3月29日―――PM5:53  海鳴市  海鳴駅
 
その頃海鳴駅では…
 

           れっくう
「はああっ!!烈空!!
 

「甘い!!ソニック・ショット!!
 

眞子とラギアントの闘いが続いていた。
 
二人の技がぶつかる。
 
「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ……。」
 
「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ……。」
 
しかし、もう二人ともとっくに限界を超えておりどちらが倒れてもおかしくない状態だった。
 
「…やるな。流石は『呪われた子供』の一人でありガーベルコマンドーの使い手…。」
 
「…ふんっ。あんたこそやるじゃない。衝撃破戦はドローか。」
 
そう。ラギアントの烈空も眞子のソニック・ショットも衝撃破の技であり、どっちが先に技を繰り出してももう一方が技で防いでしまうのである。
 
「でも…私は負ける訳にはいかないのよ。特にあんたみたいな…道楽で戦ってる奴には…。」
 
「道楽で結構。俺は強くなれるだけ強くなりたい。それだけだ…。」
 
二人はそう言うと構えた。
 

                    れっこう
「行くぞ!!これで終わりだ!!烈孔!!
 

ラギアントは眞子に向かって渾身の一撃を繰り出すが……その瞬間眞子の身体がグニャリと歪んで消えた。
 
「何っ!?残像だと!!」
 

「そう…シャドウ・フェイク。これであんたの渾身の一撃は無効よ。そして…。」
 

そう言ってラギアントとの間合いを詰めて構える。
 

「これで終わりよ…。サイクロン・スマッシュ!!
 

そう言ってラギアントの顔面に強力な一撃を入れた。
 
 
「ぐああああっ!!こ…こんな小娘に…。」
 
 
ラギアントはそう言ってそのまま気絶した。
 
「……私と戦うには鍛錬が足りなかったみたいね。って、あれ…。」
 
そう呟いて倒れそうになるが…途中で止まった。
 
「…水越さん、お疲れ様です。」
 
「…望か。遅いわよ。」
 
そう。そこには傘を持った望がいた。
 
「すみません。ここまで来るのに何度も『龍』に襲撃されましたから…。」
 
望はそう言って冷や汗をかきながら笑う。
 
よく見ると望も肩等を怪我していた。
 
「そう。でも、今回は許してあげるわ。嘘じゃなさそうだし。」
 
「…嘘じゃ無いんですけど。でも、風音さんは大丈夫ですかね。」
 
望はそう言うと不安気な顔つきになる。
 
「大丈夫よ。あいつは…そう簡単に死ぬ人間じゃないから。むしろ心配なのは…敵の方ね。」
 
「それは…どういう意味ですか?」
 
「それは…面倒くさいから言わない。じゃあ…少し寝るわ。」
 
眞子はそう言うとそのまま寝てしまった。
 
「ちょっ…ちょっと水越さん。ちゃんと教えて下さいよ〜。それに、こんな所で寝たら風邪ひいちゃいますよ〜!!」
 
望はそう言って眞子を起こそうとするが、無駄だった。
 
こうして海鳴駅での戦いは終わる。
 

Tear...
 

Story.26 妖狐との戦い(前編)
 


 PM5:57  矢後市  矢後サイドビル水族館  司令室
 
桐花は一人司令室を歩く。だが、歩いても道は終わらない。
 
「どうやら結界みたいですね。」
 
桐花はそう言うと南側の壁に触れる。
 

              えんぶだん
「ここですね。秘術・炎舞弾!!
 

桐花はそう言ってベレッタM92Fから炎を帯びた弾丸を壁に向けて撃った。すると…
 

パリン!!
 

