始まりはちょっとした気紛れだった。
今日は水曜日……ブリックモールの定休日。
暇を持て余していた俺はせっかくだし大学の様子でも見に行こうと思い出かけたのだ。
あと、里伽子の様子も見に行くのも兼ねている。
まぁ、そんな訳で『はぐれてんちょ純情派〜大学ぶらり一人旅〜』の幕が開け……
「「む……」」
あんなこと(てんちょはつらいよ 〜クリスマスの災難〜参照)があったにも関わらず大して変化が見られないお隣さんが現れた為、玄関から一歩で一人旅の幕は下りた。
パルフェSS てんちょはつらいよ 〜定休日の災難〜 前編
「……奇遇ね、仁」
「奇遇だな」
「何処行くのよ?」
「大学だ」
「休学してるんじゃなかったの?」
「顔見せに行くだけだ」
「ふぅ〜ん、そう」
「何だ? 何か言いたげだな」
「い〜え〜、本当にそれだけかと思いましてねぇ」
「口の端を引きつらせてまで、何が言いたい?」
「やっぱり元彼女は待遇が違うわね」
「あのな……何度も言うが里伽子は元彼女じゃ……」
そんな会話をしながら俺たちは駅までの道を走る。
どちらからともなく早歩きになり、気が付けば追いつけ追い越せのデットヒートと化している。
しかも今までの会話を怒鳴りあいながらだ。
「くぬっ! 言い訳なんて見苦しいわよ!」
「ぬぉぉ! 言い訳じゃなく純然たる事実だ!」
「だったら私にも同じ待遇を要求するわ!」
「同じだろうが!」
「どこがよ!」
「全部だ!」
「ぬけぬけとまぁ……今日だって夏海さんに会いに行くんでしょ! ……私をほっぽって……」
「あのな、本当に大学に行くだけだぞ!?」
「本当にそれだけだったら私がついてっても構わないわよね!? いえ、むしろ隣に住んでる私を誘っていくべきよ!」
「どーゆー理屈だ!? それにその理論だと由飛だけ待遇が変わってくるぞ!?」
「姉さんはいいのよ!」
「超理論!?」
「超理論でも何でもないわよ! 私達三人があーなっちゃう前から姉さんだけ特別扱いだったじゃない! だから問題ないの!」
傍から聞いてるととてもヤバイ類の会話をしながら、冬の駅前を猛ダッシュ。
ちなみに勝敗は駅構内のタイルを最初に踏んだ者が勝ちというルールである。
そんな事が何故決まってるかというと、何度かコレを繰り返しているからである。
あと、負けた者は勝者の頼みを何でも聞くというある意味とんでもないものとなっている。
「きょ・う・こ・そ・は・勝つ!」
「今回も私が勝つ!」
これまでの戦績は俺の三戦三敗となっている。
俺も年かねぇ……と少しだけ思ってしまう今日この頃。
そんなこんなで駅が見えてきた。
「今日はしつこいわね!」
「毎度毎度負けてられるか!」
あと200m程だろうか。
このペースを維持すれば恐らく勝てる。
最高速ならば俺の方が上だ。スパートのかけどころさえ間違えなければ……
「私に何させる気なのよ!」
「秘密だ! せいぜい恐ろしがるがよい!」
それに玲愛も気付いているのか、玲愛も焦ってるようだ。
「さては私に変なことさせる気ね! この変態!」
「何とでも言え!」
そんな状況でも会話を絶やさない俺達。
しかし、この会話こそがこのレースの前提条件なのだから仕方がない。
会話しながら走ること。
それが暗黙のルールなのだ。
それを破るならせめて相手から破らせないといけない、男の沽券にかけて!
