3月26日―――PM6:00   海鳴市  海鳴臨海公園
 
風音がさくらと会っていたその頃、雨が降っている所為で誰もいない海鳴臨海公園では・・・
 

          そうう
??「・・・槍雨!!」
 

ザシュ!!ザシュ!!ザシュ!!
 

黒服1「ぐわあっ!!な・・何で槍が・・・。ナイフだけじゃないのか・・・。」
 
黒服2「た・・・たかが「呪われた子供」一人に・・・。」
 
黒服3「お・・・俺達が敗れるなんて・・・。」
 
黒服4「こ・・・こちら海鳴臨海公園班・・・み・・・ミッション・・・失敗。し・・・至急・・・応援を頼む。た・・ターゲットの「呪われた子供」の名は・・・杉並りょ・・・。」
 
 
ガクッ!!
 
黒服の一人は言葉を言いきれずに気絶した。そして・・・
 
杉並「ふう。ここの囲みは破ったな。では・・・そろそろ芳野嬢の所へ向かうとするか。」
 
杉並がその場を立ち去ろうとしたその時だった。
 

ヒュン!!ヒュン!!ヒュン!!
 

無数の斬撃が杉並を襲う。
 
杉並「くッ・・・。まだいたか。」
 
杉並はそれらを全て避け、舌打ちする。そこには・・・青髪の少女が立っていた。
 
??「私のブレードでの斬撃を全て避けるとは・・・貴方なかなかやりますね。」
 
杉並「・・・その機械音は・・・。エーディリヒか・・・。」
 
杉並は青髪の少女に問いかけた。
 
ロッド「はい。私は「龍」にお使えするエーディリヒでロッドと申します。」
 
杉並「それはご丁寧に。俺は杉並涼と言います。折角ですが急いでいるので通してくれませんか?連れを待たせているので。それにエーディリヒとはいえ女性を傷付けたくはありませんし。」
 
杉並はロッドに道を譲るよう言うが・・・
 
ロッド「いいえ。貴方は「呪われた子供」・・・危険な存在です。ですから、それはできません。」
 
杉並「そうですか。ならば・・・。」
 
ロッド「ここを通りたいのなら私と戦って勝つしかありません。」
 
杉並「そのようですね。では見せてあげましょう。俺の「武創」を。」
 
ロッド「行きます・・・。」
 

シュバッ!!
 

杉並のナイフとロッドのブレードが何度も交差する。が・・・
 
 
ロッド「ぐはあああっ!!」
 
6度目の交差でロッドは杉並のナイフによりブレードを破壊され、そして7度目の交差で核も破壊されてその機能を停止した。
 

       じんぷう
杉並「・・・刃風!!俺がナイフしか持ってないと思って油断したのが貴女の敗因だ。」
 

そう。彼はナイフで7連撃を繰り出しただけだった。決め手の6撃目で彼女のブレードを破壊し、最後の7撃目で核を破壊したのだ。
 
杉並「・・・よし。これで「龍」の囲みも破ったことだし、芳野嬢の元へ行くか。」
 
杉並はそう言うと、黒服達の事は気にせずにその場を走り去った。
 


Tear...
 
Story.16   遅刻者は・・・
 


PM6:20―――海鳴市  ファミレスWest  Town
 
風音達がさくらに会ってから20分後・・・車はとあるファミレスで止まった。
 
あれから10分後、ことりも目を覚ましていたし、雨で濡れていた風音の服ももう乾いていた。
 
さくら「二人とも着いたよ。降りて。」
 
さくらはそう言って風音とことりを引率する。
 
風音「・・・ここにですか。」
 
さくら「そうだよ。」
 
ことり「はい、ここですよ。」
 
風音「・・・そうですか。ちょっと信じられなくて。」
 
さくら「・・・やっぱし。」
 
風音「はい・・・。どう見てもファミリーレストランですし・・・。」
 
ことり「否定できないっす・・・。と言うかそうですから。」
 
さくら「ここ24時間やっているからいつの間にか集会所になっちゃったんだよね。」
 
さくらとことりはそう言って笑う。
 
さくら「まあそれは気にせず入って。」
 
風音「・・・はい。」
 
さくらがそう言うと風音達はレストランの中に入った。

PM6:22―――海鳴市  ファミレスWest  Town
 
カラン!!カラン!!
 