ガラスが割れた時の音が聞こえて結界は消滅した。そして…
 
「ヤルナ。ヨウコゾクノケッカイヲヤブルトハ…。」
 
彼女の前に一匹の子狐が現れる。
 
「子狐と言いますと…どうやら沢渡真琴の下僕のようですね。」
 
桐花は子狐に向かって言った。
 
「ソウダ。ダガ、コノスガタデハシンパンデアルキサマニハカテン。ダカラ…コノキンジュヲツカワセテモラウ。」
 
「!?」
 
子狐がそう言うと彼の周囲に魔法陣が形成される。そして…魔方陣が光る。
 
「くっ!!」
 
桐花はその時の衝撃で壁に激突する。そして、光が晴れると其処には…一人の銀色の髪を腰まで伸ばした青年が立っていた。
 
「我が妖狐族の中で禁呪とされる術の一つ『人間化』。この術で得た力で貴様を倒す。」
 
青年はそう言うと姿を消す。そして…気が付くと桐花の前にいた。
 

       きょくえんだん
「死ね!!極炎弾!!
 

青年は桐花の身体に目掛けて巨大な炎の弾丸を放つ。しかし…
 
「うっ…なめないで下さいよ。」
 
シグ・ザウエルを高速に振るう事によって生み出された空気の壁によって威力を半減された。
 
「中々やるな…。近距離で半減させるとは…。」
 
「ええ、でも…貴女も中々ですね。半減してこの威力ですから。」
 
桐花はそう言うと呪符を一枚出す。
 

                         げっこうきょう
「…少しナメてましたね。秘術・月光鏡。」
 

桐花はそう叫ぶと呪符が大きな鏡に変わり、鏡から桐花に月の光が降り注ぎ、桐花の火傷は治る。
 
「くっ…。やられたな。だが、その呪符にも枚数制限と言う限界がある。呪符が切れたらどうする事も出来ない。ならば…こうすればいい。」
 
青年はそう言うと自分の右手を桐花に向ける。
 

       こえんじん
「行くぞ。弧炎刃。」
 

その時青年の前に燃え盛る刃が出現し、青年はその燃え盛る刃を桐花に向かって投げつけた。刃は弧を描いて桐花へ向かう。
 
「…なめているのですか貴方は!!」
 
桐花はそれを余裕の表情で避ける。しかし、その時だった。
 

         こえんじん  みだれ
「かかったな。弧炎刃・乱!!
 

「!?」
 
桐花がいる位置から多数の弧炎刃が彼女を襲った。
 
「ぐうぅぅぅぅぅぅぅ!!」
 
避けようとしたが間に合わず後方に吹っ飛ばされる。
 
「ふん。終わったな。」
 
青年はそう言ってその場を立ち去ろうとするが…
 
「まだ、終わっていませんよ…。」
 
「!?」
 
桐花の言葉に反応して振り向くと…其処には無傷の彼女が立っていた。
 
「…ば、馬鹿な。な…何故無傷なんだ。」
 
青年はこの状況が理解できずに恐怖する。
 
「さっきの技ですが…結構良い出来でしたが、スペースありすぎなんですよ。現に少し相殺しただけで全部回避出来ましたし。」
 
「だ…だが、お前の呪符はもう全部燃え尽きて…。」
 
「これの事ですか?」
 
「!?」
 
青年が見た物は燃え尽きた筈の呪符だった。
 
「ばっ…馬鹿な。あの攻撃だぞ。例え全部避けたとしても呪符は燃え尽きるのが普通だ。」
 
「だから言ってるじゃないですか。スペースありすぎだって。」
 
「くっ…。」
 
青年は思わず舌打ちする。そして…
 

                     そうえんじん
「こ…こうなったらこうするまでだ。葬炎陣!!
 

青年がそう言うと桐花は巨大な赤色の鏡箱に閉じ込められた。
 
「言っとくけどこの鏡箱を壊して脱出しようなんて考えるなよ。この鏡箱は壊した瞬間に爆発するからな。まあ、壊さなくても時間が経てば一酸化炭素中毒で死ぬがな。」
 
青年はそう言って立ち去ろうとする。だが…
 
「この程度ですか。貴方の実力は…。」
 
「何っ!?」
 
「私は急いでいるんです。そろそろ終わりにします。この戦いも…。」
 
その時だった。
 

ドカ―――ン!!
 

