3月29日―――PM6:08 海鳴市 海鳴大学病院 診察室
薫はフィリスに二見姉妹のレントゲン写真を渡した後、彼女に自分が今までに調べた事を全てを話した。
そして…。
「…成る程。風音さん…いや祐一さんが何故神楽坂で倒れていたのかは分かりましたが…驚きですね。彼も恭也さんや美由希さんと同様御神の一族だったとは…。それにフィアッセだけでなく佐伯さんとも知り合いだったとは…。」
薫の話が終わった後にフィリスは納得しながらも驚く。だが…その時だった。
「フィリス…どうした?」
「いや、大した事では無いのですが…彼に渡した眼鏡が壊れたので…。」
「それが何か問題なの!?」
薫は素っ気なく質問した。
「私が風音さんにあげた眼鏡は只の眼鏡じゃないんです。あれは…能力抑制装置なんです。」
「どうしてそんな物を?」
「風音さん自身が記憶を奪われた人間だからです。今の風音さんは過去の私やリスティのように自分の能力を上手くコントロール出来ない状態なんです。それだと、最悪命を落とす可能性もあります。だから、彼に眼鏡型の能力抑制装置を渡したんです。」
「成る程な。でも、フィリスは何故眼鏡が壊れたと分かったとか?」
「少し細工をしましてね…眼鏡が壊れたら分かるようにしたんですよ。」
フィリスはそう言うと自分のカップに口をつける。だが…
「でも…それで祐一くんは大丈夫なの?」
薫は冷静では無かった。
「分かりません。でも…きっと大丈夫ですよ。風音さんは…私やリスティよりも心が強い人ですから。」
フィリスは笑顔で答えた。
Tear...
Story.28 妖狐との戦い(後編)
PM6:09 矢後市 矢後サイドビル水族館 司令室
風音が妖狐と化した真琴に倒されてから数分後…
「次は貴様達じゃ。」
真琴はそう言うと真魚に襲い掛かる。
だが…
「美魚…お願い。」
あまきり
「うん…分かってるよ。雨霧!!」
真魚は真琴の動きを読んでいたのか美魚に指示を送って能力で霧を作らせて真琴の視界を遮ろうとする。だが…
こばくえんだん
「甘いわ。狐爆炎弾!!」
真琴には通じずに巨大な炎弾で反撃される。だが…
「美魚…あの技で相殺して。」
ひょうへき
「うん…氷壁!!」
美魚はそれに対抗して雨水から氷の壁を作って真琴の攻撃を相殺する。
しかし…真琴の狙いは別だった。そして…
ばくえんべん
「甘いな。本当の狙いは…奴じゃ!!爆炎鞭!!」
真琴はそう言って触れると爆発する炎の鞭で壁に激突して動けなくなっていた風音に止めを刺そうとする。だが…
かげんのつき
「させない!!姫神流「守」の章五の曲 下弦之月!!」
真琴の攻撃の瞬間に風音の前に月型の盾が下から出現して真琴の攻撃を相殺した。
「チッ!!邪魔をしおって。」
「それだけではありませんよ。」
「何っ!?いつの間に後ろに?」
真琴はそう言って後ろを見る。其処には…自分に一番遠い距離にいた筈のことりがいた。
からん
「遅いです。姫神流「攻」の章七の曲 花嵐!!」
「ぎゃあああああっ!!」
真琴はことりの嵐のような連撃を回避しようとしたが間に合わず、非常口を通して外まで吹っ飛ばされた。
「よしこれで暫くは動けないと思う。今のうちに風音くんを…。」
ことりはそう言って風音の元に行こうとする。だが、その時だった。
「そうはさせん!!」
外から真琴の声が聞こえてきた。そして…
「順番変更になるが…まあいい。まずはお前達から殺してやる!!」
真琴はそう言うと手を上に向かって上げる。そして…
「来てもらうぞ!!わらわのいる場所に…。」
「「「えっ?」」」
その瞬間…
ヒュン!!ヒュン!!ヒュン!!
