしたものが届くと、祐一さんは少し怪訝が顔つきをしました。
お姉ちゃんは、長めのスプーンを手にして、ちょっとゆったりと、そう祐一に見せつけるとばかりの仕草でアイスを一口すくって口元に運びました。
それも口元に色気をたっぷりと乗せて……

(やはり……)

祐一さんの視線がお姉ちゃんの口元に釘付けになってます。
お姉ちゃんのスプーンは口元でしばらく留まってましたが、翻るとアイスを再びすくっては、祐一さんの口の前に差し出されました。
「相沢君、ジェットコースターで脅かしてごめんね。
 さっきのお・詫・び・よ♪」
「あ、ああ」

あれは間違いなく"あーん"という恋人の語らいです。
(祐一さん、だめ〜〜〜〜〜〜〜!)の私の心の叫びは無意味でした。
お姉ちゃんのスプーンは祐一さんの口の中に取り込まれました。

「美味しい?特製よ♪」
「ああ、美味いよ。ちょっと"甘い"がな」
「ふふふ♪」

私の目の前で幾度となく繰り返されたスプーンの往復を、私はただ唖然と見てました。
妖絶なまでの魅力ある色気を前にして、私は割り込む余地もありませんでした。
色気ではお姉ちゃんには絶対勝てない、そう思いました。

★★★★★「祐一の好感度ゲージ」★★★★★

ポイント数   感情  祐一のいらいら爆弾
_______________________________________________
香里 10 普通   なし
栞  10 良好 なし

コメント:
あーんの仕草も大人っぽい香里の前に祐一は引き込まれた。
かぎりなき反則に近い姉を前に、妹はなすすべなしで撃沈。
祐一の香里へのいらいらも直ったようだ。
軍配は……祐一の男のロマンをかなえたのは香里だった。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


---------祐一の誕生日を数日後に控えたある日

「栞ちゃん、どうしたの?溜息なんかついちゃって。また祐一さんの事?」
「うん。祐一さんがね……そろそろ誕生日なんた」
「なーるほど。それで何を贈ろうか迷ってるんだ」
「うん」
「大丈夫よ、栞の選んだものなら何でも喜んでくれるって。
 心配なら、"キス"の一つでも添えてあげれば?」
「沙希ちゃ〜ん……」(ポッ)

「あら、栞ちゃんのこと、女生徒の間ではもっぱらの噂よ。
 クラスメートの姉とその妹が祐一さんをめぐって、美少女同士の争いをしてるってね。
 栞ちゃんって、この前の男子の人気投票では一年生のNo.1 だったのよ。
一年生のNo.1と二年生のNo.1との争いだから、みんな注目してるのよ」
「え〜、そんなNo.1だなんて、恥ずかしいですよ〜」
「はぁ〜、自覚ないのね。どれだけの男子生徒が影で泣いたか、知らないのね。
 栞へのラブレターを渡してくれって、何人も私の所にお願いに来てるのに」
「でも、祐一さん以外には男の子なんて、考えたこともないし」
「あらあら、すっかりのろけちゃって〜。ご馳走さま。
 それで、プレゼントはもう決まったの?」
「実はまだなの。沙希ちゃん、選ぶの手伝ってくれない?」
「はいはい。
親友ですもの、しっかり応援させてもらいます。
 そこかわり、お礼のフルーツ・パフェよろしくね」

---------祐一の誕生日

私は祐一さんと、巨人×阪神戦 デーゲームの試合を見に来てます。
大きなスタジアムに満員の観客、ちょっとめまいがしそうですが、祐一さんはとてもはりきって巨人を応援してます。

なぜ、こういうシチュエーションになったかと言うと……
「その日はなるばく彼を拘束して、他の娘に会えないようにしむけないとね。
 はい、これ、栞にあげるわ。一緒にいきましょう」
そう言った沙希が栞にプロ野球のチケットを2枚くれたのだ。
そして、沙希と沙希の彼氏を交えて4人で試合を観戦しに来たのです。

沙希と沙希の彼氏はとにかく熱狂的に応援してましたし、祐一さんも例にもれません。
(男の子って……)
応援好きの沙希のことはいつも見慣れていますが、こんなに燃えている祐一さんをみると、私もついテンションが上がってしまいます。
自分じゃない自分がそこにいた気がします。
そうして、祐一さんに野球の事をいろいろ教えてもらいながら、楽しく過ごしました。

