さくらと綺堂夫妻の戦いが始まったその時精神世界にいる恭也は……
「がはっ……。」
三人目の対戦者と戦うが簡単に倒されてしまった。
「……この程度か。殺す価値もないな……。」
三人目の対戦者はそう言ってその場から立ち去ろうとする。そして……
シュウウウ……
恭也の出血はどんどん酷くなっていく。
(くっ……このままじゃ。)
そこで咄嗟に斬られた胸を抑えるが出血は止まらない。そして、その間にも三人目の対戦者との距離は遠くなっていく。
(どうしてだ?俺はまだ……死んでない。まだ……戦える。まだ……終わってない。だから……行くな)
恭也はそう思って立ち上がり再び戦おうとするが……
バタッ!!
出血のせいで再び倒れる。
(くそう……。このままじゃ本当に……死ぬ。頼むから……何とかなれよ。まだ……死ねないんだよ……。神咲さんを助けなきゃいけないし……忍を守らなきゃいけないんだよ!!)
恭也はそう思いながら諦めずに立ち上がろうとしたが駄目だった。
彼の意識はそこで終わる。
「……せめて吸血鬼を愛した愚か者に安らかな死を」
三人目の対戦者であり恭也の義妹の美由希の実父である御神静馬は目を閉じながらそう言った。
「おい、何時まで寝てるつもりだ!!とっとと起きろよ!!」
バキッ!!
頭に痛みを感じて恭也は起きる。が……
「出血が止まった……?」
そう。三人目の対戦者 御神静馬の技を受けてできた出血が止まっていた。しかし……
「俺!?」
そう。自分の目の前には自分と同じ顔、同じ背丈をした人間が立っていたので驚くしかなかった。只、自分と唯一違う点は髪の色だけだった。自分の髪の色は黒なのに自分の前にいる自分の髪の色は白だった。
「あっ、何でこういう状況に陥っているのか混乱しているようだな。それは簡単。この空間の時間自体が止まっているからだ。何故そういう状態になっているのかと言うとそうしなければお前が出血多量ですぐ死ぬからだ」
もう一人の恭也はそう言って今の状況を説明する。
ふわきょうや
「おっ、そういえば自己紹介がまだだったな。俺の名前は不破狂夜。『呪われた子供』ではなく『夜の一族』として生きることを選んだもう一人のお前さ」
もう一人の恭也 不破狂夜はそう言って笑顔で挨拶をする。だが……
(何だこいつは?この嫌な感じは!?)
そう。狂夜そのものに嫌な感じがして警戒する。
「早速だけど、お前の身体を渡してもらうぜ」
「何っ!?」
「ハッキリ言ってお前の戦い方はなっちゃえねえ!!お粗末だ!!そんなんじゃ忍は守れねえ!!だから、俺が身体を乗っ取って忍を守る。もうお前には忍のことを任せられねえからな」
狂夜はそう言ってクククッと笑う。だが、その時だった。
「ふざけるな!!」
恭也は狂夜の言葉に怒る。
「俺の身体は俺のものだ!!誰にも渡さない」
恭也のその言葉に狂夜は鳩が豆鉄砲を喰らった顔になるがすぐに元に戻る。
「そっか……なら仕方がねえな」
そう言って腰に差していた二本の小太刀を抜く。
「実力行使と行きますかね」
そう言って恭也に斬りかかる。
「くっ……。」
恭也はその一撃を慌てて避けるが……
(早い。これが……もう一人の俺の強さなのか?)
驚愕せずにはいられなかった。
「ははっ、どうしたこんなもんかよ!?不破士郎の血を引く人間の力は」
「くっ!!」
恭也は狂夜の斬撃を何とか受け止めるがその一撃は思ったよりも重く舌打ちする。
「だとしたらとんだ期待外れだぜ!!まだ、神楽の末裔の方が士郎の力を引き出してるな」
「えっ……!?」
狂夜のその一言に恭也は一瞬だが呆然となる。だが、その時だった。
「ボッとすんなよ。バーカ!!」
ザシュッ!!