ウェイトレス「いらっしゃいませ!!あっ、さくらちゃん。」
 
店のウェイトレスはさくらを見て驚く。おそらく知り合いなのだろう。
 
さくら「優ちゃん。悪いけど又席貸ししてくれない?」
 
さくらはそう言って優と言うウェイトレスに頭を下げる。
 
優「うん、いいよ。まだ、ピークじゃないから。じゃあ一番奥の席で良いかな?眞子ちゃん達が座っているから。」
 
さくら「じゃあそこで。」
 
優「はい。分かりました。」
 
優はそう言うと一番奥の席に案内する。其処には、既に到着していた藤宮姉妹とフィリスと眞子が座っていた。
 
望「あっ・・・。風音さん。」
 
わかば「どうしたのですか・・・。突然翠屋を飛び出したそうですが・・・。」
 
フィリス「やはり・・・「夜の一族」ですか・・・。」
 
眞子「望の連絡を聞いて一応神楽の荷物は持ってきたけど・・・正解だったみたいね。」
 
四人は風音の姿を見て一瞬安堵したが、直ぐに暗い顔に戻る。
 
風音「・・・み、皆さん。そ・・そんな暗い顔しないで下さい。」
 
風音はそう言って席に座るが、場の雰囲気は全然明るくならなかった。だが、その時・・・
 
優「はい。コーヒーです。」
 
厨房にいた筈の優が戻ってきて風音にコーヒーを差し出した。
 
風音「えっ・・・。僕・・・コーヒーなんて頼んでいませんよ。」
 
風音はそう言って優にコーヒーを返そうとするが・・・
 
優「気にしないで。ボクのおごりだから。それに・・・君、何だか冷たい雨にでも打たれたような悲しい瞳をしていたから・・・。」
 
風音は優のその言葉を聞くと・・・
 
風音「すみません・・・いただきます。」
 
コーヒーに口をつけた。そして小声で・・・
 
風音「おいしいです・・・。」
 
と言った。
 
優「はい。どういたしまして。」
 
優はそう言うと笑顔になる。

それから数分後・・・
 
望とフィリスとことりと眞子の四人は風音を睨んでいた。
 
風音はそんな彼女達の様子に気が付き・・・
 
風音「・・・皆さん。どうしました。」
 
と声をかけたが、
 
望・フィリス・ことり・眞子「「「「知りません(知らない)!!」」」」
 
と怒鳴られた。
 
さくらとわかばはその様子を見て・・・
 
さくら(祐一くん・・・記憶が奪われても恋愛には鈍感なんだね。彼女達の気持ちも少しは考えなよ。でも、ことりちゃんに眞子ちん・・・嫉妬は見苦しいよ。)
 
わかば(望ちゃん・・・先を越されて悔しいのは分かりますが落ち着いて下さい。)
 