ことりと二見姉妹は外に転送された。
「やっと着いたけど…外に移ったようですね。」
ことり達が真琴によって外に転送されてから10数秒後、桐花はやっと風音のいる司令室に到着した。
「でも今は…彼を何とかするのが先ですね。」
桐花はそう言って自分の前に倒れていた風音をじっと見る。
「相沢君…お久し振りです。そして、ただいま。…本当はもう二度と貴方の前に姿を表すつもりはありませんでしたが…許して下さい。」
桐花はそう言うと自分の顔を風音の顔に近づける。そして…
「んっ…。」
そのまま唇を重ねた。
…ここは何処なんだろう。
分からない。水族館ではないという事は確かだが…。
だが、その時だった。
「おい…起きろ!!」
パチン!!
誰かが僕の頭を思いっきり叩いたようだ。痛い。
僕は痛みで目を覚ます。其処には…
「き…恭也さん。」
恭也さん…いや正確に言えば恭也さんに似た人が立っていた。
「やっと起きたか。ったく呑気だな。」
「あ…貴方は…?恭也さんに似てますけど。」
「俺か。俺は不破士郎。お前と闘った高町恭也の父親だ。」
士郎さんと言う人はそう言って明るく自己紹介をする。
「あっ…どうもはじめまして。僕の名前は…。」
僕が自分の名前を名乗ろうとしたその時だった。
「おいおい、過去に会った事のある人間にはじめましてはないだろう。」
「えっ?」
僕は士郎さんのその言葉に首をかしげる。
「…あっ、すまん。記憶が戻ってないんだったな。」
「はい…。舞さんの事と後里村さんのことはさっき思い出しましたが…。」
「そうか…。じゃあ俺の事も知らないんだな。」
「はい…。」
僕はそう言って少し暗い顔になった。
「まあ、この事は置いとくとして…お前何で本気で戦わない?」
「えっ?僕はいつも全力全開で戦ってますけど…。」
「いや、やってない。最初の『龍』の戦いの時からずっと見てきたが相手を極力傷付けないように加減して戦っている。恭也との戦いの時は特にだ。」
「……。」
痛い指摘だ。まさにその通りだから。
「…でもお前はそれでいいかもな。」
「えっ…。それはどういう事ですか?」
「お前の戦い方は傍から見れば『甘い戦い方』だが、怒りや驕りや憎悪と言った『負の感情』が無い。」
「でも、今の戦い方では問題があるのでは…。」
「確かに『優しさ』は弱さだ。だが、時として『優しさ』は強さにもなる。」
「はい…。」
「俺のレクチャーはこれで終わりだ。行け!!俺の血を持つお前なら沢渡如き何とかできる筈だ。」
「はい、では行ってきます。望さんに約束しましたから。必ず勝って…生きて帰ると。」
「ああ、勝てよ。そして…あいつを止めてくれ。」
士郎さんはそう言うと姿を消した。そして、僕の夢はそこで終わった。でも、どういう意味なんだろう。『俺の血を持つお前なら』と『あいつを止めてくれ』という言葉は…。
「んっ…。」
僕は目を覚ますが…唇の感触に気付く。銀髪の女性がキスをしていた。銀髪というところはフィリスさんと同じだが、何か感じが違う。
「あっ、おはようございます。神楽風音君。」
銀髪の女性はそう言うと唇を離す。
「あのう…どうしてこんな事に…。」
「貴方がなかなか目を覚まさないからキスしただけですけど…。」
「いや…だからどうしてキスなんか…。」
「それは…戦いが終わったら教えます。では、行きますよ。貴方の仲間が苦戦していると思いますしね…。」
彼女はそう言うと僕の腕を掴んで引っ張った。
「あのう、貴女は何者なのですか?僕の事を知っているようですが。」
「それに関しても戦いが終わったら教えてあげます。でも、私の名前は…雨流桐花と言います。」
銀髪の女性…雨流桐花さんはそう言って自己紹介した。でも、この人の姿は…何故だか知らないけど懐かしさを感じる。美魚さんを始めて見た時も何故か懐かしさを感じたが…それとは違った懐かしさだ。
「…では行って下さい。さっきの戦いでこの建物ももうそんなに持たないと思いますから。」
「はっ、はい。って、貴女は…。」
「私はまだやるべき事があるのでここに残ります。」
「そうですか。でも、危なくなったら脱出してくださいよ。」
「はい、ご忠告どうもです。」
会話した後に僕は非常口から外に出た。
PM6:14 矢後市 矢後サイドビル水族館 中庭
その頃ことり達は…
