3月24日―――AM1:00  海鳴市  国守山
 
望が一体目の影鬼を倒してから15分後・・・

風音「はあっ!!」
 
影鬼1「キシェーッ!!」
 
                        いぶき
望「藤宮一刀流  伊吹!!」
 
スパン!!
 
影鬼2・3「「グエーッ!!」」
 
風音は素手で、望は模造刀で影鬼を倒していた。
 
望「・・・はあはあ。本当にしつこいですね。」
 
風音「ええ。攻撃力もあるし素早いですが、防御力は低いので落ち着いていけば倒せない相手ではありませんよ。」
 
望「そうですね。でも、こうもしつこいと・・・。」
 
望は困った顔をして言う。
 
風音「確かにそうですね。僕も時雨が出せない状態ですからちょっとキツイですね。」
 
その時だった。
 
??「じゃあ私も戦いましょうか?」
 
風音・望「「えっ!?」」
 
風音と望はその声に反応する。そして・・・
 
 
影鬼4・5「「ゲシャーッ!!」」
 
 
2体の影鬼が真二つに斬られて消滅する。そして・・・その後ろには一人の少女が立っていた。
 
風音「あっ・・・貴女は。ことり・・・さん。」
 
風音はその人物の姿を見て驚く。その人物は・・・白河ことりだった。
 



 Tear...
 
Story.12  神咲出動

 AM1:05       海鳴市  国守山
 
ことり「やっぱし・・・こうだと思っていましたよ。風音くんが何処にいるのかをなかなか探知できませんでしたから。」
 
ことりは影鬼の攻撃を避けながら話す。
 
風音「えっ・・・。それは・・・どういう事ですか・・・。」
 
ことり「簡単な事ですよ。それだけ貴方の力が弱まっているということですよ。」
 
風音「やっぱし・・・そうですか。」
 
ことり「でも、結界を破ってまで来た甲斐がありました。さて、今はこの影鬼さん達を倒す事が先決です。と言う事で風音くん。」
 
ことりは笑顔でそう言うと風音の元に小太刀と同じくらいの長さの模造刀を2本投げた。
 
ことり「これで戦ってください。時雨の代わりですけど・・・。今の貴方なら簡単に使える筈です。」
 
風音「すみません。色々と心配をかけて。」
 
ことり「いいえ。気にしないで下さい。貴方に死なれると私達も困るので。」
 
 
風音「では、早速借りを返させてもらいます。徹!!
 
 ドン!!ドン!!ドン!!
 
影鬼6「ギャーッ!!」
 
風音の「徹」によって又影鬼が一体消滅した。
 
 
 
                                       はながすみ
望「じゃあ私も・・・藤宮一刀流  花霞!!
 
ズバッ!!
 
望の衝撃破の「ちから」で強化した居合い抜きにより4体の影鬼は全部消滅した。
 
ことり「ふう。これで全部倒せましたね。」
 
望「そうですね。これで終わりですね。」
 
これで戦いは終わったかと思うが・・・。
 
風音「そうですかね・・・。」
 
望・ことり「「えっ!?」」
 
二人は風音の言葉に驚く。その時だった。
 
 
??「いや―――っ!!」
 
麓で誰かの叫び声が聞こえてきた。
 
ことり「こ、この声は・・・。」
 
望「ま・・・まさか麓にさっきの化け物が・・・。」
 
風音「すみません。ちょっと麓の方に行ってきます。」
 
風音はそう言って麓に降りて行った。
 
ことり「あっ・・・風音くんちょ・・・。」
 
望「風音さん・・・。」
 
二人は風音を引き止めようとしたが遅かった。そして・・・。
 
望「ことりさん。私達も麓の方に行きましょう。」
 
ことり「うん。さっきの叫び声も気になるしね。」
 
二人はそう言うと、風音に続いて麓に降りて行った。

 
AM1:12       海鳴市  国守山 麓
 
風音は走って麓に向かう。
 
風音「ハアハア。お願いですから・・・間に合ってくださいよ・・・。」
 
風音はそう願う。そして・・・やっとの事で麓に辿り着くと・・・
 
風音「あっ・・・危ない!!」
 
そう。一体の影鬼が一人の青い髪の少女を目掛けて今にも右手を振り下ろそうとしていたのだ。そして、影鬼の腕が少女に向かって振り下ろされる。
 
 
 
少女「キャ―――ッ!!」
 
風音「くっ・・・。こうなったら・・・これしかない。神速!!
 