と心の中で呆れた。
 
それから20分後・・・
 
風音「ところで皆さん・・・話し合いはいつ始まるのですか?此処に来てからもう20分以上経っていますが・・・。」
 
風音はさくらに尋ねるが・・・
 
さくら「うん。まだ・・・一人来てないから。悪いけど、もうちょっと待ってね。」
 
ことり「でも遅いですね・・・。杉並くん。」
 
眞子「ったく、あのバカは。」
 
その時だった。
 
??「誰がバカだって・・・。」
 
風音「えっ・・・。」
 
風音の隣の席から声がした。其処には・・・制服を着た一人の少年が立っていた。
 
眞子「そんなの決まってるでしょ。杉並・・・って何であんたがいるのよ。しかもいつの間に・・・。」
 
眞子は杉並の存在に気付いて杉並と言う少年を指差す。
 
杉並「・・・失礼な。5分前から此処にいたが・・・。」
 
杉並は眞子の態度に呆れて溜め息をつく。
 
さくら「杉並くん・・・相変わらず神出鬼没だね。」
 
ことり「私も気が付きませんでした。全然気配がしなかったし。」
 
風音「凄い・・・人ですね。色々な意味で。」
 
風音とことりとさくらは杉並の神出鬼没さに驚く。が、藤宮姉妹とフィリスは・・・
 
望「・・・何か橘先輩みたいな人だね。」
 
わかば「そうですわね。面白いところとか。」
 
フィリス「でも・・・見ていて疲れます。」
 
半ば呆れていた。
 
眞子「でも何で遅刻したのよ。もう春休みなのに!!」
 
                                                     オートマトン
杉並「ここに来る途中に臨海公園で「龍」の連中と戦っていたからだ。しかも、連中最後に自動人形まで出してきたのでつい遅くなったのだ。」
 
ことり「そうなんですか。大変でしたね。」
 
ことりは杉並を労ったが、
 
    オートマトン
眞子「自動人形って・・・せめてエーディリヒって言いなさいよ。」
 
眞子は呆れていた。そして・・・
 
さくら「ま・・・まあ、杉並くんも到着した事だし話し合おうか。」
 
風音「そ・・・そうですね。色々と聞きたい事がありますし。」
 
こうして話し合いが始まった。
 
彼等の後をつけている者がいると知らずに・・・。
 
同時刻  海鳴市  ???
 
誰もいない無人の洋館で久瀬こと黒葉は地下室に入ってから2時間・・・。
 
其処には・・・沢山の白い石の像が置かれていた。しかも、その全てがさっきまで生きていたかのように正確にできていた。
 
そして黒葉はその中から猫を抱っこした少女の像を見つける。
 
黒葉「ここにありましたか・・・。」
 
黒葉はそう言うと、蝋燭の蝋で円を描き、その円の中心にさっき見つけた少女の像を置く。そして、少女像を中心に四本の線を引き円を八分の一にする。そして、最後に仕切られた円の中に呪文を書いた。
 
そして、黒葉は呪文を唱えた。
 
黒葉「さあ、復活せよ。戦いに敗れし者よ。再び戦う為に!!汝の主は「夜の一族」が一人黒葉!!」
 
その時・・・
 

ゴオオオオオオオオオ!!
 

少女の像が突然発火した。そして、白かった少女の像の髪の部分に色が着き、肌も生気を帯び、最後には靴にも色がついた。そして・・・少女は電池の入った玩具が動き始めるようにまぶたを開ける。
 
??「あぅ〜っ。此処どこよ〜。祐一は〜?美汐は〜?みんなは〜?」
 
そんな少女を見て黒葉はほくそ笑む。
 
黒葉「くくく。「蘇生の術」は成功したようですね。これで・・・相沢くんをもっと苦しめる事が出来ます。ははは!!あはは!!あ〜っははは!!
 

黒葉は高笑いをした。だが、それは只の高笑いではなく・・・まるで悪魔の高笑いと言える高笑いだった。
 
 

to be continued ・ ・ ・


あとがき
 
菩提樹「どうも菩提樹です。今週は大学で後期試験の結果が出たり、履歴書を3通も書いたりして大変でしたが何とか書けました。さて、今回のゲストは・・・。」
杉並「杉並涼です。でも、何故涼と言う名前に・・・。」
菩提樹「杉並くんが原作の「D.C.〜ダ・カーポ〜」では面白い人だったけどクールさも出してみたかったので涼と言う名前にしました。」
杉並「ありがとうございます。でも、相沢に似た神楽はこれからが大変だな。黒葉いや久瀬という男によって沢渡嬢が復活したしな。」
菩提樹「はい。でも、次の敵はまだ彼女じゃありませんよ。」
杉並「俺達の後をつけていた奴らか・・・。」
菩提樹「はい。でも、今度の敵は「龍」でも「夜の一族」でもありません。それだけは書いておきます。」
杉並「成る程。それは楽しみだ。だが、今回の舞台であるファミレスWest  Townのウェイトレスもヒロインの一人なのか?凄く気になるのだが・・・。」
菩提樹「優の事ですか・・・。優はヒロインではありません。あくまでもさくらの友達です。」
杉並「そうか・・・。(チッ・・・つまらんな。)」
菩提樹「はい。次回は今までとは違った組織に属する人達とのバトルです。」
杉並「ふむ。それならば又、俺が活躍する話だな。」
菩提樹「はい。次回も頑張って下さいね。それでは又〜。」