3月30日―――PM9:12 東京都 六本木ヒルズ前
東京都。六本木ヒルズ前。ここは桜の花が舞い散っていた。そして、その中で道行く人々は風流を感じながら歩く。
さっきからその場にいる女性に気付かずに……。
女性の姿は地味な方ではない。むしろ長い青色の髪に赤い眼、そして纏う衣服も教会のシスターの着るような黒い修道院用の服なので目立つ方だ。
では何故誰も彼女の存在に気が付かないのか……それは簡単。見えていないのだ。道行く人々の目に彼女の姿が。
そして彼女以外の人間が誰もいなくなったその時……
「……消えますね」
少女は手に持っていた懐中時計を見ながらボソッと呟く。
「街も木も人もみんな……彼等以外は」
彼女はそう言って立ち去ろうとする。だが、その時……
ヒュン!!
女性の前に仮面を付けた黒いローブを着た人物が現れる。
「見つけたぞ……“葬姫”」
「誰ですか……?」
女性は仮面の人物に対して素っ気無く質問する。
われわれ
「とぼけても無駄よ。貴様が『夜の一族』に仇名す死神の一人であるということはもう分かっているんだから」
仮面の人物はそう言うと自らの武器である折り畳み式のロッドを出して構え魔術を展開する。
「Starting……我等に刃に向ける死神を死して冥府に還し給え……Flame!!」
巨大な火球を作り出して女性に向かって投げつける。だが……
「やれやれ……私は只“神”足る器を持つ存在を探しているだけですのに……。仕方無いですね」
女性はそう言うと時空の狭間から白木の鞘のついた刀を取り出す。そして……
ズバッ!!
仮面の人物が自分に放った巨大な火球を刀で真っ二つに斬り裂く。
「なっ……?」
仮面の人物は自分の自慢の魔術が破られたのがショックだったのか驚愕する。そして、女性は仮面の人物のいる場所へと走る。
「くっ……舐めるな。Burst!!」
ドガァァァン!!
仮面の人物の周囲で爆発が起こり女性の姿も爆発に巻き込まれたせいか見えなくなる。
「……は。はは……はは。殺った。殺ったわ」
仮面の人物は自分の勝利を確信したのか笑う。だがその時……
ドスッ!!
「なっ……?」
気が付くと仮面の人物の心臓に女性の刀が刺さっていた。
「戦いというのは生き物です。だから、どうなるかは最後まで分からないものですわ」
その瞬間、爆煙が晴れて無傷の女性が姿を現し自らの刀を仮面の人物の身体から無理矢理引き抜く。
「ぐっ……。」
仮面の人物は仮面を落とし口から血を吐いて膝をつく。その姿は緑色の髪をした少女だった。そして……
「なっ……?私の身体が……消える?」
そう。女性が自分の刀を仮面の人物の身体から無理矢理引き抜いた瞬間、仮面の人物の身体が消え始めたのだ。
「貴方達の言う『死神』に負けた者の末路は死ではありません。存在の消滅。貴方は私との戦いに敗れた。だから、消えるのは当然のこと。と言っても貴女は一度死んでますか。広瀬真希さん」
女性はそう言うと自分の刀を消してその場を去ろうとする。
「まっ……待て。金ならいくらでも払うわ。『夜の一族』と縁を切ってもいい。だから……助けて。せっかく……生き返ったばかりなのに……死にたくない」
真希はそう言って女性に命乞いをする。だが……
貴方達
「駄目。『夜の一族』は余計な死を出し過ぎました。だから、消えて償いなさい。それが貴方に相応しい終わりよ」
女性はそう言って仮面の人物の命乞いを無視する。そして……
「ちっ……畜生」