「…お前一人だけならこうはならなかっただろうな。」
最初は互角に戦いをしていたが、徐々に追い込まれて劣勢に立たされた。
「そうですね。でも、まだ分かりませんよ。」
ことりはそう言ってくすっと笑うが自分達の方が劣勢である事は隠せなかった。
「くっ…すみません。私が足を引っ張って…。」
「私も…まだ未熟だから。」
真魚と美魚はそう言って謝る。
「…謝らないで下さい。まだ、負けと決まってはいませんから。」
そんな二人はことりは笑顔で答えた。
「フン、美しい友情だな。だが、それもここまでじゃ。」
真琴はそう言うと右手に意識を集中させる。すると無数の炎の輪が現れる。
こえんりん みだれ
「終わりじゃ…狐炎輪・乱!!」
真琴がそう言うと無数の炎の輪が美魚達を襲う。
「み、美魚…氷壁で防いで。」
真魚はそう言って美魚に指示を出すが…
「美魚!?」
真魚がそう言って後ろを振り向くと…美魚がぐったりと倒れていた。
「ど…どうしよう。このままじゃ…。」
真魚が悩んでいたその時だった。
「真魚さん…右!!」
「えっ?」
ことりの言葉に反応して右に振り向くとそこには…炎の輪が迫っていた。
「くっ…。」
真魚はかろうじて炎の輪を避ける。
だが…
「チェック・メイトじゃ…。」
「しまった!!逃げ場がない…。」
その瞬間、炎の輪が真魚を襲う。
「これで一丁上がり…。」
真琴はそう言ってフッと笑うが…煙が晴れたその瞬間驚愕する。
「何っ!?いないだと…。」
そう。そこにはさっきまではそこに真魚がいた筈なのに、今は誰もいなかった。そして…
いぬき
「御神流奥義之参 『射抜』!!」
いきなりの高速の突きにより真琴は右腕を負傷する。
「ぐっ…右腕が…。もう回復したか。」
真琴は『射抜』で負傷した右腕を抑えながら前を見る。そこには…風音と気を失っている真魚がいた。
「ええ。いつまでも寝てる訳にはいきませんから。」
風音はそう言うと構える。
「やっとやる気になったようだな。」
真琴はそう言って笑う。
「ええ、貴女は何としてでも止めなければいけない人ですから。僕の手で。」
こうして2人の戦いが再開された。
それから数秒後…
「行くぞ…。狐爆炎弾!!」
真琴は巨大な炎弾を作り出して風音に向けて放つ。
「甘い。」
風音はそう言うと真琴の炎弾を難なく避ける。だが…
「甘いのはお前じゃ!!狐炎輪・乱!!」
再び無数の炎の輪を作って攻撃する。
「そんな手は通用しませんよ。御神流奥義之弐 『虎乱』!!」
『虎乱』で炎の輪を全て破壊した。
「くっ、何故だ。さっきとは全然違うではないか!!」
「いいえ、僕は全然変わっていませんよ。強いて言うのなら貴女が『怒り』のあまり見えていないものがあるだけです。」
「何っ?」
「『悲しみ』があるからこそ見えるものがある。心を鎮め 悲しみを湛えた深い泉に広がる波紋が…貴女の次の動きを教えてくれる。」
風音はそう言うと「神速」を使って真琴の近くにまで走る。
「くっ…なめるな。狐炎爪!!」
真琴は炎の爪で風音を薙ぎ払おうとするが避けられる。
「しっ…しまった。」
いぬき つい
「これで終わりです。御神流奥義之参『射抜・追』!!」
風音は時雨で真琴の腹を突き刺し、風時で真琴の左腕を破壊してそのまま薙ぎ払う。
「がはあああっ!!」
真琴は血を吐きそのまま倒れた。
同時刻 海鳴市 ???
「…どうやら沢渡真琴が敗れたようですね。」
誰もいない洋館で久瀬もとい黒葉はそう言うと溜め息をつく。
「はあ…『呪われた子供』を誰一人殺せずの敗北ですか。こうなるとは最初から分かっていましたが情けない…。」
だが、そう言うと顔を元に戻す。
「まあ、いいでしょう。沢渡真琴など捨て駒にすぎませんから。何せ七人…いや月宮あゆを除く六人の中で一番最弱ですから。」
そう言って携帯電話を取り出して電話をかける。
「さて、次は水瀬名雪…君の出番ですよ。」
黒葉はそう言うとクククッと笑った。
PM6:15 矢後市 矢後サイドビル水族館 中庭
風音と真琴の戦いが終わってから1分が経過した。
「戻れ…汝の在るべき姿に…。『再来』!!」
風音は『再来』を使って真琴の姿を妖狐から人間に戻した。真琴は今までのダメージの所為か眠っている。
「ふう。もしもの時の為に能力を節約しておいて良かったです。」
そう言って一息ついたその時だった。
ぎゅっ!!
