3月30日―――7:07  海鳴市  海鳴臨海公園前
 
わかばが海鳴臨海公園前に辿り着いたその時だった。
 
 
キキ―――ッ!!
 
 
一台の車がわかばの前で止まったのだ。そして…車から出てきたのは眞子だった。
 
「わかば、こんな所にいたのね。良かった。心配したんだよ。」
 
だが、彼女の表情は台詞とは反対に焦りがあった。
 
「水越さん、どうなされたのですか?」
 
わかばはそれに気付いて質問する。
 
「悪いけど、それは後で。早く車に乗って。」
 
眞子はそう言ってわかばを無理矢理助手席に押し込む。
 
「わっ、水越さんちょっと…。」
 
「ごめん。じゃあ、行くよ。神楽達の事も心配だから。」
 
眞子もそう言って運転席に座ってキーを差込み海鳴臨海公園を後にした。
 
 
「水越さん、一体何があったのですか?」
 
「TV見れば分かるわよ。」
 
眞子はそう言って車に付いている小型テレビのスイッチを入れる。
 
『警察は防犯カメラの映像と関係者の証言によりこの事件をテロとし、容疑者を特定―――』
 
小型テレビに映った女子アナがそう言うと画面は防犯カメラの映像に変わる。其処には…風音とことりが映っていた。そして…
 
『このテロの実行犯とみられる17歳の少年1名と17歳の少女3名の計4名を全国に指名手配するとの発表を行いました!!』
 
「これは…一体?どういうことなのですか?」
 
「見ての通りよ。私達指名手配犯にされちゃったのよ。」
 
「えっ?それは…。」
 
わかばはまだ状況がつかめないのかキョトンとする。
 
「簡単に言えば『夜の一族』の仕業よ。私と神楽とことりの3人が4人のうちに入っているわ。後の1人は知らないけどね。」
 
「ええ―――っ!?」
 
わかばはやっと状況を理解して驚嘆の声をあげた。
 
「だから、早く神楽達と合流するわよ。神楽達の居場所はことりの携帯で把握してるから。」
 
眞子はそう言うと車のエンジンをかけて風音達の元へと向かった。
 
 
そして、臨海公園から二人を見ていた桐花は…
 
                                                      てんそうきょう
「……こうなる事は予想していましたけど、今の相沢くんではちょっと危ないですね。秘術 転送鏡!!
 
桐花も「転送鏡」を使って風音達の元へと向かった。
 
 

 
Tear...
 
Story.34   襲撃
 

 
同時刻  海鳴市  繁華街
 
その頃、全国に指名手配された風音達は繁華街の広場からとあるビルの屋上に逃げた。
 
「…いつかはやるとは思っていましたけど案外早かったですね。」
 
「そおっすね。でも、このままでは…。」
 
風音とことりの2人はこの事を予想済みであるかのように言う。だが、その時だった。
 
『撃ちなさい!!危険人物よ構わないわ!!』
 
風音達を取り囲んでいる警察官女性警部はビルの上の機動隊にトランシーバーで命令する。
 
だが、部下の警察官達は…
 
「警部、いくらなんでもそれは…。」
 
「相手はまだ17歳の子供なんですし…。」
 
そう言って自分達の上司を止めようとするが…。
 
「あの子達は確かに子供だけど……公共施設を破壊したテロ犯よ。警察として引き下がってたまるもんですか。それに、この命令は本部からの通達だから構わないわ。」
 
そう言って開き直った。そして…
 
 
ダアン!!
 