仮面の人物の存在は跡形も無く消滅した。
戦いが終わってから数分後、女性は再び海鳴市のある方角を見上げる。
「私が探している“神”の器たる存在はあの半仮想の街にいる。そう。二人の死神がいるあの街に……。そして、再び氷村の血を引く者と戦うことになる。でも、私はその戦いに手を出すつもりは無い。見せてもらいますよ。貴方が“神”の器たる存在なのか……。」
女性はそう言うとその場を立ち去った。
3月30日―――PM9:07 海鳴市 聖祥女子校高等部 敷地内
ことりと桐花が天神音楽大学でケンカしていた頃風音と望は……
「よっ……と」
「んっ……と」
聖祥女子校高等部の敷地内に潜入した。最も現在はまだ春休み中なので校門は閉まっていた。それで定番だが、校門をよじ登って敷地内に入った。そして、敷地内に入ったと同時に風音は周囲を見廻して状況を確認する。
「……今のところは僕達以外は誰もいないか」
風音がそう言ったその時……
「にゃ〜」
一匹の黒猫が風音の前を横切る。
その黒猫を見て風音と望は……
「又、何かありそうですね」
「いえ……もう起こってると思いますよ。天神音楽大学で……。」
「それ……どういう意味ですか?」
風音はそう言って望に質問する。そんな風音に望は……
(この人は……まだ気付きませんか。予想以上に鈍感ですね)
心の中で呆れる。だが、すぐに気持ちを切り替えた。
「それよりも早く行きましょう。そんなに時間もありませんから」
「はい、すみません(何か上手い具合にはぐらかされた気がしますが)」
二人はそう言って高等部の校舎内に入っていく。
だが、敷地内に立っていた木の上では……
「あれが神楽の生き残りと藤宮の娘か。藤宮の方はまだ発展途上だが、どちらも狩り甲斐のあるターゲットだな」
金髪にウニの髪型をした少年が風音と望を見て呟く。
「……ってそろそろ持ち場に戻らないとな。所長がうるせえからな」
フッ!!
少年はそう言うとその場から姿を消した。
PM9:15 海鳴市 聖祥女子校高等部校舎1階 玄関
「……あっけなく入れましたね」
校舎内に何も起こらず入れたので思わずつぶやく。
「望さん……。油断しないで下さい。此処からが本番なのですから」
風音がそう言ったその時……
ドドドドドドドドド……
上の階から沢山の人間がやって来た。最初はこの学校の職員や生徒だと思ったが服装を見ると一般人も混ざっていた。しかもよく見ると様子がおかしい。どう見ても全員が正気ではないのだ。
「風音さん……これは?」
「おそらく洗脳されていますね。しかもかなり強力なものに」
風音がそう言ったその時……正気でないこの学校の職員が望に素手で攻撃を仕掛けてくる。
「わ……わっ」
望はかろうじて攻撃をかわすことに成功する。だが……
ドゴッッッ……ミキッミキッ……
攻撃をした職員の腕も嫌な音をたてて折れた。そんな現実離れな光景に望は……
「あ……あの、私のせいじゃないと思いますけどごめんなさい」
一応謝罪する。だが……
ブンッ!!
その職員は再び攻撃する。折れた方の腕で……
「えっ……?」
望は驚きながらも急いでその攻撃を避けるが……
バキッ!!
壁に直撃して穴を開ける。
「……うそ」
望は驚きのあまり何も言えなくなった。だが、その時だった。
「望さん。気持ちは分かりますけど今は呆けてる時間はありません。先へ進むことだけを考えてください」
「はっ?」
風音のその一言で望は正気に戻る。そして……
バキッ!!
