3月30日―――PM6:30 海鳴市 風芽丘学園前
「ふう。フランシアは焦り過ぎですね。もう高町恭也は月村邸にはいないというのに…何を聞いていたのでしょうかね?」
風芽丘学園前でフランシアに置いてきぼりを食らったエリクシアは溜め息を吐きながら携帯電話をかける。
TRRRRRRRRR!!
『はい、フランシアだけど…何、エリクシア?今、翠屋前だから急いでいるんだけど。』
「それはどうも。貴女さっき月村邸に向かっていましたけど……安心しましたよ。今いる場所が翠屋の前で。」
『……どういう意味?』
「高町恭也と月村忍はその翠屋にいるんです。2分前から。」
『えっ…?聞いてないよ。』
「……桐花の報告でもちゃんと聞いて下さい。貴女が桐花のことが嫌いなのは知っていますけど報告は私情や感情を抜きにして素直に聞かないと……。」
エリクシアは怒気を抑えて言う。
『わ…分かったわよ。でも、あんな胸の大きい無表情の“成り上がり”。』
「フランシア!!」
『わ…分かったわよ。言い過ぎたわよ。反省してるからそんなに怒らないでよ。じゃあ私は翠屋にいくから。じゃあね。』
Pi!!
エリクシアは呆れながら携帯電話を切った。そして…
「……さっきからそこにいる貴方。いい加減出てきたらどうですか?」
エリクシアはさっきとは打って変わった顔で言う。すると……
「ちっ…せっかく気配を消していたのに。あんた、只の胸のデカいメイドじゃないな。」
学園の敷地内から「夜の一族」の蛍火が現れた。
「いいえ、貴方の気配の消し方は完璧でしたよ。只、相手が悪かっただけですわ。」
エリクシアは笑顔で言う。だが、その身体からは常人では気絶するほどの強力な殺気を発していた。
「へえ…その様子だとお前もあいつと同様『呪われた子供』らしいな。」
「…はい、そうですけど。『夜の一族』の蛍火…いや南明義さん。」
「貴様…一体何者だ。何故俺の本名を知っている?」
蛍火は自分の前にいる女性が自分の本名を知っていることに驚きを隠せずにいた。
「私達の情報網はそれだけ優れていると言うだけですわ。それに私は……いや、止めておきましょう。私は貴方に構っているほど暇ではありませんから。」
エリクシアはそう言うと殺気を消して立ち去ろうとするが、その時だった。
ひくうしょう
「なめるな、このアマ!!飛空翔!!」
蛍火はエリクシアの態度にキレて、所持していたダイナマイト数本を自分の近くで爆発させる。そして、その爆風を利用して飛んだ。
「ダイナマイトを爆破することによって発生する爆風を利用して空を飛ぶとは考えましたね。」
ダイナマイトの爆発によるダメージを寸前で避けたエリクシアは感心したように言う。だが、その時だった。
ひくうえんは
「アホ、それだけじゃねえぞ。ここからがメインだ。飛空炎破!!」
蛍火は上空から手榴弾の雨を降らせる。
「くっ!!こんなにですか!?ならば…防ぐしかありませんね。リストレス行きますよ。」
「Ok. protection」
エリクシアは手榴弾を手に持っていた槍 リストレスを防御形態にして打ち払う。それによって全ての手榴弾を打ち払うことに成功するが…
ひくうばくは
「そうきたか…。それなら次はこうするまでだ。飛空爆破!!」
蛍火はナパーム弾を学園に投下した。
「くっ…ナパーム弾は焼夷弾の1つ。急がないと…。」
エリクシアはナパーム弾を止める為に命中する位置…学園の屋上へと走るが……遅かった。
ボオオオオオオオッ!!
ナパーム弾により学園の建物はすぐに火の海となり、校門も炎で通行不可能になった。
「ハハッ!!あの女本物のバカだぜ!!こんな学園放っておいても俺達の情報操作で何とでもなるからどうでもいいのによお。」
蛍火は上空で高笑いする。だが、その時だった。
ズカン!!
