いつからだろう。
私があいつを好きになったのは・・・。
あいつに恋人のフリを頼んでデートとかした時からか・・・。
昼食の時間に朝倉やお姉ちゃんと一緒に鍋を食べていた時からか。
分からない。でも・・・いつの間にか私はあいつを好きになっていた。
あいつは強くて優しいから・・・。
でも、最初あいつは笑わない奴だった。
どこか苦しそうで痛々しかった。
学校で朝倉や杉並がバカな事やってみんな笑っていた時にあいつだけは笑わなかった。
まるで、笑う事を放棄したように・・・。壊れた玩具のように・・・。
だから・・・あいつの笑顔を始めて見た時は嬉しかった。
あいつの笑顔を見た時嬉しさの余り泣いてしまったほどだ。
でも・・・あいつは音夢の一件で又元に戻ってしまった。又、笑わなくなった。
その時はショックだった。辛かった。音夢のお見舞いに行った時に音夢に「この人誰?」と言われた時よりも。
そして、あいつは音夢を助ける為に初音島を出て行った。
その時私は泣いた。雨が降る中「枯れない桜」の前で・・・。
悲しくもあったが、それ以上に悔しかったから。
それから暫くして、海鳴市で私達は神楽に会った。
最初は彼が相沢だと思ったが、別の名前だったのでガッカリしたが、それと同時に何故か安心した。
私達が積み上げた積み木が壊れていないと思ったから。
でも・・・その考えも今崩れ去った。
さくらの言葉で・・・。
さくら「神楽風音くんは君達が捜していた人・・・相沢祐一くんだよ。」
「帰ろうあいざわ・・・。初音島に・・・。」
これは私があいつを・・・相沢を見つけた時に真っ先に言おうとした言葉。
でも・・・今は言えない。
相沢に・・・会えたのに・・・。
Tear...
Story.18 それぞれの選択肢
PM7:15―――海鳴市 ファミレスWest Town
さくら「うん。暦先生のDNA判定の結果が出てね。風音くんのDNAが祐一くんのDNAと全く一緒だったんだ。」
さくらの告白から5分後・・・静寂を打ち破ったのは以外にもわかばだった。
わかば「相沢祐一さんって・・・CSSいわゆるクリステラ・ソングスクールを15歳という異例の速さで卒業したあの天才ピアニストの相沢祐一さん・・・ですか。」
わかばは興奮気味にさくらを問い詰める。
望「ちょ・・・わかば。落ち着きなさいって。」
わかばは望に注意されてハッと気付いてさくらから手を放した。
わかば「はっ・・・すみません。芳野さんすみません。」
さくら「わかばちゃん・・・案外力あるんだね。結構苦しかったよ。」
さくらはそう言って首を押さえて呼吸を整える。そして、呼吸が整った所で説明を続けた。
さくら「そう・・・だよ。「悲運の天才ピアニスト」相沢祐一くんだよ。ちなみに此処にいることりちゃんもCSSの卒業生・・・だよ。」
フィリス「ええ!?」
今度はフィリスが驚いた。
望「フィリス先生も落ち着いてください。ここファミレスなんですから。」
フィリス「あっ・・・すみません。まさかお二人がゆうひさんと同様にCSSの関係者とは思わなかったので・・・。」
フィリスも謝った。
さくら「まあ・・・みんなが驚くのも無理ないか。彼の名前はある意味一般常識化しているからね。」
眞子「さくらも人の事言えないでしょうが。その年で博士号を取得してるんだし。」
さくら「まあね・・・。」
だが、そこで話は元に戻った。
望「風音さんがその相沢祐一さんであると言う事は分かりましたが・・・何で風音さんに「あなたは相沢祐一さんだ」って正体を教えちゃいけないんですか?「夜の一族」や「龍」との事を考えたら逆に教えた方がいいと思いますが・・・。」
眞子「そうよ。記憶が無い事ほど辛い事はないし、それに・・・言わなきゃ前に進めないじゃん。」
望と眞子はさくらに追及する。しかし・・・
さくら「中々的を突いた質問だね。確かにそうだよ。でもね、望ちゃんに眞子ちん。記憶を取り戻す事がいつも良い事とは限らないよ。特に彼の場合は・・・。」
望・わかば・眞子・フィリス「「「「えっ!?」」」」
ことり「・・・。」
ことり以外の4人の声がハモった。
さくら「やっぱり分かってなかったか。眞子ちんは知ってると思ったけど。まあ、ことりちゃんは知ってて当然だけど・・・。」
ことり「・・・。」
ことりは無言のままだった。
さくら「ことりちゃん。君には悪いけどみんなに話すよ。「夜の一族」の「ゲーム」の事を・・・。」