狂夜の一撃が恭也の身体を切り裂く。
「くっ……。」
斬られてから数秒後恭也はやっと自分が斬られたことに気が付き倒れる。
「……俺の勝ちだ。暫く眠ってな」
狂夜はそう言うと自分の小太刀を鞘にしまう。そして……
シュゥゥゥ……。
恭也の身体は狂夜の小太刀に吸収される。そして、それと同時に止まっていた時間が再び動き出す。そして……
「おい、待てよ。御神静馬」
恭也の自我を乗っ取って出てきた狂夜がそう言ってステージから出て行こうとする静馬を挑発する。
「んっ……。案外早く立ち上がったな、……はっ!?」
静馬は狂夜が発する殺気に驚く。
「君は……まさか!?」
「おう、不破狂夜だ。『夜の一族』として生きることを選んだもう一人の不破恭也さ」
「!!」
狂夜のその言葉に静馬は何も言えなくなる。
「だとしたら……もう恭也君は……。」
「安心しな。まだ無事だ。だがこのままだと消えてなくなるな」
狂夜はそう言ってケタケタと笑う。
「ならば、御神の宗主として君を倒す」
狂夜のその言葉に静馬はそう言って戦闘態勢に入る。
「おっ、殺る気マンマンだな。なら、その殺気に免じて一ついいことを教えてやるよ。恭也についてだが何とかするには俺がある程度のダメージを受けるかあいつ自身の意識が戻るしかねえな。まあ、戻らせねえけど」
そう言って恭也も構える。そして……
「そうか。ならば君を倒して何とかするしかないな」
「やってみろよ。あいつと同じと思うなよ」
本当の戦いが始まる。
PM9:42 海鳴市 風芽丘中央病院12階
風音達が激戦をしていた頃眞子とわかばは……
「なっ……何なのよ。こいつ等は!!」
「わ……分かりません。でもこのままでは……。」
そう。二人は頭部にPと描かれている兵士型の小型メカにに追われていた。
最初は勿論戦ったが……階が進むにつれて数はどんどん増えていき気が付いたら手に負えない状態になっていた。だが、それだけではない。
「くっそおおおっ!!サイクロン・スマッシュ!!」
眞子は1体の兵士型の小型メカに攻撃を仕掛ける。だが、その瞬間……
「Promosion!!」
兵士型の小型メカの頭部に描かれていたPがQへと変化する。そして……兵士型の小型メカは女王メカへと変形する。そして……
バンッ!!
左腕に装備している大盾によって眞子の「サイクロン・スマッシュ」をいなす。
「くっ……又パワーアップか」
眞子は変形した女王型メカを見て舌打ちする。だが……
「でも……そう言うことか」
それと同時に何かに気付いたのかフッと笑う。
「水越さんどうなされたのですか?」
「分かったのよ。こいつ等の仕組みが」
「仕組みと言いますとどういうことですの?」
わかばは頭を抱えながら眞子に質問する。
「簡単なことよ。敢えて言えばこいつ等はチェスの駒よ。最初は兵士で1階から私達を追いかけたメカだけが姿を変えてパワーアップする。しかもご丁寧に『プロモーション』なんて言ってね」
「なるほど。確かに『プロモーション』はチェスの用語ですわね」
わかばはそう言いながら納得する。
「でも、水越さんどうします?小型メカの正体は分かりましたけど、このままでは埒が空きませんわ。何とか操っている人を探さないと何にもなりませんわ」
「そうね。でも……もう此処最上階の12階なんだよね。でも、今まで走り周って人っ子一人見つからないと言うのは確かにおかしいわね。『夜の一族』がこの病院を襲ってステージにしたと言うのも考えられるけどその形跡もないし……。」
眞子がそう言って周りを見ると……12階を徘徊していた兵士型の小型メカによって階段前まで誘導されていることに気が付く。
「あれっ……おかしいですわね」
「そうね……こいつ等と戦いながら12階を探索していた筈なのにどうして階段前に戻ってるんだろうね!?」
二人はそう言うとあははと笑う。だが、すぐに現実へと戻る。眞子達を誘導した兵士型の小型メカが一斉に眞子達に向かって突っ込んで来たからだ。
「う……嘘ですわよね!?」
「じ……冗談じゃないわよ」
二人の顔色はすぐに悪くなる。そして……
「「う……うわぁぁぁっ!!」」
逃げ出した。
PM9:47 海鳴市 風芽丘中央病院3階休憩所近く
それから5分が経過した。
「はあはあ……。何とか撒けましたね」
「そうね。でも……結構降りちゃったわね」
わかばは荒い息をしながらホッとするが、眞子はかなり引き返してしまったことを悔やむ。
「……水越さん。あまり落ち込まないで下さい。こういう時は一度休んでから……。」
「分かってるわよ。こういう時こそ冷静にならなきゃいけないって。……で何か飲む?」
眞子はそう言って休憩所に設置された自動販売機を指差す。
「そうですわね。私は……お味噌汁ジュースをお願いしますわ」
わかばは笑顔で言う。そんなわかばに眞子は……
(この娘そればっかね……。私はもう飲みたくないけど。でも、よく飽きないわね……。)
心の中で呟く。そして、休憩所の自販機の側まで来た時……
「「あっ!」」
肩まで髪を伸ばし小さな丸眼鏡をかけた自分と同世代の少女に遭遇する。
「ねえ、あんたもしかして……。」
眞子は一応質問しようとするが……
ダッ!!