 
ヒュン!!
 
 
風音は御神流の奥義の歩法『神速』を使って早く動く。そして・・・

                       なぎつむじ
風音「御神流奥義ノ六  薙旋!!」
 
 
影鬼に薙旋による4連激をあびせた。
 
 
 
影鬼「ケシャーッ!!」
 
 
影鬼は『薙旋』によるダメージで首を落とされ消滅した。
 
そして、風音はその少女の側に駆け寄った。
 
風音「・・・良かった。頭部等に損傷は無いし、気絶しているだけみたいですね。」
 
風音は少女の無事を確認すると、ふっと笑顔になる。
 
風音(良かった。今度は助ける事が出来て・・・。)

 
AM1:20        海鳴市  国守山 麓
 
風音が影鬼に襲われた少女を助けてから数分後・・・望とことりがやっと風音に追いついた。
 
望「どうやら・・・間に合ったみたいですね。」
 
ことり「ええ。無事で何よりです。」
 
そう言うと、二人は安堵の溜め息をつく。
 
風音「・・・ええ。でも、この人どうします?」
 
望・ことり「「あっ・・・。」」
 
二人はそれに気付きハッとなる。だが・・・その時だった。
 
少女「・・・うん。」
 
さっきまで気絶していた少女が目を覚ましたのである。
 
少女「あっ・・・あれっ。私・・・生きてる・・・。」
 
少女は起き上がろうとするが・・・。
 
少女「くっ・・・。」
 
影鬼から逃げる途中で足をくじいたのか上手く立てずに再び地面に膝をつく。
 
風音「大丈夫ですか・・・。」
 
風音は少女に手を差し出した。
 
少女「あっ・・・すみません。お姉さん。」
 
少女はそう言って風音の手を取るが、当の風音はコケた。
 
少女「えっ・・・。」
 
望「あのう。すみませんけど・・・風音さんは男・・・なんですよ。こんな格好ですから間違えても仕方が無いと思いますけど・・・。」
 
少女「えっ・・・。すっ・・・すみません。助けてくれたのに失礼な事を言って。」
 
少女は風音に対して頭を下げて謝る。
 
風音「いえ、いいですよ。こんな(黒色の長髪に女顔)格好じゃ間違えられても仕方が無いですし。」
 
風音はそう言って力無げに笑う。でも、やっぱりショックのようだ。
 
ことり「ははは・・・。風音くんも大変っすね。」
 
ことりも今の状況に笑うしかなかった。


同時刻   海鳴市  国守山頂上
 
ガンッ!!
 
影人「くっ・・・くそう。白河ことりが結界を破って侵入するとは・・・。シナリオ外だぞ!!」
 
影人は山頂にある掲示板を殴って八つ当たりをした。やがて落ち着くと・・・
 
影人「だが・・・まあいい。奴等のデータは一応は取れた。」
 
影人はそう言うと、モバイルをチェックする。
 
影人「まあ、藤宮望とフィリス矢沢は予想通りだが、神楽と白河は・・・まだデータが足りんな。それと・・・」
 
その時だった。
 
ヒュン!!
 