「否定しなかったわね!? 有罪確定よ! このけだもの!」
「あほらしくて否定する気も起きなかっただけだ!」
あと50m程だ。
あと10秒も経たずに決着する。
「まっけるもんですかぁぁーーーっ!」
「ぬぐぉぉーーーっ!」
そして……
「どーよ! 今日こそは俺の勝r『仁! どきなさ……』ふごぉっ!?」
勝利して得意気に振り返った俺と勢いを殺しきれなかった玲愛が衝突した。
完全に不意を打たれる形となった俺は玲愛を受け止めきれずに地面に押し倒されゴロゴロと転がる。
ゴロゴロと転がり……駅の掃除をしていたおっちゃんのすぐ隣……掃除用に汲まれていた水の入ったバケツに直撃してしまう。
「っ痛〜〜〜!」
「…………」
「何やってんのよ仁! 避けるか受け止めるかしなさいよ!」
「…………」
「聴いてるの仁! ……仁?」
「…………」
「仁? ……ちょっと、変なとこに頭ぶつけたんじゃないでしょうね?」
「ん……いや、大丈夫だ。ちょっと頭から水を被ったくらいだ。『俺は』」
「水? あ! 私もスカートに水かかってるっぽいわね。濡れてる感じがして気持ち悪い……ん? あれ?」
俺たちはバケツに当たり水をこぼし、その被害を被った。
俺は頭、玲愛は腰から脚にかけて。
それほど水は入っていなかったらしく、被害範囲も小さい。
だが、よく考えてみよう。
被害範囲は小さく、被害場所は俺の頭と玲愛の腰周辺だ。
それを意味するところは……
「あ……ああああ、あんた何処見てるのよ!? っていうか何処に頭突っ込んでんのよ!?」
「言って良いのか?」
「言うな!」
「どっちなんだ……とりあえず玲愛が起き上がらない限り、俺は自力で起きれそうにないんだが」
目の前にはびしょびしょに濡れた玲愛の下着があった。
一応弁明しておくがワザとではない。
「解ったわ……ってナニおっきくしてるのよ!」
「くぁwせdrftgyふじこlp;@:!?」
俺の目の前に玲愛の下半身があったように、玲愛の前にも俺の下半身があったらしく、どうも俺の反応が玲愛の視神経を侵したらしく……
股間に向かってエルボーをかまされた。
「あー、お二人さん。少しいいかな?」
「あ……」
「ひぎゅ!? ……くぎゅ!?」
口の端を引きつらせた清掃員のおじさんに玲愛は硬直し、俺は別の意味で硬直したまま動けなかった。
「アンタのせいで大恥かいたわよ!」
「俺はお前の所為で大怪我とトラウマ再発したけどな!」
「四回も五回も大して変わんないわよ!」
「それ以前に俺の急所をぞんざいに扱うな!?」
あれから清掃員のおじさんに怒られ、ひたすら謝り倒し、現在、玲愛の濡れたスカートの代わりを買い、デパートを後にしようとしているところだ。
「んなものどーでもいいわよ」
「いいわけあるか!」
「さて、仁。 次行くわよ」
「ああ、大学だな」
「違うわよ」
「は?」
「アンタね……スカートだけ買っても下着が濡れたままなのよ」
「おい、ちょっと待て……お前まさか……」
俺がひぃ!? と逃げ出そうとした所で玲愛が俺の腕にしがみつく。
「逃がさないわよ仁……ちゃんと下着代もだしてもらうんだからね」
「俺が勝負に勝ったはずなのに!?」
「それとこれとは話は別よ!」
「解った! 金なら出すから俺を引きずっていこうとするな!」
「今、逃げ出そうとした奴が言っても説得力がないわよ!」
「い〜〜〜や〜〜〜〜〜!?」
「あーもう! 観念しなさい! っていうかむしろ喜びなさいよ! あんたの好みのやつにするんだから」
「あの空間に居ること自体が苦痛なんだよ!?」
俺の必死の説得にも関わらず俺はランジェリーショップへと連れて行かれるのであった。
「……はぁ」
私こと夏海里伽子は教室の入り口を見て溜息をついた。
あの夜から三週間が経過した。
時は過ぎれども状況は変わらず。
仁は私のものにはならず、またあの姉妹のものにもなっていない。
とはいえ、ヤることはやってたりする宙ぶらりん。
これは良くない。
今更だが何でこんな三文芝居的な状況になっているのか。
客観的に考えると、私、三股されてるのよ?