逃げられた。その行動で眞子は確信する。
「力は感知出来なかったけど……あの行動からして間違いないわね」
眞子はそう結論を出して少女を追いかける。だが……
「水越さん、遅いですわ〜!!」
わかばが痺れを切らしてやって来た。
「水越さん、私のお味噌汁ジュースどうなさったのですか!?」
「ゴメン、わかば!!今それ所じゃないのよ」
「それ所じゃないとはどういうことなのですか?」
「見つけたのよ。『夜の一族』サイドの能力者を。でも、逃げられて追ってるって訳。分かった!?」
「分かりましたわ。でも、ジュースは……。」
「終わってから奢ってあげるわよ」
二人は漫才に近い会話をしながら少女を追いかける。そして……エレベーターの近くで発見する。
カチカチッ!!
「ハッハッハッ……。」
少女は額に汗を滲ませながらエレベーターのスイッチを押し続けるが一向に動かない。そして……
「……ハッハッ。見つけた」
そうしている間に見つかってしまう。
「……ハッハッ。何で……いきなり逃げるのよ。アンタ」
眞子は荒い息をしながら少女に質問する。
「そ……そうですね。……すみません。『呪われた子供』の方ってちょっと怖いので……気が付いたら」
少女は後じさりをしながら理由を説明する。そして……
「貴女がここの管理者?」
眞子は一番聞きたかったことを聞く。それに対して少女は……
「はい、一応は……。この病院の管理者をやってます。ロールプレイングゲームで言い表しますとこのステージのボスキャラみたいなものです。こうなる前に私なんかには無理だって言ったんですけど……氷村さん達がやれって何度も言うから……。」
少女は少し悲しげな顔で事情を説明する。その事情を聞いて眞子とわかばは……
「何と言うかね……。」
「ええ……。」
「闘争心0ね!!」
「ですわね!!」
失礼な発言をする。
「でも……出来れば帰っていただけるとありがたいです。戦いとかは嫌ですから。それでも戦うと言うのなら頑張りますけど」
少女は二人の失礼な発言を聞いていないのか説明を続ける。だが、こんなことをしている間にも時間は過ぎていくのでわかばが話を切り出す。
「貴女は話せそうだから言いますけど、デパートALCOに行く方法を教えて貰えないでしょうか?急いでいるのです」
わかばはそう言って少女を説得しようとする。だが……
「それは海鳴市各地にいる『夜の一族』サイドの能力者を全て倒す或いはステージから追い出せば行けるようになります。つまりこの病院では私を倒すか私を病院から追い出せばいいと言うことになります。しかし、ここを出るのはお断りします。一応氷村さん達との約束ですから……。」
少女はそう言って申し訳なさそうに頭を下げる。
「いや……謝らなくてもいいけどさ。あんな奴のこと律儀に守らなくても……。」
眞子がそう言ったその時だった。
ザクッ!!
