私は今日になって気付いた事があります。
力が・・・HGSが弱まってる。
ヒーリング
『治癒』や『心読』はまだ使えるけど、テレポートやサイコキネシスや雷撃等の攻撃系の能力が使えなくなっている。
昨日風音さんを助けるのに能力を使いすぎたのが原因かもしれないが、こんな例は一度もない。
体力が回復すればHGSも使えるようになっているのだから。
でも・・・困りましたね。
これでは風音さんの力になる事ができなくなりますね。
どうしよう・・・。
・・・でも勝手ですね。
一時はこの能力を毛嫌いしていたのに・・・。
現在はこの能力を必要としているなんて・・・。
でも・・・戦うしかない。
私も風音さんの仲間だから。力になりたいから・・・。
それに・・・『龍』が関わっている時点で・・・
風音さんだけの問題ではないのだから。
これは・・・私の戦いでもあるのだから。
私達を作った彼女・・・佐和田も絶対に一枚噛んでる。
だから・・・戦おう。
風音さんだけでなく・・・自分の為にも・・・。
Tear...
Story.10 フィリスの因縁
3月23日―――PM1:00 海鳴市 海鳴大学病院
風音は一応身体を診て貰う為に海鳴大学病院に行く事になった。本人はもう大丈夫だと言ったのだが、桃子の圧力とフィリス強い薦めで行かざるを得なくなったのである。
そして、診察室でちょっと待った後に風音が呼ばれる。
フィリス「―――特にもう異常はありませんね。骨に新たな損傷もありませんし、出血ももう大丈夫です。」
フィリスは笑顔で言う。
風音「・・・そうですか。ありがとうございます。」
風音はフィリスに礼を言うが、何故か顔が晴れなかった。
フィリス「あのう・・・風音さん。どうしました。元気がありませんが・・・。」
風音「えっ・・・。」
風音はその言葉ではっとなった。
風音「いや・・・。昨日のことを考えていたんですよ。僕の戦いなのに・・・フィリスさんと望さん、そしてわかばさんまで巻き込んでしまいましたので・・・。」
フィリス「そうですか・・・。」
風音「でも・・・その事を望さんに話したら、望さんは『一人で、何でも背負いこまないでください』って言ったんです。どうしてこんな事が言えるのだろうと思いまして・・・。恨まれても仕方がないのに・・・。」
フィリス「なあんだ。そんな事ですか・・・。」
風音「えっ・・・どう言う事ですか?」
風音はフィリスの言葉に驚く。
フィリス「強いて言うならあなただからですよ。」
風音「はあ・・・。」
フィリスは喋り続けた。
フィリス「それに私にとってはこの戦いは『運命』みたいなものですし・・・。私も貴方と同様「龍」と因縁のある人間ですから・・・。」
風音「フィ・・・フィリスさん。」
フィリス「・・・話しましょうか?私の過去を。」
風音は黙ってコクンと頷いた。
フィリス「それでは外に出ましょう。そろそろ休憩入りますから。」
フィリスはそう言うと風音の手を引っ張って大学の庭に出た。
PM1:30 海鳴市 海鳴大学病院 西庭
フィリス「私は・・・HGS能力の持つリスティ・C・クロフォードのクローンLCシリーズの一体として「龍」によって造られた人間なのです。」
風音「えっ・・・。」
風音はそれを聞いて驚きを隠せなかった。
フィリス「風音さん・・・。私はいくつだと思います。」
風音「どう見ても20歳くらいにしか見えませんけど・・・。」
風音は頭を抱えて答えた。
フィリス「そうですか・・・。実は私は戸籍上ではまだ8歳なんですよ。」
風音「そ・・・そんな。」
フィリス「本当です。そして、7年前にさざなみ寮にいたオリジナルのリスティと仁村知佳さんを手に入れる為にさざなみ女子寮を襲撃しました。同じLCシリーズのセルフィと共に。」
風音「・・・。」
フィリス「でも、それは失敗に終わり、私達を造った佐和田は香港警防隊に逮捕され、私は今のお父さん 矢沢先生の元に引き取られました。これで・・・全ては終わったかと思いました。」
風音「終わってなかったんですね・・・。」