「ぐはあああっ!!」
学園の屋上から何かが飛んできて蛍火の脇腹に突き刺さる。よく見るとそれはエリクシアのリストレスだった。
「な、何故こんなものが…。」
蛍火は学園の屋上に不時着する。だが、ついさっきまで火の海であった屋上が元に戻っていた。
「なっ…いつの間に。さっきまで火の海だった筈なのに。」
蛍火はもう何が何なのか分からなくなっていた。そして…
「さっき投げたリストレス…ちゃんと返して下さいね。」
蛍火の後ろに立っていたエリクシアはそう言って蛍火の身体に刺さっていたリストレスを掴む。そして…
デリート
「消えなさい。己の魂を悪魔に売った愚者よ!!消去!!」
「Ok. Delete start.」
「ぐ……ぐわあああっ!!この俺が相沢ではなくこ…こんなメイドに。まだ左腕の復讐も果たしていないのに。さ、里村さん……。」
蛍火は断末魔の声をあげてその存在を完全に消去された。
Tear...
Story.33 KEEP OUT CAUTION
PM6:35 海鳴市 風芽丘学園屋上
蛍火との戦いが終わってから数分後…
「来ましたね…。」
エリクシアは誰もいない筈の階段から聞こえる足音を聞いて呟く。そして…
「様子が気になって仕事を早めに終わらせて来たが…その必要はなかったようだな。エリクシア・ラザフィーヌ。」
屋上の入口からサングラスをかけた黒色の長い髪の女性…長瀬弥生が現れた。
「あっ、弥生さんどうもです。フランシアと一緒に行動していたのですが、途中で別れちゃって……それで連絡をとった後に『夜の一族』の蛍火…南さんに見つかってしまって、ついさっきまで戦っていました。」
エリクシアは笑顔で言う。
「そうか。でも、その調子だと又『消去』したんだな?」
「ええ、まあ。」
エリクシアは笑顔の表情を変えずに言う。だが…
「だが、桐花…あの“成り上がり”はどうした?今日の会議にも出ていなかったが。」
弥生のその質問で話は変わる。
「桐花は……祐一さんのガードについています。」
エリクシアは少し悲しげな顔で答えた。
「やはりな。だが、七瀬が何故あのボーヤに“成り上がり”を付けたのかが気になるな。」
エリクシアは弥生のその台詞でハッとなる。
「ええ、そうですわね。七瀬さんが祐一さんの肩を持つのは分かりますが…。」
「ここまできてまだボーヤに“成り上がり”を付けるのかが分からない。力ずくで我々の仲間にすればいいものなのに。」
弥生はそう言って考える。そして…
「そうか…そういうことか。」
弥生は答えが分かったのかハトのように笑う。
「弥生さん、どういう事ですか?」
まだ答えが分からないエリクシアは弥生に尋ねる。
「まだ、分からないのかお前は。じゃあ、ヒントを言うからそこから考えろ。ヒントは…氷村遊。」
「……!!そんな馬鹿な。氷村遊は…華音市の『ゲーム』で桐花に殺された筈では…。」
エリクシアはそう言って驚愕する。
「だが、この後先を考えない奴を送ってくるやり方は…氷村遊の戦法だ。だから、奴はまだ死んでいない。」
弥生は悟ったように言う。
「じゃ…じゃあ目的は。」
「恐らく、ボーヤと“成り上がり”を殺す事だろう。華音市の『ゲーム』であの二人に惨敗したからその復讐を考えていると思った方がいいわね。」
「……。」
エリクシアは弥生のその言葉に何も言えなくなる。
「まあ、あの“成り上がり”はともかくとしてあのボーヤに死なれたら困るな。私もあのボーヤは仲間になって欲しいからね。」
「弥生さん!!言って良い事と悪い事がありますわよ!!」
エリクシアは弥生のその言葉に怒る。
「…本当の事だろうが。それよりも行くぞ!!我々もこの街から脱出しないとな。何かテレビ局の方でも何か起こっているようだし。」
「くっ…そうでしたわね。では、この街から出ますわよ。リストレスお願いします!!」
「Ok. Type scythe .」
エリクシアがそう言うとリストレスが槍から大鎌に変わる。そして「消去」の能力を発動して空間を斬ってそのまま海鳴市から脱出した。
同時刻 海鳴市 翠屋前
「ここか…。」
フランシアは翠屋の看板を見て呟く。そして…アスファルトの道路に剣を突き刺す。
テリトリー
『領域!!』
すると…翠屋では恭也がいきなり姿を消したので忍達が騒ぐ。
「ふふっ…驚いてる。驚いてる。でも、本当の恐怖は…まだこんなもんじゃないわよ。」
フランシアはそう言うと自分も「領域」の中に入る。
「ここは…?」
恭也は自分以外は誰もいない翠屋に驚く。
「一体どうなっているんだ?ついさっきまで忍も母さんもいたのに。」
恭也は心を静めて考えるが答えは出ない。だが、その時だった。
ザシュン!!