正気ではない職員の一人の頭を持っていた西洋剣の鞘で思いっきり叩く。
「すみませんが……私達は先へ進まなくちゃいけないんです。だから……悪く思わないで下さい」
望はそう言って謝罪し、自分に攻撃を仕掛けてきたもう一人の職員の腹を西洋剣の柄で突く。
「……。」
その職員は正気でないせいかうめき声一つすら挙げなかったがそのまま倒れた。
「望さんも強くなりましたね。この調子だと僕もウカウカしていられませんね」
風音はそう言うと正気でない一般人に蹴りを入れて床に触れる。そして……
ていたい
「時間も限られていますから少し本気で行きます!!停滞!!」
その瞬間敵全員の動きが止まる。まるで時間が止まったかのように……。
「風音さんこれは?」
「この人達の時間を少しの間だけ止めました。さあ、この間に行きますよ。この技の効果は3分程度ですから」
「はっ、はい」
風音はそう言うと望と共に上の階を目指して走る。そして、無事敵の包囲網を潜り抜けることに成功した。
「ところで風音さん」
「はい」
「あんなすごい技いつ使えるようになったのですか?」
望は移動しながら風音に質問する。その質問に風音は少し悩むが……少ししてから口を開く。
「ついさっきです。佐伯邸に『夜の一族』サイドの相手と戦ったときに……。」
風音は悲しげな顔をしながら答える。
そんな彼の顔を見て望は……
「すみません。余計なことを聞いて……。」
謝罪する。
「いいえ、気にしないで下さい」
そう言って望を励ます。そして、それから少ししてから2階に辿り着いた。
PM9:30 海鳴市 聖祥女子校高等部校舎2階
2階も1階と同じで正気でないこの学校の警備員が風音と望に攻撃を仕掛けてきた。だが……
「すみませんが、通して下さい」
「急いでいるんです。悪く思わないで下さいね」
二人とも謝りながら正気でない人間達を倒していた。
そして、ある程度戦うと自分達以外は誰も立っていなかった。
「……何とか終わりましたね」
望はそう言って呼吸を整えながら言う。無理もない。彼女はもともと心臓が弱いのだ。長時間の戦闘は命取りと言っても良い。
「ええ……でも、望さん」
「はい?」
「本当に大丈夫なのですか?かなり呼吸が荒いのですが」
「……。」
風音のその一言に望は何も言えなくなる。しかし……
「風音さん……一応質問しますけど私の身体について気付いています?」
そう言って風音に質問する。
「……。」
望のその言葉に今度は風音が何も言えなくなった。だが……
「……はい。最初は分かりませんでしたが何度か貴女の戦い方を見て。それとわかばさんに聞いて知りました……。」
申し訳なさそうに言う。
「「……。」」
そして、数分間お互い何も言うことができずに黙ったままの状態となる。しかし……
「……ふう」
望のその一息で時間は動き出す。
「やはり……バレてましたか。あははっ……せっかく隠していたのになあ」
望はそう言ってあははと笑うが、その笑顔は悲しみに彩られていた。
「……すみません。私の身体のことを風音さんに黙ってて」
望はそう言って謝る。
「いえ、別にいいです。ただ望さんの身体が病んでいると気付いた時はどうしようか迷いました。望さんの性格を考えたらどう言っても止めるのは無理だと思いましたから」
「当然です。助けた人を途中で見捨てる様な真似なんてできません」
「ええ。貴女ならそう言うと思っていました。だから、みんなには黙ってこの街から出て行くことも考えましたが……忍さんの一件からそれも無理だと思いました。絶対追っかけてくると分かりましたから」
「当たり前です。と言うよりも今度そんなことしたら本当に怒りますよ」
望は少し声を強くして言う。そして……
「でも、どうして望さんは僕に優しくしてくれるのですか?あの日僕を助けなければこんな大変なことに巻き込まれずに済んだのに……。」
風音は望に質問する。ずっと前から聞きたかったことを。
「どうして……ですか。う〜ん」
望はそう言って考える。それから暫くしてから言う。
「簡単に言えば風音さんが昔の私と似ているからですかね」
「えっ?」
「あの時の貴方は『殺してくれ』、『助けないでくれ』、『死なせてくれ』と悲しい感情でいっぱいだった。だから、放っておけなかったんです。私にもそう思う時があったから。わかばの『ちから』によって今のような生活が送れるようになるまでは私も心臓の病気で入院と退院を繰り返して……一日一日が過ぎていくことに恐怖を感じて絶望しかなかったから」
「……。」
望のその告白に風音は何も言えなくなった。
「でも、今はもう一つ理由があります。まだその理由を言うことはできませんが……この街をみんなで脱出できた時にお話します」
「そうですか……。」
望のその言葉が気になる風音だが今はその理由を聞かないことにした。今、自分がやらなければいけないことは何なのかが分かっているからだ。
「では、そろそろ出発しましょうか?私達に残された時間は限られていますし」
望はそう言って立ち上がる。
「はい、そうですね」
風音もそう言って立ち上がる。そして……
「望さん」
「はい?」
「望さんの身体のことはもう何も言いません。ですが……無理だけはしないで下さい」
そう言って軽く頭を下げる。そんな風音に対して望は……
「はい、分かりました」
元気よく返事をする。
そして、二人は再び行動を再開した。
風音達が海鳴市の至る所で戦っていた頃、精神世界で戦っていた恭也は……
(何だ……この嫌な感じは……。)
何かを感じたのか冷や汗をかく。だが、その時……
ヒュンヒュンヒュン!!