桐花が鏡箱を壊した所為か鏡箱が爆発した。
 
「ふん。自ら死を選んだか。……何っ!?」
 
鏡箱が爆発するのを見て青年は自分の勝利を確信したが…目に映ったものを見て驚愕した。其処には…死んだ筈の桐花がいたからだ。
 
「ば……馬鹿な。な…何故生きてる!?と言うよりも何故そんな無茶が出来る?」
 
「この程度の爆発で私達『呪われた子供』が死ぬとでも思っているのですか?ナメるのもいい加減にして下さいよ。私達が見てきた地獄はこんなものじゃなかったのですから。そして、私はあの時…『ゲーム』で相沢君を悲しませ殺そうとした『夜の一族』と彼らに協力する貴方達を絶対に許さない。」
 
桐花はそう言うと秘術で再び自分の火傷を治す。
 
「くっ…。な…何故だ。何故貴様は相沢…相沢祐一にこだわる?あの男がどうなろうと貴様には関係の無い事だろうが。」
 
そう。青年は真琴の言葉から祐一について興味が湧きいろいろと調べていた。その時に桐花と祐一の関係も知ったが…今の桐花を見てどうしてそこまで祐一にこだわるのかが分からず恐怖する。
 
「関係ありますよ。彼に死なれると困りますから。彼のいない世界なんて…大好きな人がいない世界なんてつまらないから。」
 
「ひっ…ひいっ。」
 
青年は恐怖のあまり逃げようとする。
 
だが、桐花はそれを逃がさない。
 
「逃がしません。」
 

バン!!
 

そう言ってシグ・ザウエルで青年の右腕を撃った。
 
「くっ…あくまで逃がさないつもりか。」
 
「当たり前です。貴方は『夜の一族』に手を貸した人ですから。そんな人を見逃すとでも思っているのですか?」
 
「思ってない。只、時間が欲しかっただけさ。貴様を跡形も無く吹き飛ばす時間がな。」
 
「でも、こうして逃げ切れなかった貴方にその時間はありません。」
 
「いや…もう充分だ。」
 
「えっ…!?」
 
その瞬間、青年の身体が発火した。
 
「くっ…。」
 

   ばくえんさつ
「…爆炎殺。見ての通り自爆技だ。これで私ごと貴様を殺す…。真琴様を…『妖狐の姫君』を守る為に。」
 

その瞬間…司令室は炎に包まれる。
 
「覚悟は…見事です。でも、私の命は貴方達に奪われる程安くはない。」
 
桐花はそう言うと弾切れになったベレッタM92Fに弾を詰め直す。そして…。
 

                        ろうひょうだん
「これでゲーム・オーバーです。秘術・狼氷弾!!
 

ベレッタM92Fから絶対零度の冷気を帯びた弾丸を青年に向けて撃った。
 

「くっ…くそおおおっ!!」
 
 
弾は青年に命中し青年の身体は…急速に凍って絶命した。そして、空間が歪み現実へと戻る。
 
「やはり…二重結界でしたか。何の迷いも無く自爆技を使ったのもその為ですね。でもまあ、見事でしたよ。子狐さん…いやミサキさん。それと相沢君の事ですが…私は名雪や沢渡真琴達と違って別に彼に愛して欲しいとか自分だけのものにしたいだなんて思っていませんよ。只、彼の事を想い続けられればそれでいいんです。」
 
桐花はそう呟くと…再び司令室への奥へと向かう。
 


PM5:55  矢後市  矢後サイドビル水族館  司令室前
 
時間は少し前に遡る。
 
「ここが司令室ですか…。」
 
「ここに…ここを狂わせた人が…。」
 
ことりと風音は呟く。
 
「ああ、そうだ。だが、『夜の一族』だ。絶対に容赦はするな。」
 
ソフィアはそう言って風音とことりを諭して司令室のドアを開けようとするが…。
 

ザシュ!!
 

その時、ドアがいきなり切り裂かれる。そして…人がいた。
 
「どうやら又『信奉者』のようですね。」
 
「時間がありませんがどうします?」
 
風音とことりは悩む。
 
「行け。私があいつを倒す。」
 
「「えっ?」」
 
ソフィアの言葉に二人は驚く。
 
「何を驚いている?とっとと行けって言っとるだろうが。」
 
「で、でも…。」
 

「いいから、行けよ!!このバカ!!」
 

「はっ、はい。そ、『奏乱』!!
 