ことりが風音に抱きついたのだ。
「ちょ…ことりさん。」
「し…心配したんですよ。でも、本当に良かった…無事で。」
そう言って泣いた。風音の腕の中で。
「す、すみません。」
そんなことりを見て風音は慌てて謝る。
「駄目です、許しません。」
「やっぱりですか?」
「はい。私達のいない間に雨流さんとキスまでしましたし。」
「な…何でその事を?」
「あっ……。」
ことりは自分のミスに気付いた。
「もしかして…ことりさんも他人の心を読む事が出来るのでは…。」
「はい…。って私と同じ能力を持った人っているのですか?」
「ええ。フィリスさんがそうですし。」
「全然気が付きませんでした。でも、風音くんこの事は…。」
「分かってます。みんなには秘密にしておきますよ。その代わりですが…心配かけた事許して下さい。」
「う、うん。いいっすよ。でも、それでいいんですか?」
「ええ、いいです。」
風音はそう言って笑顔になる。
「……。」
「どうかしました?」
「いえ…。眼鏡外した時の顔もカッコ良かったので少しみとれてました。」
「別にカッコよくありませんよ。」
「……(鈍感ですね。)」
だが、その時だった。
「へえ、真琴を倒したんだ。貴方達なかなかやるね。」
「「えっ…?」」
風音とことりは声に反応して振り向く。そこには…水族館の屋根には美魚に似た青い髪の少女が立っていた。
「あ…あなたは…。」
ことりは青い髪の少女に問いかける。
「私…?私は水瀬名雪って言うんだよ。」
「貴女も『夜の一族』ですか?」
「うん、そうだよ。でもね、安心しなよ。戦いに来たわけじゃないから。ただ…。」
「…ま、まさか。」
「貴方達に負けた捨て駒を処理しに来ただけだお。」
名雪はそう言うと屋根から下りて着地する。そして…
せつろうが
「折角だから貴方達に見せてあげるよ。私達の真の力を…噛み砕け!!雪狼牙!!」
名雪はそう言うと雪でできた狼を召還して真琴を攻撃した。
「あ…あぅ。」
雪の狼は真琴に致命傷を負わせるとそのまま消えた。
「どう。これが私達の真の力だお。すごいでしょ。」
名雪はそう言ってクスクスと笑う。
「あ…あなたは…。」
ことりは名雪のした事が許せず掴みかかろうとしたその時だった。
パン!!
ことりと名雪の間に桐花が割って入りことりの頬を叩いた。
「ちょ…どうして止めるのですか?」
「何相手の挑発に乗ったのですか。貴女らしくもない。」
桐花はそう言うと思いっきり名雪を睨み付ける。
その桐花を見て風音もことりも何も言う事が出来なかった。風音もことりも分かったからだ。この二人には何か因縁があると…。
それから硬直状態のまま5分が経過した。そして、やっと止まっていた時間が動いた。
「久し振りだね。副部長の桐花ちゃん。」
「ええ、こちらこそお久し振りです。水瀬部長。」
お互いに皮肉をこめてあいさつをする。そして…
「相変わらず…我が儘し放題ですね。」
桐花はそう言うとベレッタM92Fの銃口を名雪に向ける。
「貴女のような泥棒猫に言われたくないんだお!!」
名雪もそう言って構える。
「全然自覚していませんね。そんな風だから相沢君は貴女を好きにならなかったのですよ。」
「それは貴女の所為でしょ。貴女さえ最初からいなければ祐一は私のものになっていたんだお!!」
「私の所為にしないでください。事あるごとに自分の好物をたかるからふられるんですよ。振られたのは自業自得です。」
「そんな事ないんだお!!と言うか人殺しにだけは説教されたくないんだお!!」
だが、その時だった。
ピリリリリリリリリリリ!!