「「えっ!?」」
突然眞子の前に大きな円月輪が突き刺さり眞子と少女は驚く。そして……
「響子……何やってんのよ」
ショートカットの女性が現れる。
「ご……ごめんなさい。輪子さん」
ショートカットの女性 輪子の姿を見て響子は身体を震わせながら謝る。そんな二人のやり取りを見て眞子は……
「ちょ……アンタ何者なのよ!?いきなり攻撃してきて」
怒りに任せて輪子に食って掛かる。
「五月蝿いわよ。この男女!!それに、攻撃するのは当たり前でしょう。私も響子もあんた達の敵なんだから」
「くっ……。」
輪子のその言葉に眞子は何も言えなくなる。
はさかりんね こまかみきょうこ
「あっ、一応だけど自己紹介しておくわ。私の名前は葉坂輪子。こいつ……このエリアの管轄を任されている駒上響子の監視役よ。と言ってもこういうシステム取ってるのは此処だけだけどね」
輪子はそう言って大きな円月輪を消す。彼女の説明を聞いて眞子とわかばは……
「確かに……その娘だけじゃ頼りない気がするしね」
「ですわね」
と首を縦に振って納得する。
「……納得しないで下さい」
響子は二人の言葉を聞いて抗議するが全然迫力がない。そして……
「……と言う訳で勝負よ!!」
ヒュン!!
輪子はそう言って眞子に狙いを定めて円月輪を投げる。だが、それだけではない。
「すみませんが、約束ですので出てってもらいます」
響子が自分のポケットからチェスの騎士の駒を取り出したと思いきやそれが騎士型のロボットとなってわかばに攻撃を仕掛ける。
こうして眞子達の本当の戦いが始まった。
同時刻 天神音楽大学の屋上では……
「お……やってるやってる」
大学の屋上からベレー帽を被った長い黒髪をした少女が呟く。
「頑張ってるね。ここの能力者は私が倒したのに」
そう言って自分が今足蹴にしている人物を見ながら呟く。
「でもまあ……二人ともあそこまで強くなるのは予想外だったな。元姫神の私には喜ぶべきことだけど」
少女がそう呟いたその時だった。
ヒュヒュヒュヒュン!!
少女に向かって無数の氷の弾丸が飛んでくる。
「ちいっ!!」
少女はそれを難なく避けるが……
こえんりん
「甘いよ。狐炎輪!!」
バシュゥゥゥン!!
何も見えない闇から死んだ筈の真琴が使った『狐炎輪』が飛んでくる。
「ちいっ!!」
少女は『狐炎輪』を蹴りで方向転換することによって直撃を回避する。だが、そこで終わらない。
「たあああっ!!」
攻撃が来た方向に向かって回し蹴りを放つ。
「へえっ、腕は落ちていないようだね」
その瞬間大学の照明によって闇が照らされ少女を攻撃した者の姿が明らかになる。
「やはり、貴女か。水瀬名雪さん」
少女は呆れを含ませた溜め息をつきながら言う。だが、その時だった。
バァァァン!!
屋上のドアが勢いよく開く。そこには……
「はぁはぁ……どうやら今のところは先に到着した私の方がリードしてます」
「はぁはぁ……いいえ、貴女よりも多く敵を倒した私の方がリードしているんですよ」
荒い息をした桐花とことりがいた。しかし……
「何言っているのですか。私は0.1秒早くここに着いたんです。この時点では私がリードです」
「いいえ……私の方が貴女よりも一人多く相手を倒しているんです。だから、この時点では私の方がリードしている筈です」
二人の言い争いはまだ続いていた。まあ、想い人のことがかかっているので無理もないが……。
「でも、まだ勝負はついていない。そうでしたね?」
「ええ、ここにいる能力者を倒した方が勝ちというルールでしたからね」
そう言って二人は口喧嘩を中断するが……
「「って、もう倒されてるのですか!?」」
二人は倒れている能力者らしき人物を見て同時に同じ言葉を言う。そして……
「水瀬名雪……又出てきましたか」
桐花は名雪を見て呟く。そして……
「あ……貴女はもしかして……さやかさん!?」
ことりは名雪と一緒にいた少女を見て驚く。
みやもりそら
「あっ、ことりちゃんか。お久し振り。でも……その名前は白河家を出た時に捨てたし、今は宮森空って名前で動いているから、その名前で呼ぶのは勘弁して欲しいと思うけどね」
ことりの言葉に白河さやかもとい宮森空はそう言ってあははと笑う。だが、その時だった。
「さっきから私を無視してるんじゃないんだぉ!!」
ドゴッ!!