 
風音達がいるビルとは別のビルの屋上から機動隊の狙撃班の一人がことりをめがけて発砲してきた。だが、ことりはこれを軽く避ける。そして…
 
「危ないじゃないですか!!か弱い女子高生に発砲するなんてそれが警察のやる事ですか?」
 
ことりは機動隊の狙撃班に向かって叫ぶ。だが、それがいけなかった。
 
『狙撃班の存在に気付かれた。一斉射撃用意!!』
 
機動隊の狙撃班のメンバーは意地になり、風音達に照準を合わせるが……
 
「えっ!?」
 
もう風音達はいなかった。どうやら逃げられたようだ。
 
『……い、いつの間に。』
 
「さあっ…。」
 
「とりあえず…逃げられたのでは…。」
 
警官達は暫く呆然となるが…
 
 
『ハッ…犯人が逃走!!逃走――ッ!!厳戒態勢よ!!警察の威信に掛けて絶対捕まえなさい!!』
 
 
繁華街に女性警部の声が響き渡った。
 

 
7:10   海鳴市   さざなみ女子寮
 
「……いきなりこれはないだろう。」
 
耕介は桐花の102号室に置かれていた封筒を見て呟く。その封筒には「退寮届」と書いてあった。
 
そして、「退寮届」通りなのか桐花の部屋はいつの間にかもぬけの空になっていた。
 
「くそっ、勝手に出て行くなよ。納得がいかねえな。」
 
耕介はそう言うと外に出る。
 
 
耕介が外に出て5分後…
 
「あっ、薫。どうしたの?」
 
神楽坂で偶然恋人である神咲薫とバッタリ出会ってしまったのだ。
 
「耕介さんが無断退寮者を探してるって真雪さんから聞いたからそれで手伝いに来ました。」
 
薫は笑顔で言う。
 
「ありがとう。それで、無断で退寮したのは…。」
 
「雨流桐花って娘やろ。」
 
薫は間髪入れずに答える。
 
「えっ…。どうして薫が桐花ちゃんの事を……。」
 
耕介は桐花と接点の無い薫が何故彼女の事を知っているのかが分からず驚く。
 
「それは、彼女が…うちが探しとる男の子の友達だからな。」
 
薫がそう言ったその時だった。
 
「……薫、危ない!!」
 
 
ドンッ!!
 
 
耕介が殺気を感じて薫を突き飛ばす。そして…
 
 
ダン!!
 
 
薫が元いた場所は……隕石が落ちたかと思われるほど大きなクレーターが出来た。
 
「くっ……誰だ。出て来い!!」
 
耕介は殺気が集中している場所に向かって叫ぶ。すると…
 
「チッ、気配は消した筈なのにな…。」
 
留美が頭をかきながら現れる。
 
「君は……何者だ。」
 
耕介は留美を見てかつての自分を感じたが、それを顔に出さずに質問する。
 
「私?私は『Sanctuary』の七瀬留美よ。アンタ達を攻撃した理由は……邪魔だからかな。桐花にはやってもらう事があるから。」
 
「それは、どういう事だ?」
 
耕介は留美に質問するが、そこで薫が間に入る。
 
「久し振りやね、留美。」
 
「あっ、久し振り。不要な退魔師一族の当代さん。」
 
留美のその台詞に薫はカチンとくる。
 
「そっちも……神咲の技を人殺しに使ったやろが。」
 
薫も負けじと言い返す。そして…
 
「どうやら分かり合えないみたいね。」
 
留美はそう言うと黒い剣を抜く。
 
「「!!」」
 
耕介と薫はそれぞれの破魔刀 十六夜と御架月を出すが、留美が放つ殺気に驚き後ろへと下がる。…がその時だった。
 
 
ドン!!
 
 
留美の持つ黒い剣がコンクリートの道路にクレーターを作り、その残骸を耕介に向けて飛ばす。
 
「くっ!!」
 
耕介は留美の攻撃を間一髪のところで避ける。

  しんきはっしょう                                              しんい  ほうげつりん
神気発勝!!  神咲一灯流  『真威・封月輪』!!

 薫が背後から拘束系の技で留美の動きを封じる。そして…
 
「耕介さん、今です!!」
 
             しんきはっしょう                           しんい     ふうじんは    ついのたち    はやて          せんのたち     こげつ
「ああ、分かってる。神気発勝!!  神咲一灯流 『真威・楓陣刃』 『追の太刀・疾』   『閃の太刀・弧月』!!
  