一筋の斬撃が彼に向かって飛んできた。
 
影人「くっ・・・。」
 
影人はそれを間一髪で避ける。そして・・・暗闇から人が現れた。
 
??「何しとるん?「夜の一族」がさざなみの敷地内で。」
 
影人「そ・・・その声はまさか、神咲薫か・・・。」
 
薫「そうやけど。ちょっと国守山の様子がおかしいとみんなが言うから一応見に行ったら結界が張られてたし。そんで結界を破って入ったら影鬼まで出てくるし・・・あんた一体何考えとんの?」
 
薫は影人に問いただす。
                                      はくえいじん
影人「答える義理は無い。喰らえ、暗影流七ノ曲  白影刃!!
 
 
 
ズシャ!!
 
 
 
影人は薫を真二つに切り裂く。だが・・・そこには破れた札しか無かった。
 
影人「チッ・・・札での囮かよ・・・。」
 
影人はそう言って舌打ちする。そして、薫が無傷の状態で再び姿を現す。
 
薫「成る程。あんた暗影流の使い手なんか。「夜の一族」の中にも武術の使い手がおるとは知らなかったからビックリしたとよ。ほんなら、次はうちの番やね。」
 
薫はそう言うと、剣に霊力を集中させる。
 
 
                                  しんい     ふうじんは
薫「神気発勝  神咲一刀流奥義  真威・楓陣刃!!」
 
 
 
ヒュン!!
 
 
 
薫の霊気が影人を襲う。影人は避けようとするが、一瞬動作が遅れて腕に当たる。
 
薫「これで分かったろ。今のあんたじゃうちには勝てないって事が。」
 
そして、薫は剣を影人の頭に突きつける。
 
薫「さあ。あんたが知っている事全部喋ってもらおうか「夜の一族」の影人・・・ いや、華音市の生き残りの一人 斉藤正文君。」
 
薫は影人に尋問する。しかし・・・その時だった。
 
 
 
??「ゴールド・ガリバー!!」
 
 
 
??「銀の螺旋!!」
 
 
 
二つの攻撃が薫を襲う。
 
しかし、薫はそれらの攻撃を読んでいたのか後ろにジャンプする事でかわす。
 
薫「ちっ・・・この攻撃からして・・・金剛と片銀も一緒だったんか。分が悪いな・・・。ほんなら・・・。」
 
薫は札を懐から取り出し、三人に目掛けて投げた。
 
金剛「フン!!こんな札など・・・。」
 
金剛は札を破こうとするが・・・
 
片銀「金剛よせっ。これは起爆札だ!!破った瞬間に爆発するぞ!!」
 
金剛「何っ!!」
 
だがもう既に遅く・・・
 
 
 
ドカン!!ドカン!!ドカン!!
 
 
札は爆発した。そして・・・もうそこには薫の姿は無かった。
 
影人「・・・逃げられたか。まあいい。こちらも誰も死ななかったのだからな。」
 
金剛「ああ。そうだな。」
 
片銀「一旦退くぞ。こんな所を見つかったら降格どころじゃ済まなくなる。」
 
影人「ああ。分かってる。これ以上ここにいても無意味だしな。」
 
 
ヒュン!!
 
 
そう言って影人達も消える。
 
影人(俺はまだ浄化される訳にはいかねえんだよ。浄化されたらあの人を生き返らすことが出来なくなるからな。)
 
そう言って影人はポケットから青い髪を取り出す。
 
影人(あの人に又会えるのなら・・・俺は何だってしよう。邪魔する奴は殺す。それだけだ。)