「御神流奥義の歩法『神速』!!」
 

風音とことりの二人はソフィアの言葉に驚いて走った。
 

「行ったか…。まっ…あいつ等には見せられんからな。」
 
ソフィアは二人の姿が見えなくなったのを確認するとドアを凝視する。
 
其処には信奉者がいるが…腹に何か赤い物が突き刺さっていて出血していた。そして、そのままばたりと倒れた。
 
「今のこいつの姿を…。こんな血みどろになった姿を。」
 
「ぐ…ぐうっ。いつ俺に攻撃を…。」
 
「あんたがドアを切った時にちょっとね…。」
 
ソフィアは『信奉者』の質問に笑顔で答える。
 
「ちくしょう…こ…この『斬撃』のシェラウス・バーウッドが…。」
 
『信奉者』 シェラウスはそう言って絶命した。
 
                  ブラッディ・バレット
「うん。やっぱ便利だね。この鮮血の弾丸は。カタストロフィを出す必要なんて無いし。」
 
ソフィアは一人でそう呟くと消えた。
 


PM5:57  矢後市  矢後サイドビル水族館  司令室
 
風音とことりは司令室の一番奥に辿り着く。
 
「ここが…一番奥みたいですが。」
 
「只の管理室と変わりませんね。」
 
だが、その時だった。
 
「えっ!?」
 
風音に向かって何処からか炎弾が飛んで来た。
 
「ちいっ!!」
 
風音は炎弾を避けるが、避けた地点から…蹴りが飛んで来た。
 
「くっ!?」
 
風音はそれも咄嗟に左腕でガードする。
 
「ちいっ!!やるじゃないのよ!!真琴の攻撃を防ぐなんて。」
 
風音を攻撃した者はそう言って舌打ちする。
 
 
               ばくえんべん
「じゃあこれはどう。爆炎鞭!!
 
 
風音を攻撃した者は炎で鞭を作って攻撃する。
 
「甘いですよ。」
 
だが、風音はそれも避けるが、鞭の当たった床が爆発した。
 
「なっ…。」
 
風音はその威力を見て驚く。
 
「どう…真琴の爆炎鞭の威力は。」
 
「凄い威力ですね。止めようとしなくて正解でしたよ。」
 
「そう…。でも、何であんたはさっきから真琴の攻撃を避けてばっかで攻撃しないのよ。」
 
「出来ませんよ。貴女は女性ですし…。」
 
「それ、真琴をナメてるの?」
 
「ナメていません。それに貴女とは…戦いたくないんです。理由は分かりませんが…。」
 
「…。」
 
真琴は風音のその言葉に何故か何も言い返す事が出来なかった。
 
そして、この時二人とも気が付いていなかった。
 
風音は今戦っている少女がかつて一緒に暮らしていた少女 沢渡真琴だという事に。
 
真琴は今戦っている少年が自分が捜している 相沢祐一本人だという事に。
 
【水族館崩壊まで後23分】
 
 

to be continued ・ ・ ・
 


あとがき

 
菩提樹「どうも菩提樹です。今回はギリギリで真琴を戦わせる事が出来ました。さて、今回のゲストは…。」
真琴「あぅ〜っ。沢渡真琴よ。と言っても祐一の初恋の人の方じゃないけどね。」
菩提樹「それは、口癖で分かりますって。」
真琴「それは追いとくとして…。舞とあゆ(ソフィア)が祐一(風音)の味方なのに何で真琴が敵なのよ〜!!(怒)」
菩提樹「貴女が原作で祐一を憎んでいてよく攻撃していたからです。」
真琴「それは…悪いって思ってるわよ。と言うよりも仕方がないじゃないのよ。あの時は今の祐一のように記憶を失っていたんだから。」
菩提樹「でも、その祐一を恨んでいた理由はハッキリ言って逆恨みです。」
真琴「う゛っ…。」
菩提樹「では次回は風音VS真琴になりますがみなさんよろしくお願いします。」
真琴「真琴を無視して勝手に終わらせないでよ〜!!(怒)」