よろしいわけがない。
何とか私のものにしようと色々と画策を試みようとはしているのだけれども……
あの姉妹、思いのほか強い。
姉の方は仁のお気に入り。
楽天家で能天気で性格も接客もすちゃらかだが、憎めない。
人の心に入り込むのが巧過ぎる。
害意を削がれてしまうのだ。
そして妹はタイプ的には私の同類。
でも仁に一番近い気がする。
部屋が隣にあるというのも厄介だ。
純粋な能力値は彼女が一番高いだろう。
そして私は仁の過去を知っている。
仁が私に好意を持っていたことも。
仁の行動基準、性格などの把握力は私が一番勝っている。
だから……
「もうそろそろ大学に顔見せに来ると思ってたのになぁ……」
「なっつみ〜!」
そんな呟きをこぼしていると友人が笑顔で近づいてきた。
怪しい。
この娘が笑みをこぼしている時は大抵、何かあるのだ。
「どうしたの?」
「いえいえ〜何もないっすよ〜♪ ただ夏海が教室の入り口を捨てられた子犬みたいに見てるから気になったのさ〜」
「なっ!? わ、私は別に捨てられてなんか……」
「いや……そんなこと一言も言ってないから」
「う……おほん! それで何の用?」
「『あ〜仁こないなぁ……私に会いに来てくれないのかしら? 私、こんなに仁が好きなのに仁ってば冷たすぎ! もう今週はちゅーもえっちも抜きなんd』げぶぅ!?」
「殺されに来たの?」
「お……ごご……いきなりレバーブローとはひでぇっす……」
「で? な・ん・の・よ・う?」
「まぁまぁ、落ち着け夏海さんちのリカちゃん。わたしゃ夏海があんまりにも哀れだから声をかけに来たのさ」
「哀れですって? どういう意味かしら?」
「お、落ち着け夏海! とりあえずその右手の構えを解いて話し合おう!?」
「はぁ……で? 何が言いたいのよ?」
「いやね、そーやって高村待ってても来ないよと言いにきただけな訳」
「……? 何でそんなこと解るのよ?」
「や、だって高村、駅前で金髪の美人さんといちゃいちゃデートしてたし」
……ぷち
今、私の中で何かが切れるのがわかった。
「そんでもって、駅前だってのに金髪さんのスカートの中に顔突っ込んでたし?」
ペキッと手の中にあったペンが折れる音が聞こえた。
「…………そう……あとで殺す」
「どっちを?」
「両方よ……そう……花鳥玲愛……やっぱり貴女が一番の敵みたいね」
『なにぃ!?』
私の呟きに何故か教室に居た生徒(主に男)が一斉に反応した。
「花鳥玲愛ってあの娘だろ? キュリオの金髪の美人!」
「俺らが何度アタックしても全滅したのに!?」
「何で夏海といい、玲愛さんといい高村なんだーーー!?」
「夏海は高村と付き合ってて、でも高村は金髪さんと……それって二股!? ほんとに!?」
いや、正確には三股……と心の中で呟く。
しかも互いにそれを容認中……本格的になんとかしないといけないわね。
「あ、ちなみに多分、あの二人デパート行ってると思うよ? 駅前のやつ。追いかけるんならそこね」
「何でそんなこと解るのよ?」
「や、だって金髪さん……花鳥玲愛さんだっけ? あの人、高村の所為でスカートと下着をびしょ濡れにされてたし」
シーン
教室中の空気が凍った。
「だから多分、スカートと下着を調達するんじゃない? ……だったらソコかなーって」
「そう、解ったわ」
私は帰り支度をして教室をでた。
ああ、上手く思考が纏まらない。
纏まらないが、とにかく仁に会わなくては……
「ふ……ふふふ……もう、本当にしょうがないなぁ……仁は……ふ、ふふふふふ……」
自分でもびっくりするくらい低い声で呟いて私は駆け出していた。
「そーいやよ。俺、その花鳥玲愛だっけ? その人知らないけど、どんな人なんだ?」
「あ、携帯で写真撮ったから見てみる?」
「どれどれ……あー、そりゃ夏海も焦るわ。容姿だけなら夏海とタメかそれ以上じゃん……胸以外は」
「え? マジで!? 夏海とタメってどんだけなんだよ……って、うわ、マジ美人じゃん!? 胸はアレだが」
「えっ!? ほんと見せて見せて! 女の私からの評価も……って本当に美人だ。リアル金髪だ! 勝てる気がしない……胸以外は」
「あんたら、胸胸って失礼ね……うん、まぁ確かにこれだけ揃ってると、胸だけレベル低いわね」
「あーやっぱみんな同じ事思ってたんだ♪ だよねー? これだけ圧差で負けると胸以外しか勝てる気しないよねー?」
「で? この見た目パーフェクト(without胸)と夏海が高村を賭けてリアル修羅場……と?」
『……』
「さて諸君! 我々には選択肢が二つある! 一つ! 此処にとどまり単位さえあれば将来必要無い知識を蓄える講義を受ける! 一つ! 我が同胞の夏海の行く末をデバガ……もとい暖かく見守る!」
「へっ、そんなの聞くまでもないだろ?」
「俺はこれでも義理人情に厚い方だぜ?」
「ここは夏海の為にも一肌脱がなきゃいけないわ!」
「っていうか、高村のヘタレ度合いからしたら夏海一人じゃ無理よ!」
「まぁ、高村はそれが味だしねぇ……ってことで、夏海の恋を見守り隊、でっぱーつ!」
「ねぇ仁?」
「なんだ?」
「目を瞑っていたら、私の姿は見えないんじゃないかしら?」
「そりゃそうだろう」
「つまり、私の姿は死んでも見たくないと? そういうことね?」
「見た後が怖いんだよ!」
「あのねぇ……私がいいって言ってるんだから怒ったりしないわよ」
「いや、そうじゃなくてだな……」
「じゃあ、何なのよ?」
お前じゃなくて他の奴が怒り狂うんだよ!