耕介は神咲一刀流の三大技を留美に繰り出す。そして、技を連続で出した所為か留美の周りに砂煙が立つ。
 
「やったか?」
 
「どうだ?」
 
二人は砂煙が晴れるのを待つ。だが、砂煙が晴れた時二人は驚愕した。
 
「何?この蚊が刺したような弱い攻撃は。」
 
「そんな…馬鹿な。」
 
「全くの無傷だと。」
 
そう。留美は耕介の神咲一刀流の三大技を全て喰らったにも関わらず全くダメージを負っていなかった。
 
「じゃあ今度はこっちから行くわよ!!」
 
留美はそう言うと自分の後ろに立っていた電柱を黒い剣斬り、薫に向けて投げつけた。
 
「なっ…。」
 
「薫、危ない!!」
 
耕介は叫んで慌てて薫の元へと走るが…。
 
「かかったわね!!」
 
 
ドゴッ!!
 
 
その時留美の重い一撃が耕介の脇腹に食い込んだ。
 
「ぐはっ!!」
 
「うわあああっ!!」
 
そして、薫も上手く電柱を避ける事が出来ずに右腕にダメージを負った。
 
「薫!!」
 
耕介は急いで薫の元に駆け寄る。
 
                      ・・
「くっ…耕介さん。こうなったら……あれを使うしかない。この状態では上手くいくかどうか分からんけど…。彼女を止めるには……。」
 
「……ああ、そうだな。神咲一刀流の三連激が全く通用しなかったからな。」
 
二人はそう言うと頷いて立ち上がる。
 
「ふん。何?逃げる相談?」
 
留美は無表情で言う。
 
「…いや、違う。君にどうやって勝つかの相談だ。と言っても一か八かの賭けだけどな。」
 
「そう。…うちらはまだ負けちょらん。この一撃に全てを賭ける。」
 
二人はそう言うと霊力を全開にしてお互いの刀を合わせる。
 
そんな二人を見て留美は…
 
「おっ、凄い霊力ね。まあ、何をやろうとしているのかは大体分かるけど…。いいわ、その賭けに付き合ってあげるわよ。」
 
そう言って構える。
 
二人の霊力は反発し合い相乗効果が働いてどんどん高くなっていった。そして…
 
  しんきはっしょう                              ふうしん  ふうかしっこうだん
「「神気発勝!!  神咲一灯流奥義  『封神・楓華疾光弾』!!」」
 
二つの霊力が螺旋を描くように留美に向かって飛ぶ。
 
「ふうん。やっぱこれか…。」
 
留美はそう言って『楓華疾光弾』を自分の黒い剣で受け止める。
 
「いけるか…。」
 
「頼む、このまま彼女を…。」
 
霊力を使い果たした薫と耕介は膝をついてどうなるのかを見る。
 
「まあ、思ったよりはやったけど……ここまでよ!!」
 
留美はそう言うと力を溜める。いや……周囲から霊力を吸収する。そして…
                              
              しんめいそうか
裏神咲一刀流  『神鳴葬火』!!
 
そう言った瞬間、『楓華疾光弾』は留美の『神鳴葬火』によって相殺された。
 
「「なっ…。」」
 
耕介と薫はそれを見て驚愕する。
 
「そんな馬鹿な…。」
 
「む…無念。」
 
バタッ!!
 
二人は霊力を使い果たしたのと自分達の技が通用しなかった事へのショックでバタリと倒れた。
 
「……あんた達は『夜の一族』と戦おうとしない臆病者。そんなあんた達が相沢達に関わろうなんて100年早いのよ。」
 
留美はそう言うとその場を去った。
 

 
PM7:12   海鳴市   海鳴駅前
 
帰宅ラッシュで大賑わいの海鳴駅前。そこに風音達4人はいた。
 
「…いつの間にここに。」
 
「おかしいですね。ついさっきまで繁華街のビルの屋上にいた筈でしたのに。」
 
望とフィリスは何故海鳴駅前にいるのか分からず首をかしげる。だが…
 
「多分、彼女ですね…。」
 
「ええ、だから出てきてくれませんか?雨流桐花さん。」
 
「……。」
 
ことりと風音がそう言うと雨流桐花が姿を現す。
 
「やはり、二人は気付いていましたか。」
 
桐花は表情を変えずに言う。
 
「ええ。こんな事が出来るのは現時点では僕意外には貴女しかいませんからね。」
 
風音は冷静に言う。
 
「でも、『Sanctuary』のメンバーである貴女が何で私達を助けたのですか?」
 
今度はことりが桐花に質問する。
 
「簡単な事ですよ。私も貴女達と同じ立場にされたからです。」
 
「えっ…それって。」
 
「はい、私が4人目の手配犯と言う事です。」
 
桐花は表情を変えずに言う。
 
だが、その時だった。
 
 
キキ―――ッ!!
 