「いや〜、今日は燃えたな〜。誘ってくれてありがとう」
巨人が勝って、祐一さんは超ご機嫌の様子です。

「相沢先輩、今度僕達の試合も見に来てください。
 先輩が来るとスタンドの応援が一段と華やかになるんで、気合いが入るんですよ」
「あら〜、私の声援だけでは不満なのかな〜?」
「い、いや、そういう事じゃなくて……」
「はいはい。じゃ、相沢先輩に栞ちゃん、またね♪」

沙希ちゃん、そんなにいちゃいちゃを見せつけなくても……
でも、私は沙希ちゃんの言葉を思いました。
(いい?栞ちゃん、私達二人が祐一さんの前でたっぷり見せつけてあげるから、後は
 栞ちゃんはしっかり祐一さんに甘えるのよ。恥ずかしがっちゃ駄目だからね)

チャンス……かな?
沙希ちゃん、気を遣ってくれたんだね、ありがとう。

「祐一さん、行きましょうか?」

私は祐一さんの手にそっと抱きつきました。
彼の手は私の胸の谷間にしっかりと収まってます。
正直、とても恥ずかしいんですが、なんとか表情にでないようにがんばりました。

「あ、ああ」
彼はそう言って、しばらくそのままの格好で歩いてくれました。
顔……赤いですよ、祐一さん。
でも、道ゆく人の視線に、私もいつの間にか顔が赤らんでます。

私の家が近づいた時、私は祐一さんの手をほどきました。
「祐一さん、家に着きました」
「ああ、着いたな」
「帰る前に渡しておきたいものがあるんです。はい、これ、祐一さんに」
私はそう言うと祐一さんへのプレゼントを取り出して手渡しました。

「祐一さん、誕生日、おめでとうございます」
「ありがとう、栞。覚えていてくれたんだ。ここで開けて良いか?」
「ええ……ちょっと恥ずかしいんですが……」

二つ折りの写真スタンドで、2枚の写真が入っていた。
片方には祐一が写っている写真が入っていた。
そして、一方には栞の写真が入っていた。

「2つ買いました。実は……これと同じモノ、私の部屋にもあるんです。
 祐一さん、時々でいいですから……これを見て私の事……その……想ってください。それと……」
「それと?」
「私から、もう一つのプレゼントです。……」

栞は祐一の方に手をのばし、しっかりつかまりながら、その背を伸ばした。
つま先立ちのその小さな体が祐一の胸にしっかりと捕らえられた。
目を閉じた栞のそのほのかに小さな唇が、祐一の唇を、しっかりと覆った。

★★★★★「祐一の好感度ゲージ」★★★★★

ポイント数   感情  祐一のいらいら爆弾
_______________________________________________
香里 10 普通   いらいら
栞  20 最高 なし

コメント:
栞の妨害でまたもや祐一に接近できない香里。
誕生日のイベントを損ねた香里に祐一は少しご機嫌ななめ。
かたや、しっかりとこのイベントをゲットし、キスまで
もちこんだ栞は、祐一の心に大接近する。
自分の誕生日はこんな風に祝ってほしいもの、そんな
祐一の男のロマンをかなえたのは栞だった。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

---------その2日後

【香里】

(栞ったら……)

誕生日の日、祐一の家にいったら、既に出かけた後だったのよね。
しばらく居たけど、帰ってきそうもなかった。

その日、栞が随分とご機嫌だったんで、つい栞を追求してしまったわ。
強情な栞はなかなか白状しなかったけど、カイザー・ナックルを前に怯えた栞は
諦めてその日の出来事を大人しく話したっけ。

だいたい、姉を差し置いて、ずるいわよ、栞。
そんなことするなら、私だってもう手段は選ばないわ。
ええ、栞が泣いて叫ぼうともう知らない、私にはもう妹はいないわ。

おかげで、昨日といい今日といい、相沢君はやけに私に冷たかったわ。
どれだけ私が慌てたか分かる?
平然とするのだって苦労したんだからね。
とにかく、これもそれも、栞のせいだからね!
でも、せっかく用意したのに渡しそびれたプレゼント、彼に渡さないと。

どうしようか、うーん。

ええい、うじうじしては乙女が廃る。
こうなったら行動あるのみよ。

---ピンポーン

「はい……って香里!」
「そうよ、貴方に昨日も今日も無視された香里よ。入っていいわね?」
「あ……ああ」

ここが祐一の部屋なのね、男の子にしてはずいぶんこざっぱりしてるのね。

「レモン・ティーでいいか?」
「いいわよ、お構いなく。それよりも、これ渡しにきたの」
「ありがとう、香里」
「いっておくけど、相沢君の誕生日を忘れたわけではないの。
 その日の朝にここにも来たんだけど、相沢君が出かけた後だったから」
「そうか、俺の勘違いか。悪かったな、俺も変に拗ねてしまったみたいで」
「もう、いいわ。でも、相沢君に無視されたようで、私、とても辛かったんだから」