ことり「はい・・・。」
ことりは悲しげな顔をして頷いた。
さくら「ねえ、みんなは「バトル・ロイヤル」って知ってる?」
フィリス「ええ。確か格闘技の試合形式の一つで十人とか二十人とかが一つのリングで優勝を争うやつですよね。全日本プロレスとか何かのお祭りの時にやってるやつで。」
さくら「そう。でも「夜の一族」の「ゲーム」はそれを最悪にしたものと言っていいんだ。多人数で一人の優勝者を決めると言うところは同じだけど・・・実際はそれをモチーフにした史上最悪のサバイバルゲーム。」
眞子「じゃ・・・じゃあ、実際に殺し合いをするの?」
さくら「うん。しかも、自分の家族や友人、恋人とね。信じれば裏切られる、信じれば殺される、そんな最悪なゲームさ。」
さくらがそう言うと場は沈黙する。
わかば「で・・・でもさくらさん。そんな事この日本で出来るのですか?現実味の無い話ですが・・・。そんな事が行われているのなら警察や自衛隊が黙っていないし、マスコミが取り上げるのが普通なのでは・・・。」
さくら「わかばちゃんの言った事は的を突いてるけど、「可能」だよ。だって、この国の政治経済の8割以上は「夜の一族」が抑えてるからね。だから、この国では「夜の一族」の遣りたい放題なんだ。」
望「じゃあ・・・風音さんはその「ゲーム」の・・・。」
さくら「そう・・・。彼は・・・祐一くんはその殺戮ゲームの生き残りだよ。」
望・わかば・フィリス・眞子「「「「!!」」」」
ことり「・・・。」
その言葉に皆暫く沈黙する。・・・が暫くしてから眞子の口が開く。
眞子「そんな・・・。じゃあ相沢が初音島に来たのは・・・。」
ことり「ええ。もう既に「ゲーム」が終わった後でした。」
眞子「・・・。」
ことりの話は続く。
ことり「私達が僅かな情報を手がかりに祐一くんがいた華音市に行った時にはもう手遅れで・・・私達は祐一くん以外誰も助ける事が出来なかったのです。祐一くんの友達も家族も既に死んで・・・いや、殺されていて・・・。」
望「・・・。」
わかば「・・・。」
フィリス「・・・。」
眞子「・・・。」
ことり「・・・でも、それで「夜の一族」は終わってはくれませんでした。「夜の一族」が祐一くんを危険な「呪われた子供」として抹殺しようと企んだのです。」
望「それって・・・。やっぱり「龍」ですか?」
さくら「うん・・・そうだよ。「ゲーム」と「龍」も無関係じゃないからね。それは、言わなくても分かると思うけど「ゲーム」違反者及び優勝者の抹殺。」
それを聞いて今度はフィリスが質問した。
フィリス「でも・・・それっておかしいんじゃないんですか?優勝者は・・・最後まで生き残った人は助かるんじゃないんですか?」
さくら「別におかしくないよ。だってその為に「ゲーム」は行われているんだから。」
フィリス「えっ・・・。」
さくら「彼らは選んだ理由はコンピューターが弾き出した結果だって言ってるけど「ゲーム」の参加者は「呪われた子供」と「呪われた子供」に関わった人間で構成されてるんだ。何故そうなっているのかと言うと一つは「呪われた子供」の粛清もう一つは退屈凌ぎのトトカルチョの為さ。だから、「夜の一族」は優勝者も殺すしもし仮に優勝者が「呪われた子供」じゃなくても口封じの為にやっぱり殺んだよ。まあ、祐一くんの場合は少し特殊だけどね。」
眞子「えっ・・・。」
さくら「1月末に新聞やTVで報道された『華音市で起こった5つの奇跡』って知ってる?」
フィリス「ええ、不治の病の少女が余命ギリギリの所で助かったり、7年も意識不明の少女が目覚めたり、深夜の学校で重傷を負っていた少女が助かったり、原因不明の少女が助かったり、トラックに撥ねられて重体だった奥さんが助かったと言う奇跡でしたよね。その手の専門家に騒がれていた。」
さくら「そう。でも、それは人為的に引き起こされたものだったんだ。」
望「それって・・・もしかしたら。」
さくら「うん。祐一くんが能力を使ってみんなを助けたんだ。」
わかば「やっぱり・・・。」
さくら「でも、それは「夜の一族」にも知られて彼等は祐一くんの能力を憎みそして、恐れた。だから、華音市で「ゲーム」をやって街ごと祐一くんを殺そうとしたんだ。」
さくらはそこまで言うと一息ついた。