何処からか無数の飛針が恭也を目掛けて飛んできた。
「ちぃっ!!」
恭也はそれを全てもう一本の小太刀『疾風』と『八景』の鞘で防ぐ。だが……
「防御のイロハがなってないよ!!」
バキッ!!
突然後ろから強力な一撃がくる。どうやら飛針を防ぐ時に後ろを取られた様だ。
「くっ!!」
恭也は慌てて体勢を整えて反撃しようとするが、その攻撃は空を切って無意味と化す。
「ホラホラどうしたの?それでも士郎の息子なの?彼だったらこの程度の攻撃笑って防いだものよ」
琴絵はそう言って姿を決して現にせずに恭也を挑発する。
「どうすればいい……。」
琴絵のその言葉で恭也はますます焦る。
(さっきの寒気は一体なんだったんだ?元の世界の方で何かあったことは確かだが……。だとしたら……みんなが危ない)
恭也は元の世界のことを考える。だが、その時だった。
「何考えてるのか知らないけど戦闘中に他の事を考えるのは自殺行為よ。こんな風になるから……。」
「えっ?」
恭也は琴絵のその言葉を聞いて自分の身体を見る。
「か……身体が動かない。いや……動かせない」
そう。彼は拘束されていない。にもかかわらず自分の身体を動かせないでいた。
おりひめ
「御神流縛糸術奥義之伍 織姫。ご覧の通り糸で相手の周囲を張り巡らせて拘束する技よ。まあ、今となっては忘れ去られた技の一つになってるけどね」
琴絵はそう言って恭也の前に現れる。そして……
あらしやま
「じゃあバイバイ。御神流針術奥義之六 嵐山!!」
そう言うと恭也の頭や心臓等人体の急所である箇所を目掛けて飛針を投げる。
(まずい……。このままでは本当にやられる……。)
恭也は恐怖した。琴絵の技で自分が死ぬと言う現実に。
(これまでか……。)
そう言って「死」を受け入れて諦めようとした。だが……
『いいから行け!!君はまだ未来のある人間だ!!』
突然だが一臣の言葉を思い出した。そう。前の部屋で戦った不破一臣が最後に自分に対して言った言葉を。
(そうだ。俺にはまだ未来がある。それに……俺はまだ死ねない。いや、死ぬ訳にはいかない!!守りたい人達がいるから!!)
恭也はそう思った瞬間……あることに気が付く。
(……左腕の校則が弱い。これなら……少し力を入れれば……。)
だが、琴絵の『嵐山』による飛針はすぐ目の前まで迫っていた。だが、その時……
つむじ
「ちょっと……無茶だがやるしかない!!小太刀二刀御神流裏奥義之六 『旋風』!!」
恭也は左腕の拘束を力任せに振り解き、そのまま高速とも言える速さで左手に持っていた『疾風』を振る。
ブワッ!!
恭也が『疾風』を振ったことで風の壁が発生して琴絵の『嵐山』による飛針は全て叩き落される。
タオ
「へえ……失われた御神の技で相殺か。道も使わないでこの威力とは……やるね」
琴絵は腕から血を流しながらもニヤリと笑う。どうやら『旋風』による風の壁に切り裂かれたようだ。
「でも……まだまだ終わりじゃない。そろそろとっておきを使わせてもらうよ」
琴絵はそう言うと道を集中させる。それにより琴絵の身体はオーラに包まれる。
(な……何だ。この威圧感は……?)