……とは心の中だけで叫ぶ俺。
さすがにそれを言ったら玲愛が怒ることくらいは学習した。
それにさっきから何か嫌な予感がするんだよな。
こう、この事実がウチの身内に知れ渡ってしまう予感というか確信?
「こんなとこ(試着室)まで来て往生際が悪いわよ」
「とにかく、そんな破廉恥な姿を俺に見せるんじゃない! そういうのは彼氏が出来た時にでもとっておけ!」
「じゃあ…………仁が彼氏になりなさいよ……」
……しまった……地雷、踏んだ……
「そしたら丸く収まるじゃない……」
いや、収まらないから!
絶対に酷い目に遭うから! 俺が!
「やっぱり、何も言わないんだね……仁……」
言えるか!?
この状況で何を言えというんだよ!?
「やっぱり、姉さんには叶わない……か……」
「あのなぁ……いい加減、その姉コンプレックス……略してシスコンを何とかしろ」
「真・シスコンの仁に言われたくない……」
「……まぁ、シスコンの件はさて置いてだ」
「仁のそれもあまり看過できない件なんだけど……」
「とにかくだ! 玲愛、お前、あのすちゃらか能天気娘の何処に劣等感があるというんだ? 逆ならすごく納得するが」
「何処って……あれで姉さん天才だし……特に人の心を開かせるのとか」
「ピアノと外見とそれ以外に美点が見つからんのだが」
「三つもあれば十分よ!」
「その三つ以外の能力値が平均値を大幅に下回ってる事に関しては良いのか……?」
「私なんて何もないじゃない!」
「いや……それは冗談と受け取って良いんだよな?」
「本気よ!」
「おいおい……少なくとも真面目さとかは玲愛の方が完璧に上回ってるだろ」
「むしろアレより真面目さが足りなかったら人としてどうなのよ……」
「ナチュラルに酷いな、花鳥妹」
「……他には?」
「は?」
「他には……無いの? 私が姉さんよりも上回ってるとこ……」
「あ……えっとだな……」
これは解る。
つまりもっと褒めろと。
しかし何を褒めればいいんだ?
俺の玲愛に対する認識は基本的にVSキュリオのチーフとしてのイメージだ。
そりゃま、素直じゃないけど可愛い一面も持っているとかは言えるが、言った瞬間に蹴られそうだ。
もうこれ以上我が息子を虐待されるわけにはいかない。
つまり、咄嗟に出る言葉をほぼ封じられたわけで……
即答できない=答えを持ってない、と判断しちゃう金髪ツインテールにとっては……
「そう……何だかんだ言いながら私には美点の一つも無いと……」
こーゆー結論に至っちゃうわけで……
そうなると俺は何とかせねばと口が自律行動してしまうわけだ。
「いや、文句無く美人だから!?」
「へぇ……じゃあどの辺が美人なのよ? 私の姿を見て何処が良いのか言ってみなさいよ」
「あのなぁ、何処見たってお前が美人だという認識は覆らな……いーーーーーーっ!?」
そうしてまんまと口車に乗せられ目を開いてしまった俺。
眼前には下着姿の玲愛。
黒い下着ってお前……正気か?
それに何故にブラの方まで黒くなってるんだ?
そんなの持ってなかっただろう!?
……いや、何で持ってないかとか知ってるんだとかいうツッコミは無しの方向性で。
「ど、どう?」
「ど、どうとは?」
「……こーゆーの……仁の好み?」
正直に言おう。
すごく好みだ!
だが、それを認めてしまうと何故かとんでもないことになりそうな気がするのだ!
こう、次(?)に三人ともそんな格好になってたりとか。
そうなると自制できなくなる。
いや、今でもあんまり出来てないかもしれないが。
だから……
「いや違うから! 無いから! 下着の好みなんて無しだから! 下着の好みなんて無しが一番! 電話は二番! 三四が無くて五にお前だから!」
「……そ、そう、仁ってばそうなんだ」
玲愛の顔が赤い。
なんでだ……?
……あ、玲愛が五番とはいえ、人物で一番ランクが高かったからか?
女の考えることはよくわからんな……
「ねぇ……仁……」
「玲愛……」
見つめあう俺達。
ちなみに何故見つめ合えたり、下着姿を拝見できたりしているのかと言うと、ここが試着室の中だからであり……
何で堅物の玲愛がこんなに簡単に盛り上がっちゃってるのかというと、この試着室が狭い上にそこに二人で入ってる以上、常に身を寄せ合ってる状態だからであり……
シャッ!