名雪は無視されたことに頭に来たのか空の頭上に大きな氷の塊を作って落下させるが、避けられてしまう。
「くっ……簡単に避けるなんて元とは言え流石は姫神だね」
名雪は悔しさを隠さずに言う。だが……
「成る程ね。貴女、寂しい人だね」
空は名雪の行動から彼女の性格を分析して挑発と言っていい台詞を吐く。だが、これはまだほんの始まりでしかない。
「なんだって?」
「だってそうじゃないの。そうやってワガママばかり言って誰にも相手にされない。そんなところだね」
「お前 何て言った!!」
名雪は空の言葉にキレて怒鳴る。だが、空の名雪の評価を聞いてことりと桐花は……
「確かにその通りですね」
「私も賛同します」
素直に賛同する。しかし、二人のその言葉に名雪の緩すぎる堪忍袋の御が切れた。
「いやだ!!いやだ!!いやだ!!私を怒らせたな……。もう上からの命令なんかどうでもいい!!死ね!!死んでしまえ!!」
シュォォォッ……
その瞬間名雪の身体から凍気が発生して自分の周囲を凍らせる。
「あちゃ〜っ。怒ったか。相変わらず堪忍袋の緒が緩いね」
空は懲りずに又名雪を怒らせる発言をする。
しらゆきひめ
「たっぷりと生き地獄を見せてから殺してやるぉ〜!!白雪姫!!」
それに対して名雪は怒りを露にして自分の氷でできた姫型の従者を四体作り出し攻撃を開始する。
ヒュン!!ヒュン!!ヒュン!!ヒュン!!
「予想通りの攻撃方法だね」
バシッ!!
空は白雪姫の放った矢を手で簡単に払いのける。そして……
「わっ、危ない!!」
「奇襲とは相変わらず卑怯ですね」
他の白雪姫はことりと桐花に矢を放つが回避される。
「う〜っ!!避けるのを止めるんだぉ〜!!当たらないんだから!!」
名雪はイライラを隠さずに空達が自分の従者である白雪姫の攻撃を避けたことに文句を言う。
「そうは言ってもねぇ……。」
「私達敵ですし攻撃を受ける義理ないですしね……。」
「馬鹿ですね」
名雪のその言葉に三人はそれぞれ反論する。そして……
「ねえ、ここは私一人に任せてくれない。あの娘殺さないから」
空が自分一人で戦うことをことりと桐花に提案する。
「えっ……。」
「そう言われても……。」
「ここの管理者である能力者は私が先に倒しちゃったからそのお詫びと思って。それに貴方達に見せてあげたいんだ。本当の姫神の力を」
「「本当の姫神の力!?」」
「うん。今の私は訳あって姫神の資格を失ってるけどね……。」
空は二人そう言うと名雪と対峙する。
「へぇ、貴女一人で戦うんだ。てっきり三人で来ると思ったのに」
「うん。君程度だったら私一人で十分だからね」
「後悔しないでよ」
「しないよ。ついでに君にも教えてあげるよ。君がいかに自分を過信しすぎなのかをね……。」
こうして天神音楽大学でも本当の闘いが始まった。
PM9:50 海鳴市 デパートALCO最上階
「へえ……一時間も経たないうちに既に二箇所でコッチの能力者と交戦が始まったか。少し奴等を舐めてたな……。」
遊はそう言うと指をパチンと鳴らす。すると……
ヒュォォォッ……!!
強風が吹き遊の前に三人の剣士が現れる。
「お久し振りでありますジュニア」
三人のうちの白髪と白髭の老剣士が代表して挨拶をする。
ドライリッター
「ああ。久し振りだね三騎士。今日はちょっと頼みたいことがあったので呼んだんだ。聞いてくれるかい?」
「はい、何なりと」
遊はそう言うと白髪と白髭の老剣士に一枚の写真を渡す。
「三人のうちの誰かに今からコイツと戦いに行って欲しい」
「ほう……。この者とですか」
白髪と白髭の老剣士はそう言ってその写真 風音の写真を見て呟く。
「ああ。だが、殺す必要はない。ある程度戦ってどの程度の実力かが分かったら戻ってこればいい。そうなったら、エリアは解放されることになるが気にするな」
「「「はっ……。」」」
三騎士達は一同に遊に頭を下げる。
「それで誰が行く?」
「それならば私が……。」
三騎士のうち二本の日本刀を持った青年が手を挙げる。
かげとら
「……そうか。影虎が行くか。ならば任せた」
「はっ!!それでは行って参りますジュニア」
ヒュン!!