突然名雪の携帯電話が鳴り出した。
「チッ、帰還命令だお!!」
そう言うと名雪はパチンと指を鳴らして水族館を倒壊させる。
「証拠隠滅も終わったし、今日はここで引き下がってあげるよ。」
名雪がそう言って帰ろうとしたその時だった。
「水瀬部長いや名雪…この借りはきっと返します。」
「…それはこっちの台詞だお。『ゲーム』で私を殺してくれた恨み1億倍にして貴女に返してやるんだお〜!!」
名雪はそう言うとそのまま消えた。
PM6:25 矢後市 矢後サイドビル水族館 中庭
名雪が去ってから5分が経過した。だが…。
「くそっ…。どうして…どうして…止まらないんですか?」
風音は真琴の血を止めようとするが血が流れるばかりで止まらない。
「確かに…出血が酷いです。でも、どうして…能力が効かないの?」
そう。最初二人は能力を使って真琴を助けようとしたが、無駄だった。
「何とかならないんですか…。」
風音がそう言ったその時だった。
「あぅ…ゆう…いち。どこ…?」
真琴が弱々しく口を開いた。
「ゆう…いち…。そこにいるんだよね?へんじしてよ…。」
真琴はそう言って左手で風音の手を掴んだ。
「やっぱり…おこってるよね。いままで…いっぱいめいわくかけたから。」
「……。」
「いままで…ごめんね。かんちがいして…いっぱいめいわくかけて…いっぱいわがままいって…。」
真琴はそう言うと今度は右手で風音の頬に触れる。
「…ないてるの。まことのために…。」
そう。風音は泣いていた。自分の無力さが悔しくて…何も出来ない事が悲しくて…。
「おねがい…だから…なかないで。さいしょから…こうなることは…わかってたから。」
風音は真琴のその言葉を聞いてようやく口を開いた。
「ここにいるよ…。」
風音のその言葉を聞いて真琴も涙を流す。
「…やっぱり…そこに…いたんだね。ありがとう…これでまことの…おねがいは…かなったよ。そして…いままで…ごめん…なさい。」
風音の手を掴んでいた左手が力なくだらりとたれる。
そして…その瞬間真琴の身体は光の粒となって消えた。
「何で…『ありがとう』なのですか…。僕は…貴女を救う事が出来なかったのに…。」
風音はそう言って再び泣いた。
「風音くん…。」
「……。」
ことりと桐花はそんな風音を見て何も言う事が出来なかった。
こうして、矢後市での戦いは終わった。最悪の形で…。
PM6:28 電車内
「……またもう一人の私 月宮あゆを知る者が死んだか…。」
ソフィアは誰もいない電車内で呟く。
「こうなることは分かっていたが…私が見殺しにしたようなものだな。」
そう。ソフィアは後悔していた。あの時、勤の言った通り水族館から出た事を…。
「だが、私まであの者…ナユキに会ってたらこんなものじゃ済まなかった。あのままいたら…水族館どころかこの街そのものが崩壊していた。」
そう言って目を閉じる。
「だが…それは詭弁だな。」
そして…
「よし、反省終了。んっ…どうやら目的地に着いたみたいだな。じゃあ、行くか。次の戦いはもう始まっているし…それに私にはクヨクヨする事は許されないからな…。」
ソフィアはそう言うと電車から降りた。
to be continued . . . . . . .
あとがき
菩提樹「どうも菩提樹です。やっと今回で矢後市編が終わりました。さて、今回のゲストは…。」
久瀬「黒葉もとい久瀬です。そうですね、やっと終わりましたね。うん…流石は我々がプロデュースした戦いです。」
菩提樹「そこ…自画自賛しない。」
久瀬「え〜っ。アメリカ人だって自国の国務長官が行った『門戸開放宣言』を自画自賛したじゃないですか。」
菩提樹「いつの人間だよあんたは…。」
久瀬「歳の事は聞かないで下さい。血吸いますよ。(怒)」
菩提樹「すみません。聞かなかった事にして下さい。」
久瀬「今回で矢後市編は終わりましたが…次回からは新章ですか?」
菩提樹「はい、次回から新章です。内容は紹介できませんが楽しみにして下さい。ちなみに今回風音が使った『射抜・追』はOVA版『とらハ3』の第4巻で美由希が使った御神流の奥義でそのまま拝借しました。」