「……で? お二人さん? こんな場所で一体何をしてるのかしら?」
こんな状態なので見られた場合、何の申し開きも出来ないわけで……
「いや、里伽子? そのな? これは成り行きで、俺自身の意思はひとかけらも含有されていない事態でだな……」
「ちょっと! 此処に来る羽目になったのは仁の所為じゃない!」
甘い空気が一転していつもの空気になるわけだが、どうもこの『いつもの空気』っていうのが俺と玲愛以外にはいちゃついてるようにしか感じられないらしい。
いつの間にか首に回されていた玲愛の両腕が俺の首を絞めるように力が込められる。
本人は首を絞めてるだけのつもりらしいが、玲愛の下着越しの胸が押し付けられ、どうにも精神的によろしくない(性的な意味で)
「……仁、顔に出てる」
「ま、待て里伽子!? 脚を振り上げるな!? やめてお願い! 俺のジュニアの耐久力はもうゼロよ!? そして玲愛もいい加減俺をHA☆NA☆SE!」
「何でそんなわけの解らない言い回しなのよ!?」
「四回も五回も大して変わらないわ。……追加攻撃!」
「やめろ! もう六回m……ぴぎゃぁっ!?」
ああ、解ってたんだよ、此処に来た時点で遅かれ早かれこうなることは……
でもな? ちょっとぐらい俺の予想を裏切るようなことはあっても良いとは思うんだがそこんとこどうなんだ?
そんなことを思いながら俺は悶絶した。
少し離れた場所にて……
「……ねぇ? 私の見間違いじゃなかったら、高村、あの金髪さんと一緒に試着室に入っていたように見えたんだけど……」
「なんか私にも同じように見える」
「いや〜高村もやるねぇ……こんなとこでことに至っちゃうとは……りかちんが思い悩むのも無理ないわ」
「っていうかマジだったんだね……高村、夏海にベタ惚れだったから誤解だと思ってたわ」
「あ、高村が沈んだ」
「いや〜見事なキックだね、りかちん。何だか蹴り慣れてるように見えたのが、微笑ましいやら恐ろしいやら」
「あのよ、所で相談なんだが、俺たちにも見せてくれないか? 気になって仕方ないんだが……」
「シャラップ! 野郎禁制領域につき却下します! ……って、あ……」
「おい、どうした!? 何が起こった!?」
「……いや、やっぱ高村の二股って誤解かも」
「なに!? やっぱり本命は夏海なのか!?」
「いや〜……そーじゃなくて……ひぃふぅみぃ……六股かも?」
『な、なにぃ!?』
「や、だって高村が四人の女に捕獲されたし」
『あ〜っ! てんちょ! こんな所で何してるの!?』
『お〜お〜これはまた見事なまでに涙を誘う体勢で倒れてるね仁君、どれ、おね〜さんが腰を叩いてあげよう』
『どーせ仁が玲愛ちゃんに蹴られたに決まってるよ。で? 仁? 玲愛ちゃんに何したの? ナニしたの?』
『ちょっとリカちゃん? これってどういうことなの? 何で私の可愛い仁くんがこんな場所で倒れてるの!?』
『それはそこの黒下着に聞いて下さい。あと、仁は恵麻さんのものじゃありませんから』
『あ、えっとこれはその……そう! 仁が! 仁が私の下着をダメにしたんで弁償させようとしただけよ!』
『ううぅ……ありがとう、かすりさん……そして由飛はもう少し俺を信頼しろ! むしろ俺は被害者だぞ!』
「……って会話がされてるわね」
「お前のものまねじゃなくて、生でみたかった」
「あー、それなら我がキュリオのオープンテラスで来て頂いたら存分に見れますよ……ほ〜んと嫌ってほど」
『……どちらさま?』
「ウチのチーフが見えたから隙を見てからかってやろうと思ってたら、ベストポジションにあんたらが居て、声をかけてみた通りすがりのウエイトレスですよ〜。あ、ちなみに、あそこに居る金髪がウチのチーフね」
そんな会話がなされている事なんて、露ほどにも思っていない七人を置いて後編に続きます。
あとがき
どうも、お久しぶりな秋明です。
何となくで書き始めたパルフェSSで、前回のパルフェSSの続きだったりします。
なので仁の急所攻撃回数も続けてカウントされていたりします。
今回で何回目まで逝くのか!
この話が終わるころに彼のアレは機能できるのか!?
……書いてて酷いあとがきだと思った。
そんなこんなで早めに次を出せるように頑張りますw
でわ〜