影虎と言う名の三騎士の一人はそう言うと再び姿を消した。そして……
「さて、見せてもらうぞ神楽風音。お前が三騎士の一人を相手に何処までやれるのかをな……。」
遊はそう呟いてフフッと笑みを浮かべた。
PM9:52 海鳴市 聖祥女子校高等部4階 図書室
その頃風音と望は戦いながら何とか4階の図書室まで辿り着く。だが、その時だった。
(な……何だ。この感じは?)
プレッシャー
風音は何処からか流れてくる威圧感に戦慄する。そして……
ザシュッ!!
「えっ!?」
「くっ!!」
突然図書室の本棚が切断されてその斬られた部分が風音達のいる場所へと落下する。
「ちいっ!!」
風音は望の腕の掴んですぐにその場から離れる。だが、そこで終わらない。
ザシュッ!!ザシュッ!!ザシュッ!!ザシュッ!!ザシュッ!!
次から次へと斬撃は飛んでくる。
「くっ……次から次へと」
風音はそれを次々と避ける。と言っても望を引っ張った状態なのでギリギリで避けてると言った方が正しいのだが。だが……
「ぐっ……。」
ザシュッ!!
とうとう望の腕を掴んでいた右腕に斬撃が当たる。そして、当然の如く風音は望の腕を離してしまった。
「しまっ……望さん」
風音はそれにより大きくバランスを崩した望を助けに走るが……
バシュン!!
突然望の前に魔法陣が出現したと思ったその瞬間、望の姿はそこにはなかった。
「の……望さん!?」
さくらやなのはとは違って魔法等の知識の皆無な風音にはこの現象が理解出来ず唖然となる。だが、その時だった。
「心配するな。君の仲間はこの学校の体育館に送っただけだ」
風音の前に二本の日本刀を持った青年が現れて言う。
「えっ……貴方は!?」
風音は突然自分の前に現れた青年に質問する。
「私か……。簡単に言えば氷村家……この浸食現象を起こした『夜の一族』に仕える者の一人と言っていいな」
青年はそう言うと簡単に自己紹介する。だが、風音は……
「どうして望さんを別の場所に送ったのですか?」
『夜の一族』と言う言葉に怒りを感じながらもそれを必死に抑えて望を別の場所に送った理由を尋ねる。
「邪魔だからさ。今からやる君と私との戦いにはな」
「邪魔?」
「ああ。一つ聞くが君は何故戦う?彼女達を巻き込んでしまったと言う責任感か?それとも守らなければと言う義務感か?それとも沢渡真琴や北川潤を救うことができなかった過去から逃げる為かい?」
「……。」
青年のその言葉に風音は何も答えない。いや、答えることができなかった。
「ハッキリ言おう。そんなものじゃ全身全霊で戦うことができないし面白くもならない」
青年はそう言って鞘から日本刀を抜き猛スピードで風音に攻撃を仕掛ける。
「くっ!!」
風音はその攻撃を何とか回避しようとするが……避けきれなかった。その証拠に首から血が出る。
「今のままの君では遊様どころか三騎士の一人のある私にすら勝つことはできない。だから、引き出せ!!そして、見せろ!!君の全身全霊の力を!!」
青年……三騎士の一人 影虎はそう言って日本刀を鞘にしまう。
こうして始まった。風音にとっても試練と言える戦いが……。
(海鳴市崩壊まで残り2時間8分)
菩提樹「どうも菩提樹です。郵政公社の試験に落ちてから今度は外務の方を受けて何とか合格して就職を決めましたがいろいろと忙しくて書き上げるのに時間がかかってしまいました。すみません」
さやか「本当だね。前回更新から5ヶ月以上も経ってるしね」
菩提樹「すみません。……で白河さやかさん。何か登場の仕方に根に持ってません?」
さやか「別に持ってないよ。偽名使ってたり毒舌吐かせた設定ということも全前気にしてないよ」(そう言って菩提樹の肩を思いっきり掴む)
菩提樹「でも……さやかさん。肩がものすごく痛いのですが」
さやか「気のせいだよ。それに今の私はさやかじゃないから。空だし」
菩提樹「やめて〜!!せっかく外務の方に就職できたのに肩をやられたら〜!!」
さやか「あっ……気絶した。まっ、いっか。更新ボサってた罰だと思えば。それでは次回は私が大活躍するお話で〜す!!皆さん期待して下さい。それでは〜っ!!」