 
一台の車が急ブレーキをかけて桐花の後ろで止まった。そして…
 
「神楽、ことり・・・良かった。無事で…。」
 
眞子はドアを開けて安堵する。だが…
 
「いたぞ、ここだ!!」
 
拳銃を持った数人の警官に見つかってしまう。
 
「くっ…みんな早く乗って。」
 
眞子はそう言うと車のドアを開ける。
 
風音・ことり・望・フィリスが乗るが…
 
「ちょっと、そこのアンタも乗りなさい。時間が無いんだから。」
 
桐花がまだ乗っていなかったので眞子は乗るように言う。
 
「いえ…私は別に…。」
 
「別にもくそも無いわよ。アンタも私達と同じなんでしょうが。」
 
「……分かりました。」
 
桐花は眞子に押される形で車に乗った。
 
 
「でも、眞子さんって何で車を持っていたんですか。」
 
車の中で風音が言う。
 
「こういう時の為に買っておいたのよ。」
 
運転席で眞子が頷く。
 
「……でもどこに向かっているのですか?」
 
望は質問する。
 
「佐伯邸よ。」
 
それを聞いてフィリスは…
 
「あっ、思い出しました。確か……19時20分までに佐伯邸に来いって言われた気がします。」
 
「「「「えっ!?」」」」
 
その言葉に他の4人は絶句する。そして…
 
「それなら、全速力で行くわよ。みんなシートベルトお願いね。」
 
眞子がそう言うと車は物凄いスピードで佐伯邸へと走った。
 
 
「「「うわわわわああああっ!!」」」
 
 
あまりのスピードに望、わかば、フィリスは叫んだ。
 

 
PM7:19   海鳴市  佐伯邸前
 
 
キキ―――ッ!!
 