両手に剣を持ったベレー帽を被った金髪の少女が恭也を目掛けて襲い掛かってきた。
「ちいっ!!」
恭也はその斬撃を避わすが、彼の座っていた翠屋のカウンターは破壊された。そして…
「へえ、少しはやるじゃん。流石はユウと互角に戦った男ね。」
少女はそう言って笑う。それに対して恭也は…
「此処は一体何処だ?貴女は一体誰だ?みんなはどうした?何故俺を狙う?」
いっぺんに質問した。それに対してフランシアは…
「此処は私の『領域』。そして、私の名はフランシア・ガーネット。ユウや白河って娘と同じ『呪われた子供』で所属は反『夜の一族』組織である『Sanctuary』。そして、貴方以外の人達は元の場所にいるわよ。そして、貴方を攻撃したのは貴方が月村忍の恋人であり婚約者だから。あっ、ちなみに『領域』は私が解く以外には私を殺すか気絶させれば自動的に解除されるから安心しなさい。」
剣を交えながら恭也の質問に一つずつ答えた。
「フランシア・ガーネットって……確かフィアッセが一目置いていた天才バイオリニストで五年前の飛行機事故で死んだ筈の…。でも、何で貴女が『Sanctuary』に…。ノエルとイレインを傷付けた組織なんかに…。」
「そう。そのフランシア・ガーネットよ。私の名を知っているとは光栄だわ。それに何で『Sanctuary』に入ったかは…聞く必要はないと思うけど。」
フランシアはそう言うとクスッと笑う。そして…
ザシュン!!
自分の周りに張ってあった恭也の零番鋼糸を断ち切る。
「くっ、気付かれたか。」
「当然よ。こっちは貴方のデータも入手済みだからね。」
「くっ!!こうなったら…あまり女性には使いたくないけど仕方が無い。」
恭也はそう言うと翠屋の外に出る。
しんそく
「済まないが貴女にはここで気を失ってもらう。小太刀二刀 御神流奥義ノ歩法 『神速』!!」
恭也は『神速』でフランシアの背後を取る。フランシアはそれに気付くが…焦った様子は無かった。
こらん
「これで終わりだ。小太刀二刀 御神流奥義之弐 『虎乱』!!」
零距離で暴れるような連撃がフランシアに襲い掛かる。だが…
「甘いわよ。」
「何っ!?」
フランシアは暴れ狂った連撃を自らの双剣で全て捌く。恭也はそれに驚いたのかフランシアから離れた。そして…
こせつ
「くっ。ならば小太刀二刀 御神流奥義之壱 『虎切』!!」
一刀での高速・長射程の抜刀術でフランシアを攻撃する。だが…
「ユウのに比べると全然遅い!!」
フランシアは双剣の一本で恭也の『虎切』を打ち払った。
(くっ…『虎切』も『虎乱』もダメか。ならば…俺が一番信頼する御神のあの技でいくしかない!!そして、峰打ちではなく本気で…。)
恭也はそう考えると構える。そして…
なぎつむじ
「今度こそ倒します。小太刀二刀 御神流奥義之六 『薙旋』!!」
フランシアはそれを見て避けようとせずにやりと笑う。そして、そのまま防御も回避もせずに四連撃を全て喰らった。
「がはあああっ!!」
フランシアは血を吐いて倒れるその時だった。
ブスリ!!
