3月30日―――PM9:00   東京都  某屋敷

カッ!!カッ!!カッ!!カッ!!カッ!!カッ!!カッ!!カッ!!

白髪の少年と老人が表情を変えずにチェスをやっている。

だが、よく見ると二人ともものすごい速さで駒を動かしているのだ。そして……

「……チェックメイトだ」
     
老人が静かに宣言する。

    ナイト             クイーン               クイーン
「……騎士で来ましたか。まだ、女王が残っていたので最後は女王で来ると思っていましたが。これは、やられましたね」

白髪の少年はそう言って駒を動かすのを止める。

「……どうした。いつものお前ならこれくらいどうにでもできるだろう。こうしてお前とチェスをするのは久し振りなんだ。このくらいで負けてもらっては困る。もっと私を楽しませてくれ」

老人のその言葉に白髪の少年は口を開く。

「……。どうすればお楽しみいただけますか?」

「どうすればだと?」

「このまま負けた方がよろしいのですか?」

白髪の少年のその言葉に老人は何も言えなくなるが少ししてから口を開く。

「フフッ。お前はつくづく面白い男だな」

老人をそう言って席を立つ。

「いかがなされました?」

「チェスはやめだ」

老人はそう言うとパチンと指を鳴らして複数の映像を映し出す。

「そろそろだろ。本格的な児戯に等しい退屈な見せ物は」

だが、老人のその言葉に対して白髪の少年は……

「いえ、なかなか楽しめますよ。あれはあれで……。」

そう言って桐花と栞の戦いに注目する。

「お前にとってはそうだったな。何せこの見せ物の主人公は……。」

「ええ、彼です」

白髪の少年はそう言って風音の映っている画面に注目する。

  ヤシロ
「夜白……お前は彼をどう思う?」

「一言で言えば彼は僕と同じ“天才”ですね。あの若さであそこまで御神流を使いこなす戦闘技術に海鳴市の正体を見破った頭脳。認めるしかありません」

「そうか……。」

老人は白髪の少年  夜白の言葉を聞いて頷く。

「だが、お前と彼が戦ったらどうなると思う?」

「黒葉……久瀬さんに記憶を奪われる前でしたらどうなっていたか分かりませんが……現時点でしたら簡単に倒せます。というよりも今の彼では久瀬さんどころか氷村さんにも勝てないでしょうね」

夜白はそう言うと右目を抑える。

                          スティグマ
「フフッ。そう言いながらも右目の聖痕が疼くか」

「ええ。彼を見ているとどうしても何かが起こりそうな予感がしてなりません。現に彼は何度も“奇跡”を起こしていますから」

「そうか。なら、さっきの言葉は訂正しよう。最後まで見てやるとするか。かつてお前やお前の姉が慕ってやまなかった男のなれの果ての戦いをな……。」

老人はそう言うと映像に注目する。そして……

「祐一兄さん……見せてもらいますよ。今の貴方の戦いをね」

夜白もそう言って映像に注目する。


Tear...

Story.39  そして、役者達は動き出す
 

                            ふじはな
姫神流  「攻」の章  十三の曲  藤花!!

桐花は高速での斬撃を四回繰り出して栞を攻撃する。だが……

「くすっ……。」

『藤花』による四連撃は栞に当たって血が噴き出すが……その血から新たな栞ができて攻撃を受けた方の栞は消滅する。

「残念でしたね。私のブラッド・リボーンの前では一切の物理攻撃は通用しません」

栞はそう言ってクククッと鳩のように笑う。

                  ひらいだん
「なら、次はこれです。秘術 飛雷弾!!

桐花はベレッタ92Fをバッグから取り出して電撃を帯びた弾丸で栞を攻撃する。だが……

「残念でしたね。言い忘れましたがそういう属性攻撃も私には通用しません。ダーク・ミラージュ!!

栞はそう言って自分の前に漆黒の鏡を出現させて飛雷弾を防ぐ。すると……


バシュン!!