恭也は琴絵の姿を見て驚く。そして……
「痛っ!!」
左腕に痛みを感じて見て見ると……左腕から出血していた。
「やっぱさっきの影響か。だとしたら……こちらもここで決着をつけないと負けるな」
そう言って恭也も構える。そして……
「やっぱ最後はこれしかないわね」
琴絵はそう言って何処からか二本の小太刀を出して構える。
「それは?」
「あっ、これ!?『白鯨』と『黒夜』って言って道の力で具現化した武器よ』
琴絵はそう言って笑顔で説明する。
いぬき
「やっぱ最後はこれでしょうね。小太刀二刀御神流奥義之参 射抜!!」
御神流の奥義の中で最も有効範囲の広い技が恭也に迫る。だが、肝心の恭也はその場から動かない。
(……まだだ。ちゃんと引き付けてでないと)
そして、琴絵の『射抜』による一撃が恭也の近くまで来たその時……
「今だ!!」
ヒュン!!
間一髪のところでかわした。だが、それだけでは終わらない。
「御神流奥義之歩法『神速』!!」
『神速』を使って琴絵の側まで移動する。
はなびし
「琴絵さん。これで終わりです。小太刀二刀御神流裏・奥義之四 『花菱』!!」
ドドドドドドッ!!
恭也の『花菱』による連撃が琴絵を襲う。そして、最後に琴絵の武器である『白鯨』と『黒夜』を払い落とす。
「み……見事よ。私の負けね……。」
最後に琴絵はそう言って倒れ、そのまま霧のように消えた。そして、それと同時に扉が現れる。
そんな琴絵の最後を見て恭也は……
(琴絵さん、貴女も強かったです。手合わせありがとうございました)
心の中でそう言って扉をくぐった。
同時刻 海鳴市 市街地
「……どうしよう」
フェイトは瓦礫の中で倒れたアルフを見ながら呟く。
平行世界のなのはから『スターライトブレイカー』が放たれたあの瞬間……アルフはとっさにフェイトを押し倒して防御結界を張ってあの強力な一撃から主人であるフェイトを救った。
だが、その代償として持っている魔力を全て使ってしまい倒れてしまったのだ。
そして、今は平行世界のなのはの魔法によって瓦礫と化したビルに身を潜めているのだ。
「でも、いつまでもこうしている訳にはいかない。ここを動いて助けを呼ばないとアルフは助からない」
フェイトはそう言って隠れるのをやめて外に出て助けを求めようとしたその時……
ドガァァァン!!
平行世界のなのはがフェイトが何処に隠れているのかに気付いて彼女が隠れていた瓦礫に魔法を放ってきた。
「くっ……見つかった」
フェイトはそう言うとパルディッシュを持って構える。だが、自分には魔力は殆ど残っていない。今戦っても100%勝てないと分かる。
(でも、戦うしかない。せめてアルフだけでも……。)
そう思いパルディッシュを持つ手に力を入れる。だが、その時だった。
ドガァァァン!!
平行世界のなのはが突然爆発したのだ。
「なっ……。」
フェイトはこの光景に唖然となる。とその時……
ドガドガァァァン!!
すぐ側でも爆発が起こったようだ。
「一体何が起こったの?」
フェイトはそう呟くと一度外に出る。そこには……
数秒前の自分のように唖然となっていた高町なのはと芳乃さくらがいた。
「な……なのは?」
「フェ……フェイトちゃん?」
二人はそう言うとお互いを指差す。そして、この瞬間さくらは……
「なるほど。そういうことか……。」
と一人納得する。
「「えっ?」」
「実はボク達も君と犬耳の人「アルフ」に襲われたけどどうやら平行世界の亡霊だったようだね。万が一のことを考えて戦わずに逃げてたけど……どうやら本物に近づいたから爆発したようだね」
「つまりは……本物のなのはが近づいてきたから並行世界のなのはは爆発したと……。」
「うん。平行世界の亡霊と言うものは現行世界の本物と接触すると存在が保てずに消滅するようになってるからね。まあ爆発するのは予想外だったけど」
さくらはそう言って首を縦に振る。
「ねえ……なのは。この人誰?」
フェイトはそう言ってさくらを指差す。
「あっ、自己紹介がまだだったね。ボクの名前は芳乃さくら。一応魔法使いをやってるよ」