 
AM2:00         海鳴市  某マンション
 
少女「助けてくれた上に家まで送ってくれて・・・どうもありがとうございます。」
 
少女は風音たちにお礼を言う。
 
ことり「いえいえ。私もこのマンションに住んでいますから気にしないで下さい。」
 
ことりはそう言って笑う。
 
少女「宜しければ・・・上がっていきません?お茶くらいはご馳走しますので・・・。皆さんの事も知りたいし・・・。」
 
少女はそう言って腕をつかむ。
 
風音「すみません。明日からバイトなので・・・ちょっと・・・。」
 
望「あはは。すみません。もう遅いので・・・。」
 
少女「そうですか・・・。残念です。まだ名前も風音さんしか知りませんし。」
 
少女はそう言ってシュンとなる。
 
風音「あっ・・・そんな顔しないでくださいよ。何なら明日「翠屋」でしましょうよ。」
 
風音は慌てて言った。
 
少女「「翠屋」って・・・あのシュークリームの美味しい喫茶店の事ですよね。」
 
ことり「はい。」
 
少女「そうですね。もう深夜ですし・・・。じゃあ、明日「翠屋」に行きますのでその時に自己紹介をしましょう。」
 
望「ええ。」
 
ことり「はい。」
 
風音「そうですね。」
 
少女「それでは・・・みなさんさようなら。」
 
風音達は少女に別れの挨拶をして別れた。そして・・・
 
風音「じゃあ僕たちも高町家に帰りますので、さようなら。」
 
ことり「はい。望ちゃんも風音くんもお休みなさい。
 
マンションの入り口で風音と望はことりとも別れた。
 
こうして、深夜の戦いは終わった。新たな疑問を残して・・・


同時刻  海鳴市  マンション屋上
 
??「一応「神速」と「薙旋」は思い出したようだね・・・。」
 
一人の中年がマンションの屋上から風音達を目撃して呟く。
 
??「・・・うん。そうだね。でも、これからが大変だよ。秋人さん。」
 
それを聞いて金髪の少女が浮かぬ顔をして言う。
 
秋人「まあね。でも、彼なら大丈夫さ。彼は華音市の「ゲーム」でも生き残った子だからね。」
 
??「確かにそうだけど・・・。でも・・・今度はダメかもしれないよ。」
 
それを聞いて秋人は少女の肩を叩いた。
 
秋人「心配なのは分かるけど・・・友達なら信じなきゃ。さくらちゃん。」
 
さくら「うん。そうだね。信じるよ・・・。」
 
秋人はさくらのその言葉を聞いて笑顔になる。
 
秋人「じゃあ僕は一旦風音市に帰るね。彼の事を彩ちゃん達に報告したいから。」
 
さくら「お願いします。」
 
二人はそう言うと別れた。
 
秋人と別れたさくらは暫くそこにいた。そして・・・
 
さくら「友達なら・・・信じなきゃ・・・か。でも、ボクにはそんな資格はないんだ。お兄ちゃんや音夢ちゃん、それにことりちゃんや眞子ちんを悲しませただけでなく、祐一くんの記憶を奪われる原因を作ったんだから・・・。」
 
さくらはそう言うとマンションの屋上をあとにした。
 
 

to be continued ・ ・ ・


 
あとがき
 
菩提樹「どうも菩提樹です。今回のゲストは・・・。」
薫「神咲薫です。遅い登場ですが・・・。」
菩提樹「すみません。どうしても書きたい事が次々と出てしまって・・・登場させるのが遅くなりました。」
薫「まあ。ええけど。でも、今回の話は色々な事のオンパレードやね。望ちゃんが技を使うし、風音くんが「薙旋」を出すし、影人の正体が分かるし、さくらちゃんと秋人さんが又登場するし・・・。」
菩提樹「ええ。このSS最近ちょっと謎が多くなっていたので今回はその皆さんの疑問に答える事にしました。」
薫「まあ、新たな疑問も出てきたけど。」
菩提樹「うっ・・・。風音くんが助けた青い髪の女の子ですか・・・。」
薫「それだけじゃないと思うけど・・・。新たな「夜の一族」金剛と片銀もやね。」
菩提樹「すみません。金剛と片銀については展開上まだ詳しく書けません。しかし、風音が助けた少女の正体は次回書きます。」
薫「次回の話って・・・確か「翠屋」の話の・・・。」
菩提樹「はい。期待していてください。彼女も登場させますので。」
薫「風音くんの着る制服の事でまだ迷っているのにか・・・。」
菩提樹「うっ・・・。それでは次回又お会いしましょう。ではでは。」
薫「逃げたか・・・。」