あれ? あの写真立ては……祐一と栞じゃない。

「ね〜、相沢君。あの写真立ては栞のプレゼント?」
「ああ、そうだが」

妹にしては、いい趣味ね。
でも、あれを堂々と机に飾る相沢君にはちょっとむかっとするわ。

「相沢君、栞とはどこまで進んだの?」
「進んだって、なんのことだ?」
「とぼけないで。キスまで? それとも、もう栞を抱いたの?
 栞から聞いて、知ってるのよ。栞とキスしたんだって?
 栞はね、私の可愛い妹なのよ。
 冗談でつき合ったら、いくら相沢君でも容赦しないわよ」
「ちょっと待て、香里。確かにキスはしたが……」

私は彼のあわてふためく姿を見て、あることを心に決めた。
栞のプレゼントをみて、私の嫉妬に炎がともったみたい。

「相沢君、ひとつはっきりさせたいことがあるの。
 私は栞の姉だけど、一人の女の子でもあるわ。
 そして、私はあなたの事、好き。
私と栞のどっちを本当に好きなのか、この場ではっきりしてほしいの」
「香里……」
「私は本気だからね……いいわ、証拠を見せる……」

私はリボンをはずし、制服のボタンをゆっくりとはずし始めた。

「もし私の事、好きなら、今から私を好きにしていいわ」

彼の視線が熱い。
今の相沢君は本当に迷っているのが手にとるように分かる。
私、とても意地悪かもしらない。

でも、私だって、もう後には引けない。
もう、制服のボタンはすべてはずれてる、するりと足下に滑り落ちる私の制服。
肩からスリッドの紐をずらすと、同じように滑り落ちる。

「答えて!私が好きだと言って!」

私はブラのホックに手をかけ、ホックをはずした。
ふわっとした感触がして、それを抑える。

「私……私……貴方が好き。もうどうなってもいい、貴方が好き……。
 お願い、私を好きだと言って!」

私は胸を抑えながら、自分の気持ちをあからさまに表現してしまった。
大胆、そう大胆だけど、それでも、彼の気持ちが欲しかった。

私の手に相沢君の手が触れる。

「もう止めろ、香里……それに、香里、すまない。
 俺はお前を受け容れられない」

一番聞きたくなかった相沢君の言葉。
私は彼の胸に泣き崩れた。

「分かっていたのよ。あなたが栞の事好きだって。……でも……私も好きだったのよ。貴方を失いたくないの……栞の事嫉妬ばかりしてみにくい姉だけど……それでも栞に負けたくなかったの。ごめんなさい、相沢君」
「いいさ、俺が悪かったんだ。香里の気持ちを乱したりして……すまない」
「ううん、それでもいいの。本当の気持ち言ってくれたから。
 私、貴方を好きなこと、後悔しないようにするから」
「香里もいい女だよ。
でも、香里とは友達以上にはなれない。
 栞に出会ってなければ、きっとお前に恋をしたかもしれないな。
 俺は……俺は栞が好きなんだ。
 自分の気持ちに嘘はつけない」

★★★★★「祐一の好感度ゲージ」★★★★★

ポイント数   感情  祐一のいらいら爆弾
_______________________________________________
香里 18 良好   なし
栞  23 Win 最高 なし

コメント:
香里の身をかけた告白の前に撃沈寸前の祐一。
しかし、栞への想いを再確認してしまった祐一は
香里への想いを断ち切った。
彼は栞とのハッピーエンドを望んだのだ。
それは、ほんのわずかな恋のタイミングだったかもしれない。

Winner-----栞

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


(つづく)


後書き

香里:「……やったわね、作者〜」
作者:「……この役は香里でないとできないと思うぞ」(恐恐恐
香里:「ふーん?」

(バギボギバギ)……うぐぅ〜

作者:「やっぱり殴られる宿命なのね、私」(悲)

香里:「当たり前よ。だいたい私のファンが見たら本当に殺されるわよ。
それに、この上、栞まで不幸にしたら二度と執筆できないわよ」
作者:「ワカリマシタ」
香里:「よろしい」


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