フランシアが倒れるその瞬間、フランシアの剣が恭也の右膝(完治していない古傷のある方の膝)を突き刺したのだ。
「ぐっ……ぐううううっ!!」
恭也の右膝からは血がダクダクと出てくる。そして…
「アンタの技結構すごかったけど…技を出した後に数秒無防備になるのが命取りになったわね。」
フランシアはそう言って立ち上がる。だが、恭也の『薙旋』で血を流し過ぎたせいかいつ倒れてもおかしくないほどフラフラの状態だった。
「くっ…だが、貴女もそんな状態ではもう戦えない筈だ。」
恭也はそう言ってフランシアが負けを認める事を期待したが…
「別にいいわよ。目的は果たしたと言うよりも、もうアンタと戦う理由は無くなったから。」
「何っ!?どういうことだ。」
彼女のその言葉に驚きを隠せなかった。
「だってもう貴方は私達の同類だからね。」
「えっ!?」
恭也はフランシアのその言葉に驚愕する。
「アンタの右膝を刺してその傷口に私の血を流し込む事によってアンタを私達と同じ『呪われた子供』に変えたのよ。」
「そんな非現実な…。」
「嘘だと思うのなら古傷のある右膝を見たら?」
恭也は言われた通り古傷のある方の膝を見る。
「……なっ、右膝の傷の痛みを感じない?」
そう、右膝の傷が癒えているせいなのか痛みを感じないのだ。まだ出血はあるが、すぐに血が止まる所まで回復していた。
「ふふっ…。どうこれが動かぬ証拠よ。でも、良かったじゃない。これで『夜の一族』から貞操は守られたのだから。」
フランシアはそう微笑むと深い傷を負ったのにも関わらず去っていった。そして、それと同時に『領域』は解除され、恭也は現実世界へと戻った。
「くっ、これで俺も風音と同じってわけか。くそっ!!くそおおおおおおっ!!」
恭也は現実世界に戻ったと同時に月に向かって叫んだ。
そして、幸か不幸か気が付くと右膝の古傷は完治していた。
PM6:40 海鳴市 海鳴放送局前
「これは一体…。」
海鳴放送局の前を通りかかったところで其処にいたわかば以外の全ての人間の顔や身体がグズグズに崩れ悪鬼の如く変化したのだ。そして…
「えっ…。」
バキッ!!
悪鬼のような姿に変化した人間の一人がいきなりわかばに攻撃を仕掛けてきた。わかばはそれを間一髪で避けるが…わかばの後ろに立っていた「止まれ」の交通標識の柄が一撃でへし折られた。
「すごい攻撃力ですわ。」
わかばがそう呟いた瞬間……悪鬼のような姿に変化した人間達は一斉に攻撃を仕掛けてきた。
「くっ…。」
わかばは恐怖のあまり動けなくなる。だが、その時だった。
(……この人達の動きが分かる?)
わかばは悪鬼のような姿に変化した人間達の動きを全て見切り、避けた。
「今のは…?」
わかばは自分のやった事が信じられず驚く。
そして、わかばの後ろにいた悪鬼のような姿に変化した人間が奇襲を仕掛けるが…
「甘いですわ。」
わかばはそれすらも読み、当たる寸前のところでジャンプした。
ドガッ!!
そして、その攻撃はもう一人の悪鬼のような姿に変化した人間に当たり同士討ちとなる。
「成る程。そういう事ですか。思った通り、この人達…先読みをやらないで殺戮本能だけで動いていますわ。ならば…。」
わかばは悪鬼のような姿に変化した人間達の動きを読み切ってその位置や攻撃力を巧みに利用し、自分の動きを決定する事にした。すると…
ドガッ!!ドゴッ!!ドガッ!!