 
車は目的地の佐伯邸の前で止まる。
 
「ふう、やっと到着。集合時間までには何とか間に合ったわね。」
 
「ええ、でも…。」
 
「私達以外の人達はグロッキー状態です。」
 
「確かに…。」
 
そう。車を運転していた眞子と風音、ことり、桐花以外の人間はあまりのスピードに耐えきれず、気絶していた。
 
だが、その時だった。
 
「……7時19分。ギリギリですね。」
 
「やっほ〜みんな何とか間に合ったみたいだね。」
 
佐伯邸のドアが開いて中からさくらと銀髪に黒い服の少女が表れた。
 
「……そう言わないでよ。私達指名手配犯にされちゃったんだから。」
 
眞子はさくら達の言葉に反論する。そして…
 
「このまま此処にいても時間の無駄です。皆さん入って下さい。特に神楽さん、貴方には是非会わせたい人がいますので。」
 
「えっ…僕にですか?」
 
「はい、そうです。」
 
彩はそう言った後に風音達は佐伯邸の中に入る事にした。
 

 
PM7:20   海鳴市  佐伯邸  リビング
 
「『Wind』の月代彩です。どうもはじめまして。」
 
「はじめまして、佐伯理恵です。彩さんとは友達です。」
 
理恵は笑顔で彩は表情を変えずに挨拶をする。そして…
 
「これから皆さんにこれからの事を説明します。」
 
彩はそう言うと全員にレポートを配布し説明を始めた。
 
「レポートに書かれている通り皆さんにはこれから『Wind』の本拠地のある風音市に行ってもらいます。」
 
彩がそこまで説明したその時だった。
 
「あのう…私もですか?私は神楽くん達とは違う立場なのですが…。」
 
桐花が手を挙げて質問した。
 
それに対して彩は…
 
「ええ、そうです。一緒に来てもらいます。七瀬さんに許可は貰っていますから。」
 
と表情を変えずに言った。
 
そう言うと映写機を使ってスクリーンに映像を写す。映し出されたのは海鳴市の地図だった。
 
「ですが…その為にはこの街を脱出する必要があります。しかし、この街の出入り口及び交通機関は『夜の一族』の手に抑えられていますからそれらを使うのは無理です。だからと言って夜に暗闇に紛れて動くというのも得策ではありません。『夜の一族』は夜の方が戦闘能力が高くなりますから。」
 
理恵も彩に続いて説明する。
 
「ですので、今日はもう何もせずに休んでください。特に神楽さん、白河さん、水越さん、雨流さんは大変な状況に陥っていますから今下手に行動するのは止めておいた方がいいでしょう。」
 
理恵が説明が終わった後で今度はことりと眞子が手を挙げた。
 
「はい、何ですか?」
 
「いきなり風音市に行けって言ってるけどさあ、私達の都合を無視してない?私達も学生だから学校行かないと行けないし、やる事があるんだけど。」
 
眞子がそう言った後に今度はことりが質問した。
 
「この事は家族…お姉ちゃんは知っているんですか?それと風音市に行くという事は転校になるんですよね。なら、その編入試験はいつ頃なのですか?」
 
それらの質問に対して理恵は笑顔で答える。
 
「親御さん達にはこの事に関しては連絡していますし承諾もちゃんと取ってます。そして、学校に関しては白河さんのおっしゃった通り転校という事になります。編入試験に関してはまだ試験を受けていない雨流さん以外の人達は既に合格していますので安心して下さい。」
 
「ちょっと待ってよ。私達試験なんて……はっ。」
 
眞子はそう言いかけた時ある事に気付く。
 
「もしかして2日前にわかばに受けさせられた試験が編入試験だったんじゃ…。」
 
「うっ…。」
 
その言葉にわかばは何も言えなくなった。その通りだったからだ。だが、その時だった。
 
「眞子さんその辺にしてあげたらどうですか?あの時からこうするつもりだと知ったのには驚きましたがもう済んだ事ですし。」
 
「くっ、分かったわよ。」
 
風音の一言により眞子は引き下がる。
 
「詳しい事は又明日お話します。各自割り当ての部屋で休んで下さい。」
 
こうして説明会はお開きとなった。
 


 PM8:30  海鳴市  佐伯邸  中庭へと続く通路
 
「……うん。これで良し。」
 
桐花は自分のバッグを持ちながら呟く。だが、その時だった。
 
「何処に行かれるのですか?トイレはそっちじゃないですよ。」
 
「えっ…。」
 
桐花はその声に反応して後ろを振り向く。其処には風音が立っていた。
 
「か…神楽くん。どうして…?」
 
「少し貴女に訪ねたい事がありましたので貴女を探していたのですが…。」
 
風音がそう言ったその時だった。
 
 
パリイイン!!
 
 
いきなり窓ガラスが割れて仮面を付けた黒服が5人現れた。
 
「いきなりですか…。」
 
「しつこいですね雑魚のくせに…。」
 
2人がそう言ったその時だった。
 
 
バキャッ!!
 
 
仮面を付けた黒服の一人がもの凄いスピードで桐花に攻撃を仕掛けてきたのだ。
 
「このスピードは今までの雑魚とは大違いですね。でも…」
 
 
バキッ!!
 