さくらはそう言って自己紹介をする。しかしその名前を聞いてフェイトは……
「ヨシノってもしかして……ウィッチクイーン?」
驚きを隠さずに質問する。
「うん。お婆ちゃんはそう呼ばれていたけど……。」
さくらはそれに答えるがその時だった。
「来る……彼女が」
「「えっ!?」」
さくらがそう言ったその瞬間……彼女達の前に一陣の風が吹き、綺堂夫妻が現れた。
「お久しぶりですね……。」
「この娘がウィッチクイーンの孫ってどんな娘か興味があったけど確かに小さいな」
真一郎はそう言いながらさくらを見る。
「真一郎さん、外見に騙されてはいけません。外見はああですが強いですよ」
さくらはそう言って夫の真一郎を注意する。
「相変わらずお暑いようだけど……何しに来たの?ボク達は今忙しいからそっとして欲しいんだけど」
さくらは冷静に言う。だが、言葉には殺気が籠もっていた。
「そうはいかないわ。貴女の祖母には色々と邪魔されてきたから。そのウィッチクイーンの直系である貴女はどう考えても危険な存在。だから此処で殺してあげる」
綺堂さくらはそう言うと狼の耳と尻尾、そして狼を爪を出す。
「は……半獣化」
フェイトは半獣化したさくらの姿を見て驚く。そして、戦闘形態と化した綺堂さくらを見てさくらは……
「二人とも……悪いけどここはボクに任せて先へ行って」
なのはとフェイトに先に行くように言う。
「えっ……でも」
「私達も一緒に……。」
なのはとフェイトはさくらのその言葉に賛同せず一緒に戦おうとする。しかし……
「この二人には今の君達じゃ絶対に勝てないよ。むしろこのままいても邪魔になるだけだよ。だから、先へ行って。それにボク達にはやらなければいけないことがあるんだから」
さくらはそう言って二人の加勢を拒否する。
「「……。」」
二人はさくらのその言葉を聞いてどうするのかを決める。
「分かりました。私達は先に行きます」
「死なないで……。必ず生きて私達の元に来て」
なのはとフェイトはそう言うと倒れていたアルフを回収して先へと進む。そんななのはを見て綺堂夫妻は……
「最後の別れなのに素っ気無い別れ方ですわね」
「うん。もっとインパクトが欲しい所だね。あれじゃ感動が少ないよ」
さくらとなのは達との別れ方を見て言う。そんな二人にさくらは……
「ふっ……。」
軽く笑う。
「なっ、何がおかしいのですか?」
「別に。ただ好都合だなと思っただけだよ」
「何?」
「何ですって?」
「君達は一度ぶん殴りたかったからね」
「「!!」」
綺堂夫妻はさくらのその挑発に怒り何も言えなくなる。そして……
「そうですか。ならばこちらは貴女の攻撃を一発も受けずに殺すとしましょう」
「そうだね。さくらに対してのその態度は俺も許せないから」
綺堂夫妻はそれぞれ戦闘モードに切り替える。そんな二人にさくらは……
「思い出させてあげるよ。君達がわすれてしまったことをね」
こうしてウィッチクイーンの孫娘と綺堂夫妻の戦いが始まる。
いつもよりも赤く見える満月を観客に……。
(海鳴市崩壊まで残り2時間30分)
菩提樹「どうも菩提樹です。郵政公社の試験に落ちて自棄になってまた更新が遅くなってしまい本当に申し訳ございません。さて、今回のゲストは……。」
真一郎「相川……じゃなくて綺堂真一郎です。今回も又さくらと登場です」
菩提樹「君等相変わらずバカップルですね。『戦国BASARA2』の前田利家とまつの夫婦みたく」
真一郎「いや〜それほどでも」
菩提樹「ツッコメよ」
真一郎「いや、だってさ。せっかくさくらと登場したのにバトルさせてくれなかったからその仕返し」
菩提樹「アンタ、子供かよ」
真一郎「ああいう展開でしかも相手が芳乃さくらなんだからそのままバトルさせてもいいじゃん。それに彼女気になること言ってたし」
菩提樹「ぶん殴るってやつですかね」
真一郎「そう、それ」
菩提樹「そう言った理由は次回書きますが……胸に手を当てて考えて下さい」
真一郎「ちょっとそれどういうこと?俺が何かしたか?」
菩提樹「ということで次回もよろしくお願いします」
真一郎「おい、待て。ちゃんと理由を説明しろ」