飛雷弾は跳ね返って桐花の元へと向かった。

「くっ……。」

桐花はギリギリの所で跳ね返った自分の技を避けることに成功するが……内心驚かずにはいられなかった。

(物理攻撃も属性攻撃も通用しないとは……。少々侮っていましたね)

そう思いながら対策を練る。だが……

「攻略法を考えているようですがそんな時間はあげませんよ」

栞はそう言うと手持ちのバッグからアンプルを取り出し、注射する。すると栞の身体はシュオオオと音を立てて急速に活性化した。

「それは……?」

「人体のあらゆる箇所を急速に活性化させ強化するアンプルです。まあ、私はバイオブースターと呼んでいますが」

栞は桐花の質問に笑顔で答える。

「どうしてそんなものが?」

「『ゲーム』の時に名雪さんの家の地下で見つけたものを回収したんですよ。まあ名雪さんの家の地下には冷凍貯蔵庫だけでなく原子炉まで稼働していたのには驚きましたけどね」

そして……


バシュッ!!


栞の背から蝙蝠と思われる翼が生えた。

「おしゃべりはここまでにしてそろそろ死んでもらいます」

そう言って翼を広げて上空へと飛ぶ。そして……

「貴女は最初から嫌いでした。私から祐一さんを奪っただけでなく私が一番欲しいものを持っていますから。でも、それもこれで終わりです。デス・スパイラル!!

栞は鎌を回転させて螺旋状の真空波で桐花を攻撃した。

                                             ごふうしょうへき
「くっ……。予想以上に早い。こうなったら……秘術  護封障壁!!」

それに対して桐花は数枚の呪符から五亡星を描き障壁を張る。そして、栞のデス・スパイラルによる螺旋状の真空波と桐花の護封障壁が激突する。だが……

「くっ……。」

桐花の方が動くのが遅かったせいか徐々に彼女の方が劣勢になる。そして、数秒後桐花の護封障壁にヒビが入り効力が徐々に弱まっていく。そして……栞が猛スピードで上空から急降下する。

「デス・スパイラルは囮ですよ。本命はこれです。エンド・クルス!!


ザシュッ!!


栞は上空から護封障壁ごと桐花を十字に切り裂く。

「がはあああっ!!」

そして、護封障壁ごと桐花は切り裂かれ倒れた。

「何ですか。ここまで簡単に倒せるなんて全く期待外れでしたね。でも、まあいいです。頭をメッタ刺しにして殺すことにします。あっ、ですが……。」

栞はそう言って片手で桐花の頭を持ち上げて無理矢理起こす。

「その前に貴女の大きな胸を切り裂いて剥製にしてあげます!!」

栞はそう言うと桐花の胸を目掛けて鎌を振り下ろす。だが……


バキッ!!


「えっ!?」

鈍い音がしてよく見ると栞の鎌に大きなヒビが入っていた。そして、いつの間にか桐花の髪の色が紫色から緋色に変わっていた。

「……貴女は許さない。絶対に!!」

桐花はそう言って立ち上がる。だが、よく見ると目の色も緋色に変わっていた。

そんな桐花を見て栞は……

「ボロボロのくせに……よくも私の鎌にヒビを……」

怒りを隠さずに桐花を睨みつける。そして……

「貴女は……少しずつ苦しめてから殺そうと思いましたが気が変わりました。今すぐ死んで下さい。ガーネット・クロウ!!

栞は鎌を大きな爪に変えて右腕に装着する。

「今の時点ではこの技までしか使うことができませんが一瞬で倒すことだけを考えたらこれで十分です。ということでズタズタに切り裂かれて死んでください!!」

栞はそう言うと桐花に向かってダッシュする。

「確かにその右腕に当たったらまずいですね。ですが……。」


ヒュン!!


当たる寸前で避けられる。

「当たらなければ意味がないんですよ」

「なっ……あの距離で避けたのですか?」

栞は自分の技が避けられたことに動揺する。しかし……

「それならば何度でも攻撃するのみです」

すぐに立ち直ってさっきよりもスピードを上げて攻撃するが……一発も当たらない。

「当たれ!!当たれ!!そして、いい加減死になさい!!」

栞は自分の攻撃が当たらないことに苛立ちを感じたのか徐々に言葉遣いが乱れる。その時だった。


ボォォォッ!!


「なっ!?」

栞の体が突然燃え出した。

「あっ……熱い。一体何で?」

栞はそう言いながらも炎を消そうとするが駄目だった。火は鎮火するどころがますます酷くなるばかりだった。

「かかりましたね。私の灼眼に……。」

桐花は静かに呟く。だが、栞はその言葉を聞いて何も言えなくなる。

「……どういうことですか?」

「貴女は私の目を見てしまった。その時に私の灼眼が発動したんですよ」

「そんな……嘘言わないで下さい。『夜の一族』でない貴女がそんな目を持っているなんて絶対ありえないんです!!」

栞はそう言って桐花の言ったことを否定する。だが、その間にも栞の体はどんどん燃えていく。

「信じる信じないは貴女の自由です。ですが……貴女は現世にいてはいけない人です。だから、そのまま燃え尽きて帰りなさい。元いた場所へ……。」

桐花はそう言って栞の前から立ち去る。

「うっ……お……おねえちゃ……。」

栞がその言葉を言ったその時だった。


ボチャン!!


