ときめきメモリアル for Kanon Ladies
(Kanon:)
 作者より 
written by シルビア  2003.10 (Edited 2004.3)

 

ときめきメモリアル for KANON Ladies 執筆にあたって


まずは、拙な文章を最後までお読み下さって、ありがとうございました。
もし、まだお話をお読みでない人は、この文章は最後に読んで下さい。


第1話の脚注にギリシア神話の女神プシュケの物語を書きましたが、
実は、あえてこの時は物語の全容は書きませんでした。

このSS連載の土台となったこの神話、まずはこちらの話を先にしましょうか。

まずは、このプシュケの物語の全容を読んで頂きましょう。
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(ギリシア神話における女神プシュケ(Psyche) について)
 ギリシア語で『魂』の意味で、その彼女の恋愛から「不滅の魂」をも表す。
 また、動物では、不死を示す彼女のイメージから「蝶」に例えられる。

 神話では、愛の神エロス(キューピット)の妻となる女性として登場する。
エロスは美と嫉妬の神アフロディーテの息子であり、二つの矢「恋の矢」と「嫌悪の矢」を持ち人の心を変える力をもつ。
その「恋の矢」を射られると目の前の人に恋をする、一方の「嫌悪の矢」を射られると目の前の人を嫌い拒絶する。

 ある王の許、3姉妹の末妹としてプシュケは生まれた。
3姉妹はとても美しかったが、とりもなおさずプシュケは絶世の美女と評判だった。
だが、なぜかプシュケには婚姻の申し出がなかった。
プシュケは美の女神アフロディーテの嫉妬を買い、その呪いを一身に浴びたからだ。
 プシュケの美をさらに妬むアプロディーテは、彼女にさらなる試練を与えようとした。
 息子エロスに命じ、その「恋の矢」の力をもってして、プシュケを身分不相応な相手と結婚させ恥をかかせようとしたのだ

 しかし、プシュケの美に目のくらんだエロスは誤って「恋の矢」で自分自身を傷つけ、
 自分の目の前にいたプシュケに恋してしまう。
 しかし、神である自分自身と人間であるプシュケとの恋はすんなりとはいかない。
そもそも神の姿を人間が見るということは重大な禁忌とされている。
 エロスはプシュケの両親に神託を与えた。
「娘をエロスの神殿に捧げよ。
 そうすれば、神の寵愛によって娘プシュケは幸福になる。
 しかし、娘は夫の姿を決してその目で見てはいけない」
そう、エロスは自らの正体を隠してプシュケーを自らの館に招き、妻としたのだ。

 プシュケは、はじめは正体のわからない夫ではあっても幸せに暮らしていた。
エロス神の寵愛を一身にうけたプシュケは、はじめは正体のわからない夫であったが、
その夫を次第に信じ、神託の言葉を守って、夫と幸せに暮らしていた。

「あなたの夫の正体は神ではなく魔物なの。あなたは騙されているのよ」
 プシュケの美と幸福に嫉妬した姉たちに、自分の夫への猜疑心を吹き込まれ、
 とうとう夫が眠っている間にこっそりその寝顔を覗いてしまう。
 エロスはそのプシュケの様子に気がつき、二人の約束が反故にされたことを知る。

 神の姿を人間が見る禁忌を犯したが故、エロスはプシュケの許を去った。
 自らの猜疑心によって幸福を失ったことを悔やんだプシュケは、神殿を去り、
 夫を求めて世界をさまよう。
 やがてプシュケは、義理の母であり彼女の不幸の原因をなしたアフロディーテの
 神殿に辿りついた。
アフロディーテは、自らの息子エロスの懇願と、自らの嫉妬心への後悔の念から、
プシュケにさまざまな難題の試練を与えることとして彼女の存在を受け容れた。
夫への愛を信じてアフロディーテの与えた難題を克服したプシュケは、やがて、
アフロディーテと和解し、かつての夫エロスと再会する。
 そして、エロスはゼウスの許可を得てプシュケに神酒アンブロシアを飲ませ、
 プシュケに神の仲間入りをさせた。
そして、エロスとプシュケは永遠の愛を手に入れる。
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「あなたの夫の正体は……」以後の部分はあえて第1話の時点では書きませんでした。
実は、この部分が『KANONメモリアル』の核となる話だからです。

賢明な読者はもうお分かりですね?
恋愛の最も重要な要素は「信じる心」だと私は思います。
恋愛経験の浅い人というのは、とかく信じる心を見失い、ちょっとした事から猜疑心に心を奪われてしまいがちです。
それこそが恋愛相手の信頼への最たる不徳といえましょう。

そして、大事なのはその不徳に気がついた時、どうするか、それが有る意味で恋愛の醍醐味と言えないでしょうか。
自らの全てを賭けて信じる心を取り戻そうとする試練に身を投じるか、失った愛情を悔やむのか、その選択を人は必ず迫られます。
プシュケが最後に永遠の愛を手に入れたのは、前者を選択しその試練に耐えたからこそ、
裏切りで傷つけた想人の心をとかし、美の女神に受け容れられたともいえます。
私は、そういったプシュケの心の成長物語ともいえる、このギリシア神話はとても人間くさく、「不滅の愛」の象徴たるプシュケをとてもすばらしい女性だと感じます。

そんなプシュケの物語を、伝記と祐一達に投影したのがこの話です。
KANONワールドのSSなので、ヒーローは祐一に即決定ですが、誰をヒロインにするかは大分迷いました。
しかし、私の今までの作品を考えて、栞の物語にしようと。ドラマ好きの夢見る彼女、その彼女が伝記に憧れ少女趣味を爆発させたら面白いだろうなと考えたのです。
そして、フォローというかアシスト役として香里に登場してもらうことにしました。
栞と香里の恋愛対決という形をとりましたが、それは栞の成長にあたり香里がいい目標になればという姉妹の関係を少し前面に出したかったんです。

私の想像した美坂姉妹はこんな感じですが、読者の皆さん、気に入ってもらえましたか?

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