さくら「ここまでが風音・・・いや祐一くん本当の事を言ってはいけない理由だけど・・・。さて、みんなこれからどうする?」
さくらはまるで皆を試すかのように質問する。そして、最初に口を開いたのは望だった。
望「私は・・・風音さんと共に戦います。風音さんには借りがありますし、それに・・・風音さんを放って置く事なんて出来ないから・・・。」
フィリス「私もです。一度助けた患者さんが又傷つくのは嫌ですから。それに「龍」とは戦う運命ですから。」
わかば「わたくしも・・・望ちゃんと一緒ですわ。」
眞子「私達は・・・聞くまでもないわよね。ことり・・・。」
ことり「はい。私も祐一くんと共に戦います。」
それを聞いてさくらはふっと笑った。
さくら「良かったよ。「ゲーム」の事を君達に話したらきっと彼の事を嫌うんじゃないかと思っていたから不安だったんだ。」
望「あっ、それ酷いですよ。」
フィリス「そうです。あんまりです。」
さくら「あっ、ゴメン。言い過ぎた。」
さくらはそう言ってベロを出して謝る。
わかば「それは大丈夫ですわ。だって、望ちゃんとフィリス先生は・・・。むぎゅ。」
わかばが先を言おうとした瞬間、望に口を塞がれた。
望「わかば・・・ここで言うべき事ではないでしょう。(怒)」
望はわかばが気絶したのを確認すると口を塞いでいた手を放した。
眞子「でも、これからどうするの?もう高町家にはいられないと思うし。」
望「あっ、それなら大丈夫です。桃子さんから風音さんを連れ戻して来いと言われてますから。」
ことり「なら、今日は高町家にって事で良いですかね。」
わかば「ええ、大丈夫ですわ。」
こうして話が終わった。
PM7:25―――海鳴市 ファミレスWest Town前
蛍火との戦いから10分後・・・
なぎつむじ
風音「御神流奥義の六 『薙旋』!!」
蛍火「ぐはあっ!!」
風音と蛍火との戦いも終わっていた。
それを見て杉並は驚きを隠さずにはいられなかった。
杉並(あの蛍火という男は決して弱くない。だが、それに構わずの圧勝とはな・・・。)
杉並が考え事をしている間に風音はポケットから5番鋼糸を取り出して腕を縛りつけて拘束する。だが・・・。
蛍火「・・・ゆるさん。許さんぞ。貴様等・・・。」
蛍火はそう言うと力づくで鋼糸を引きちぎり負傷して使い物にならなくなった左腕を引きちぎって風音を目がけて投げつけた。
風音「くっ!!」
風音はそれを間一髪なところで避けるが・・・。
蛍火「今日は退くが・・・次会った時は殺してやる!!必ず・・・・・・殺してやる!!必ずバラバラにしてくれるぞクソガキがァアアアァア―――!!」
蛍火は叫ぶとそのまま逃げていった。
風音「やられました。まだあんな力が残っていたなんて。」
杉並「まあそう言うな。勝ったんだから。」
風音「そうですけど・・・。あの人、僕の事を知ってそうでしたから聞きたかったんですよね。里村さんと言う人とかについて等・・・。」
杉並「そうか・・・。」
そう言うと二人はWest Townに戻った。
PM7:30―――海鳴市 風芽丘学園屋上
彩「やはり彼は彩奈さんの息子でしたか・・・。」
月代彩は誰もいない風芽丘学園の屋上で呟く。
彩「まあ、あれだけ「夜の一族」が総力を上げて彼の命を狙う所で気付くべきでしたが・・・。少し遅かったようですね。」
彩はそう言うと少し思案顔になる。
彩「まあ、いいでしょう。海鳴市に何故飛行船が飛んでいるのかが分かりましたし・・・。それに彼に関しても早めに手を打って置けば問題ありませんね。後、一週間ほどで望さん達の春休みも終わりますからそれに合わせて彼を風音市に連れて行けばいいですしね。」
彩はそう言って屋上を後にした。
to be continued ・ ・ ・
あとがき
菩提樹「どうも最近多忙でお疲れの菩提樹です。さて、今回のゲストは・・・。」
晶「城島晶です。どうも初めまして。」
菩提樹「今回は「ゲーム」について書きましたが・・・どうでしたかね。」
晶「某デスゲーム小説のパクリじゃん。」
菩提樹「すみません。最初からこれにしようと思っていたので。」
晶「アホか、あんたは。」
菩提樹「あっ、酷いですねえ。そんな事言ったら・・・。」
晶「・・・言い過ぎました。」
菩提樹「これで26日は終了しました。次回は又、新たな展開でいこうと思っています。それではまた〜。」
晶「誤字脱字には気をつけよろ。このバカ作者。」