突然水飛沫が上がり栞を燃やしていた炎は消える。そして……

「又、貴女なのね……。」

「!?」

桐花はその言葉が気になり栞が倒れている場所を振り向く。そこには栞の実姉の美坂香里が立っていた。

「美坂さん……?」

「久し振りね雨流桐花さん」

二人は互いに挨拶をする。だが、香里の方はどう見ても憎悪がこもっていた。

「貴女もやるのですか?」

桐花は少し迷った顔になるがすぐに戦闘モードに戻す。

「いいえ、今夜はやめておくわ。今は栞の治療の方が優先だから」

香里はそう言うと倒れている栞をお姫様抱っこする。

「でも、これだけは言っておくわ。私も……貴女は許さないわ。と言うよりも許せる訳がない。あの時には名雪を殺し、そして今も栞を傷付けたから」

「……。」

桐花は香里のその言葉を聞いて何も言わなくなった。

「次会った時は必ず殺すわ。たっぷり生き地獄を見せてね」

香里はそう言うと栞と共に霧のように消えた。そして……

「こうなるのは最初から分かっていた。でも、退く訳にはいかない。自分の為に……そして相沢君の為にも……。」

桐花はそう呟いたその時だった。


パリィィィン!!


ガラスの砕け散る音がして空間はスリーマイルから元の佐伯邸に戻る。そして、自分の髪と目の色を元に戻してことり達への元へと走った。


同時刻  海鳴市  商店街

桐花が栞と戦っていた頃、純一達は商店街で『夜の一族』の構成員と思われる人間達と戦っていた。

「しつこいんだよ!!」


ザシュッ!!


純一は大剣で白服の構成員を斬る。

そして、アイシアも……

                      インフェルノ
「いい加減に諦めて下さい。灼熱地獄!!