わかばへの攻撃は全て同士討ちとなり、悪鬼のような姿に変化した人間達は全滅した。
「これで、もういませんわね。ですが…この人達は何でいきなり。」
わかばはそう呟くが、すぐに我に還る。
「…今はそれどころではありませんわね。早く望ちゃん達と合流しなくては…。」
そう言うとその場を走り去る。
PM6:43 海鳴市 海鳴放送局屋上
「ちっ…。ミッシングリンクウイルスの感染者達も全然役に立たねえな。」
遊は屋上から外の戦いを見て呟く。その時、遊の携帯電話からメールが一通来た。
「んっ、何だ?チッ。南が『Sanctuary』にやられたか。使えねえ駒だな。」
遊はメールを見て舌打ちする。
「だが、ミッシングリンクウイルスの感染者達を同士討ちにして倒すとは…あの小娘思わぬ伏兵だな。それに、あの戦い方は…鳴風琴葉の戦い方にそっくりだったな。」
その時だった。
「……遊調子はどうだい?」
「黒葉か…。」
遊が後ろを振り向くと其処には…黒葉もとい久瀬が立っていた。
「調子か…。この放送局の周辺にミッシングリンクウイルスに感染した犬を放って藤宮わかばを襲ったが、逃げられたよ。」
「へえ…そうですか?」
久瀬はあははと破顔する。
「笑い事じゃないだろ。月村コーポレーションの軍事開発部門が巨額の金を費やして発見したミッシングリンクウイルスに感染した者達があんな戦闘向きでない能力者の小娘一人に負けたんたぞ。」
遊はそう言うと久瀬の胸倉を掴む。
「遊…落ち着いて下さいよ。それもある意味当然ですよ。何せああなる…キャリア化出来ずにウイルスと共存出来なかったものは最後に聞いて理解した誰かの声にしか従わない凶暴で凶悪な戦闘兵器と化してしまうのですから。」
「ちっ!!」
遊は久瀬の言葉に舌打ちして手を放す。そして…
「そんな遊の為に良いものを持ってきましたよ。」
久瀬はそう言うと遊にDVDを渡す。
「何だこのDVDは?」
「今は何も言えませんが…このDVDの内容を7時のニュースの時間に流して下さい。」
「……。」
遊はそれに対して何も言わない。だが、その時だった。
「貴方…今度失敗したら確実に『夜の一族』を追放されますよ。1ヶ月前の『ゲーム』であの2人に敗北して逃げ帰った時は月村コーポレーションへの左遷だけで済みましたが…。」
久瀬のその言葉を聞いて遊は…。
「分かった。お前の口車に乗ってやるよ。だが、一つ条件がある。」
「何ですか?」
「相沢のガキと雨流の小娘は絶対に殺らせろ。あいつ等だけは…絶対に殺さんと気が済まん。」
遊のその言葉に久瀬は何も言えなくなるが暫くして…
「…良いでしょう。遠慮なく殺っちゃって下さい。」
そう言うと飛び降りた。
「お帰りなさいませ。」
久瀬が放送局の前に着地すると物静かな雰囲気の少女がいて、久瀬に頭を下げる。
「ああ、ただいま。天野さん。」
久瀬は表情を変えずに返事をした。
「黒葉様、あれで良かったのですか?無能な氷村よりも貴方様が戦えば事は簡単に…。」
「……そうですけど、あまり彼等をなめない方がいいですよ。」
「えっ…それはどういう事ですか?」
「特に彼…相沢君は何をしでかすか分からないからね。その証拠にほら…。」
久瀬はそう言うといつも着けている手袋を取って手を美汐に見せる。手にくっきりと傷跡があった。
「…!!これは…?」
「あの日…相沢君の記憶を奪ったあの夜に彼に付けられた傷ですよ。影人の『影呪縛』で動きを封じて攻撃をしたのですが、その時に反撃されました。」
久瀬はそう言うとククッと笑う。
そして…美汐は、
(確かに危険ですね。そんな状態で黒葉様に一撃を与えるとは…。)
久瀬の言葉に納得した。
PM6:52 海鳴市 繁華街
「くっ、ここもですか。」
風音は繁華街のオーロラビジョンの前で舌打ちする。そして…
「いたぞ。あいつ等だ。」
『夜の一族』の黒服の一人が風音達を見つけたので仲間を呼ぶ。だが…
「させません。」
ドガッ!!