 
「私の半分以下ですけどね…。」
 
桐花はそう言って自分に攻撃を仕掛けた仮面を付けた黒服にエルボーを入れて。そして…
 
「神楽くんは外に逃げてください。此処は私が引き受けますから。」
 
「えっ…。」
 
風音は桐花のその言葉に何も言えなくなった。
 
「この人達は恐らく何らかの実験の被験者です。そうなると、これまでのように殺さずに止めるというのは無理です。それに…昨日の戦いをキッカケにまだ迷っている貴方では絶対彼等には勝てません。」
 
「……。」
 
風音は桐花のその言葉に何も言えなくなる。そして…
 
「分かりました。でも、無理はしないで下さいよ。」
 
そう言って割れた窓から外に出た。そして桐花は…
 
「何とか神楽…いや相沢くんが分かってくれて良かったです。もう、彼に見られたくありませんからね。人を殺すところは…。」
 
そう言ってバッグからベレッタM92Fを取り出して構える。
 
「それに、この人達は恐らく氷村ではなく名雪に何かされた人達ですね。それならば…こちらも見せてあげますよ。『Sanctuary』の四強……Quartetの一人としての私の力を…。」
 
桐花がそう言った数秒後、仮面をつけた黒服達は一斉に彼女に攻撃を仕掛けてきた。だが…
 
                                            せんか
「だから、遅いと言っているでしょう。姫神流  「攻」の章 第四の曲  閃花!!
 
桐花はそう言うとベレッタM92Fで仮面を付けた黒服達の急所を切り裂いた。彼等とは別次元のハイスピードで。
 
だが…仮面を付けた黒服達は急所を破壊されたにも関わらず立ち上がってきた。
 
「やはり、ダメですか。それならば…こうするしかありませんね。相沢くんが心配ですし…。」
 
桐花はそう言うともう一つの自分の銃 シグ・ザウエルをバッグから出す。そして、それと同時に仮面を付けた黒服達は再び桐花に襲い掛かってきた。
 
                                                       きょうか
「これで終わりです。姫神流  「守」の章 第七の曲  鏡花!!
 
桐花はそう言って自分の前に鏡を出す。そして、仮面を付けた黒服達の攻撃は全て桐花の出した鏡に当たる。それによって鏡が割れるが…それと同時に仮面を付けた黒服達の身体も崩壊し消滅した。
 
「この人達はもう元の姿には戻れない。彼には悪いけどこうするしかない…。」
 
桐花はそう言うと風音のいる外…中庭へと走った。
 

 
PM8:35  海鳴市  佐伯邸  中庭
 

ドクン!!ドクン!!ドクン!!

 
外に出た風音はもの凄く強い殺気を感じた。
 
(一体何なんですか?このバカでかい殺気は…。)
 
その時だった。
 

ズカン!!
 

何処からか風音に向かっていきなり攻撃が飛んできた。
 
「チッ……ハズシタカ。」
 
風音に奇襲を仕掛けた白髪の男はそう言って舌打ちする。
 
「貴方は…。」
 
風音は驚きを隠さずに質問する。それに対して白髪の男は…
 
「オレカ、オレノナハグリフ。アイザワトウリュウヲコロスタメニソンザイスルモノ。」
 
グリフはそう言うと自分の武器である黒い大剣を構え直す。
 
「どうやら戦うしかないみたいですね。でも、この人も相沢とは…一体どういう人だったんだ?相沢祐一と言う人は。それに、僕はこの人にも過去に会った気がする。だから……戦いたくない。」
 
こうして佐伯邸の中庭で望まざる戦いが始まった。
 
 
 
to be continued . . . . . . .



あとがき

菩提樹「どうも先月から社会人をやってるSS作家の菩提樹です。投稿までに2ヶ月近くかかりましたがすみません。では、今回のゲストは…。」
耕介「槙原耕介です。…ってファーストバトルでやられ役かよ。」
菩提樹「相手が七瀬なら仕方がありませんよ。何せ七瀬は彩やヴィクターに匹敵する強さの持ち主なんですから。」
耕介「でも、それでも圧倒的過ぎだろ。それに…裏神咲一刀流って何なんだよ?御神流じゃあるまいし。」
菩提樹「七瀬の使う剣術の一つです。勿論、耕介さん達と同様表の技も使えます。」
耕介「それって無敵じゃん。それに…彼女は本当に退魔師なのか?」
菩提樹「それは後日説明します。」
耕介「でも、俺と薫はそのまま放置か?」
菩提樹「それは……何とかします。という事でそれでは又〜。」
耕介「絶対何も考えてないだろ、アンタ!!(怒)」