火属性の中級魔法で構成員達を攻撃する。これにより20名以上の構成員が戦闘不能になる。だが……

「倒しても倒してもキリがないですね……。」

音夢が額から汗を流しながら呟く。

そう。構成員の数は軽く数えても200名はいる。しかも、何度倒してもゾンビの如く立ち上がって純一達を攻撃してくるのだから始末におえない。

「畜生……何度も倒しても立ち上がりやがって。起き上がりこぼしじゃあるまいし……。」

「兄さん……気持ちは分かりますけど今はそんなことが言える程余裕がある状況ではありません」

「そうです。それにこの街は元々反仮想空間なのですから何でも当然と思わないと先へは進めませんよ」

音夢とアイシアはそう言って純一を注意する。だが、その時……

「んっ……?」

「兄さんどうかしましたか?」

「木琴の音がする……。」

「「へっ!?」」

音夢とアイシアは純一のその言葉に呆れる。だが、耳をすませると……

「あっ……確かに」

「本当に……木琴の音がしますね」

二人はそう言って純一の言葉が事実であると認める。そして、そうしている間にも木琴の音はどんどん大きくなっていった。

そして、気が付くと変化は周りにも現れる。

木琴の音がしてから構成員達がが全く動かなくなったのだ。そう。まるで眠ったように……。

「あれ……どうしたのですかね?」

「そうですね。木琴の音が聞こえてから全然動かなくなりましたね」

アイシアと音夢は動かなくなった構成員を見て首をかしげる。だが……

「木琴の音……そうか。そういうことか」

純一だけは気付いた。誰が、この現象を引き起こしているのかに。そして……

「あっ、朝倉君。こんな所にいましたか。道に迷って遅くなりましたが間に合って良かったです〜。」

木琴を持ったぼ〜っとした感じのする少女が現れる。

「やっぱり……萌先輩の仕業でしたか」

「はい〜。やっと見つけたと思ったら朝倉君達がピンチでしたので私の能力『惰眠』を使ってお助けしました〜。」

「お陰で助かりました」

「いえいえ、お気になさらず。朝倉君達にはいつもお世話になっていますから〜。」

萌はそう言ってニッコリと笑う。そして……

「く〜。」

そのまま眠ってしまった。

「わ〜っ。萌先輩、起きて下さいよ〜!!」

純一はそう言って萌を揺する。…がその甲斐なく起きなかった。

ちなみに萌が起きたのはそれから20分後だった。

その間純一達は眠ってしまった萌を放っておくこともできなかったので、起きるまでその場にいるハメになってしまった。



「う〜っ!!本当に役立たずばかりなんだぉ〜!!」

名雪は商店街の入口から純一達を見て呟く。

「でも、まあいいか。あの3人は私の祐一を盗る心配はなさそうだし」

そう言ってその場を立ち去る。だが暫くして……

「でも、そろそろ又私も動かなきゃいけないね。栞ちゃんが桐花ちゃんに負けちゃったようだし」

そう言って立ち止まる。

「だとしたら……昨日会った白河ことりって娘の方を先に殺した方がいいかな。彼女も桐花ちゃんと同じで私の祐一をたぶらかす女だからね。でも、どうやって殺そうかな?普通に殺すんじゃつまらないし……。」

名雪は暫く考える。そして……

「うん、ひらめいた。でも、それを実行するには準備が必要だね」

そう言ってある場所へと向かった。


PM9:05   海鳴市  佐伯邸  リビング

ここに全ての人が集う。ことりと雪音そして桐花も集合していた。

「さて、今この街の状況はさっき説明した通りです。この街は0時つまりあと2時間55分で『空間崩壊』により崩壊します」

彩はいつもと顔を変えずに淡々と説明する。そして……

「暦さんのディスクによるとこの現象を引き起こしている氷村遊はどうやらデパートALCOにいるみたい。でも、デパートALCOの周辺は浸食によって近づけないようになってるから今の段階では入ることはどう考えても不可能。でも……海鳴市でもまだ行くことができる場所で強い力を感知できた。そして、それは……デパートALCOにも直結していると分かった」

さくらのそこまで説明した時に眞子が手を挙げる。

「その力の正体って……まさか?『夜の一族』に組する能力者の可能性が高いんじゃないの?」

眞子のその言葉を聞いて彩とさくらは頷く。

「恐らくそのまさかだと思います」

「でも、その場所は全部で五ヶ所もありますからいくつかのチームに分かれて行動する必要がありますね」

理恵はそう言うと宝くじ等でよく見かけるガラガラを用意する。

「あの……ひょっとして」

「それで……チームを決めると言うのでは?」

風音と望が理恵に質問する。

「はい、そうです。今いるメンバーじゃどう見ても風音さんが誰と行くかでケンカになると思いますからそれを防ぐ為にやってもらいます」

理恵のその言葉を聞いて彼女と彩とさくら以外の人間は何も言えなくなった。そして、時間も限られているので結局ガラガラでチームを決めることになった。

そして5分後……

聖祥女子担当              神楽風音、藤宮望

天神音楽大学担当           白河ことり、雨流桐花

風芽丘中央病院担当         水越眞子、藤宮わかば

海鳴大学担当              芳乃さくら、高町なのは

風芽丘コンサートホール担当     フィリス矢沢、神倉雪音

佐伯邸待機               月代彩、佐伯理恵

チームが決まった。

「時間は限られていますので迅速に行動してください。そして、皆さんの様子はつい先程皆さんにそれぞれ配布した探知機等が付いたカードで状況が分かるようになっています。又、何かありましたらカードを使って連絡しますので絶対失くさないで下さい」

彩はそこまで言うと一息つく。そして……

「それでは皆さん……ただ今より海鳴市崩壊阻止及び脱出作戦……開始!!」

彩のその言葉を合図にそれぞれは動き出した。


PM9:10    海鳴市   デパートALCO最上階

「あと2時間50分か……。」

遊はワインを飲みながらボソッと呟く。

「考えたらこの街は俺にとっては『敗北の象徴』だな。八年前のあの日……風芽丘学園の体育館で義妹のさくらと戦って敗北し長老会から処罰された。そのせいで七頭目から除外され唯一の家族である親父にも愛想を尽かされた。そして、華音市の『ゲーム』では相沢祐一と雨流桐花に殺されかけて叱責された。だから……俺はこの街が憎い。『現実』そのものから消してやらないと気が済まない」

遊がそこまで言ったその時だった。

「大分荒れてますね、遊」

「クスクス……そうだねさくら」

「何だ……お前等か」

遊はそう言って後ろを振り向く。そこには綺堂夫妻が立っていた。

「一体何のようだ?」

遊は表情を変えずに質問する。

「貴方がこの街を『空間崩壊』で消滅させようとしていると忍から聞いたから来たんですよ」

「それで……止めに来たのか?」

遊はそう言ってさくらに質問する。だが……

「いいえ。むしろ貴方を手伝いに来たんですよ。長老会が貴方の手助けをしろと言いましたから」

さくらの答えは意外なものだった。

その言葉を聞いて遊は少し考える。

(一体どういうことだ?俺を止めるどころか協力するだと!?真意は一体……?)