望の蹴りによりその黒服は気絶した。だが…
「…すみません。どうやらバレちゃったようです。」
「えっ?」
望のその言葉にフィリスは状況を確認する為に辺りを見回す。すると…望の蹴りの音が聞こえた所為か繁華街は『夜の一族』の黒服達でいっぱいだった。
「確かに…又囲まれましたね。」
「そうですね。」
フィリスとことりはそう言って望を睨みつける。だが、その時だった。
「お前等、いい加減今の状況を理解しろ!!と言うか俺達を無視すんな〜!!」
黒服達は一斉に風音達に攻撃を仕掛けてきた。
「もう、こうなったら戦うしかありませんね。行きますよ。」
「はい。」
「了解です。」
「わかばと合流しなきゃいけないしね。」
こうして事態は乱戦状態となった。
そして八分後…
「これで終わりです。」
バキッ!!
「ぐはああああっ!!」
この乱戦で立っているのは風音、ことり、望、フィリスの4人だけだった。黒服達は同士討ちや自滅行為で足を引っ張り合ったせいか全滅した。そして…
「よし、これで『夜の一族』の黒服は全て倒した。後は…。」
風音がそう呟いたその時だった。
『臨時ニュースです。昨日の夕方に矢後市の矢後サイドビル水族館が突然倒壊しそこに勤務していた従業員及び多数の観光客が死亡しました。』
「「!!」」
風音とことりはオーロラビジョンから聞こえるニュースに驚き足を止めた。
『警察は防犯カメラの映像と関係者の証言によりこの事件をテロとし、容疑者を特定―――』
オーロラビジョンに映る女子アナがそう言うと画面は防犯カメラの映像に変わる。其処には…風音とことりが映っていた。そして…
『このテロの実行犯とみられる17歳の少年1名と17歳の少女3名の計4名を全国に指名手配するとの発表を行いました!!』
「「「「!!」」」」
風音達は驚きの余り何も言えなくなる。
「新堂凪の『四龍伝』じゃあるまいし…こんな事。」
最初に口を開いたのは望だったが…ショックがまだ抜けていないようだった。
「何もこんな時に…。」
「ここまでやりますか普通…。」
「いえ、やるでしょう。何せ日本の支配者は『夜の一族』ですから…。」
望に続いてフィリス、ことり、風音が口を開く。
そして…気が付くと繁華街周辺は「KEEP OUT CAUTION」と書かれた黄色い帯で封鎖され、空も警視庁のヘリ2台が飛び、ビルの屋上も機動隊の狙撃斑に包囲されていた。
この現状を見て風音は…
むこう
「……どうやら『夜の一族』も本気のようですね。」
と静かに呟いた。
to be continued . . . . . . .
あとがき
菩提樹「どうも大学の卒業式まであと9時間の菩提樹です。又、更新が遅くなりました。さて、今回のゲストは…。」
真雪「仁村真雪だけど。今回の話は…某出版社のファンタジー小説みたいな話だな。」
菩提樹「はい。でも、このネタは最初からやろうと思っていました。」
真雪「そうか。でも、普通はここまでやらんだろ。」
菩提樹「…そうですね。」
真雪「ところで…『Sanctuary』のエリクシアは巨乳だそうだが一体どれくらい大きいんだ?」
菩提樹「98センチです。十六夜さんと同じ大きさです。ちなみに桐花さんのバストは91センチです。貴女は彼女を胸を揉んだ事があるから分かると思いますが…。」
真雪「ああ…その後アゴにアッパーを入れられて2日間生死の境を彷徨ったがな…。」
菩提樹「合掌。」
真雪「それだけかよ!!(怒)」
菩提樹「はい、自業自得です。それでは、次回も応援よろしくお願いします。もうじき就職ですのでいつ書けるのか分かりませんが…。次回は彩と桐花が活躍します。」
真雪「私を無視するな〜!!(怒)」