だが、考えても二人の真意は思いつかなかった。

「まあいい。お前等が俺に協力するというのなら構わん。だがな……?」

「「!?」」

「俺の邪魔だけはするな!!邪魔をしたら殺すからな!!」

「その所為で長老会に処刑命令が下ってもかい!?」

真一郎は笑顔で言う。

「ああ、構わない!!それで、俺のやろうとしていること……Project Rが成功するのならな」

遊はそう言って殺気を込めて二人を睨みつける。そんな遊に対して二人は……

「おお怖い怖い!!だから、さくら今回は退散しようか」

「そうですわね。私達にも目的がありますし。あの……ウィッチ・クイーンの孫娘を始末するという目的がね」

そう言って姿を消した。

二人が去ってから遊は……

「ふん、何処までも癪にさわる奴等だ!!」

そう言って再びワインを飲み始めた。


同時刻    海鳴市   天神音楽大学

その頃ことりと桐花は……

「簡単に到着しましたね……。」

「ええ。『転送鏡』を使いましたから」

目的地である天神音楽大学に到着していた。

「でも、この時間だから誰もいないと言うのは当たり前ですかね?」

「ええ、でも出来れば此処へは相沢君と行きたかったです。SEENAの通っていた大学と聞きましたから……。」

ピクッ!!

桐花のその言葉にことりは少し頭に来た。

「今はそんなことを言ってる場合ではありませんよ……不意打ちで祐一君にキスした雨流さん」

ピクッ!!

ことりのその言葉に桐花も少し頭に来た。

「あれは人工呼吸と言った筈ですが……貴女私にケンカ売ってませんか?もしそうだと言うのなら買いますけど」

桐花は頭に来て言い返す。

「ええ、売ってますよ。私は貴女のことはまだ完全に信用していませんから。ですから……」

「!?」

「私と勝負して下さい。この大学の何処かにいる『夜の一族』サイドの能力者を先に倒した方が勝ちと言う勝負をね」

ことりのその提案に桐花は少しの間思案顔になる。そして……

「……ええ、構いませんよ。でも、どうせなら負けた方は相沢君から身を引くとルールを付け加えた方がいいと思いますが。私も貴女のことをまだ認めていませんから。それに、その方がお互い本気で動けると思いますしね」

ことりは桐花のその提案を聞いて少し考える。だが……

「ええ、それで構わないっすよ」

了承した。そして……


「「では、Ready  Go!!」」


二人はその言葉を合図に大学内に突入した。

こうして海鳴市での最後の戦いが始まる。

(海鳴市崩壊まで残り2時間50分)

to be continued . . . . . . .



あとがき

菩提樹「どうも菩提樹です。色々ありまして4ヶ月近くも空けてしまいました。本当に申し訳ございませんさて、今回のゲストは……。」
栞「美坂栞です。今回はどう読んでも桐花さんがメインのお話ですね。私も逆転サヨナラ負けをしましたし」
菩提樹「でも、今回は本気でいってないからこうなっても仕方がないですね。まあ、それは桐花さんも同じですが」
栞「何ですかそれは!?どういうことなんですか?」
菩提樹「あ〜っ、うるさい!!まだ真琴みたく死ななかったんだからまだ良いじゃん」
栞「うっ……。それもそうですが。でも、私の次の登場はいつ頃の予定ですか?」
菩提樹「暫くはありません。次は名雪に頑張ってもらう予定ですから」
栞「うっ……すっごく酷いです。横暴です。うわ〜ん!!おねえちゃ〜ん!!(泣)」
菩提樹「栞さんが逃げてしまった為に今回のあとがきはここまでにします。でも、フェイトと恭也の話を期待していた人には本当に申し訳なく思います。この二人については次回はちゃんとお書きします。ということで次回もよろしくお願いします」