フィリス「ええ。」
フィリスはそう答えると少し黙ってしまった。
風音「その佐和田という人が脱獄したんですね・・・。」
フィリス「はい。つい1ヶ月程前に・・・。」
フィリス「だから・・・この戦いは私にとっては『宿命』なのですよ。そして、佐和田を倒さない限り本当の自由は手に入らない・・・。」
フィリスはそう言って握り拳を作る。その拳は怒りで震えていた。
フィリス「だから、私からもお願いします。自分を責めないで下さい。」
風音「・・・はいっ。頑張ってみます。」
そう言って二人は握手をした。
それから十分後・・・
フィリス「う〜ん。遅いですね。」
風音「何がですか?」
フィリス「注文した「翠屋」のシュークリームですよ。風音さんが来るちょっと前に頼んでおいたのですが・・・。」
風音はそれを聞いて「えっ?」という顔になった。
フィリス「あっ。風音さんは知らなかったんですね。「翠屋」は配達サービスもやっているのですよ。一時期美由希さんがよく配達用のケーキを盗み食いしていたのでやってない時期がありましたが・・・。」
風音はそれを聞いて呆れる余り頭を抱えた。
風音(美由希さん・・・それは犯罪です。止めて下さい・・・。)
その時だった。
眞子「こんちわ〜。「翠屋」デリバリーサービスで〜す。」
後ろから眞子が現れた。
風音はその声に驚いてコケた。
眞子「あっ。神楽もいたんだ。桃子さんから聞いたんだけど神楽も明日から「翠屋」でバイトするんだよね。」
風音「えっ。ええ。」
風音はそう言いながら立ち上がる。
眞子「そっか。良かった。」
風音「何でですか?」
眞子「神楽と一緒に仕事が出来るからよ。って、フィリスさん・・・勘違いしないで下さいよ。別に神楽の事が好きだからと言う訳じゃないんですから。」
フィリス「ほっ・・・。」
フィリスはそれを聞いて安堵する。
眞子「・・・やっぱ勘違いしていましたね。」
風音「??」
しかし、当の風音は話題についていけなかったのか頭に「??」を浮かべていた。
眞子(あんた・・・フィリスさんの気持ちに気付きなさいよ。ったく・・・こういう所も相沢とそっくりなんだから。)
眞子は心の中で呆れる。
PM2:00 海鳴市 海鳴大学病院 西庭
眞子「それじゃあ私はまだ仕事があるから「翠屋」に戻るね。いつまでも此処で油売ってる訳にもいかないから。」
眞子はそう言って立ち去ろうとするが・・・。
フィリス「・・・お勘定忘れてますよ。」
フィリスがそう言って眞子を引き止めた。
眞子「あっすみません。プリンシュー1個とクリームカスタードのシュー2個に配送料30円プラスされますので合計820円になります。」
フィリスはそれを聞いて820円を眞子に渡した。
眞子「まいどあり〜。次回もよろしくお願いします。後、神楽。明日から仕事頑張ろうね。」
眞子はそう言うと風音にウインクして去っていった。
眞子が去ってから数分後・・・
フィリス「・・・風音さん。「翠屋」のケーキを食べた事はありますか?」
風音「・・・いいえ。ありませんけど。」
風音は素直に答える。
フィリス「じゃあ食べてみて下さい。これおいしいんですよ。」
そう言って自分が注文したプリンシューを風音に手渡した。
風音「えっ。これはフィリスさんの・・・。」
そう言ってプリンシューをフィリスに返そうとするが・・・。
フィリス「完治祝いですよ。気にせずに食べて下さい。」
そう言って受け取ろうとしなかった。
風音「でも・・・。」
フィリス「私はあげると言っているのです。素直に受け取って下さい。」
風音「・・・はい。」
力無げに頷いた。
風音はプリンシューを口に入れて咀嚼する。が・・・。
風音「・・・。あっ・・・甘い。」
プリンシューを食べた瞬間に風音はあまりの甘さに頭を抱えた。
フィリス「ちょっ・・・風音さん大丈夫ですか・・・。」
フィリスは風音の側に駆け寄った。
風音「・・・ええ。どうやら甘い物は苦手なようですね。こういう時に記憶喪失って困りますね。」
フィリス「すみません。」
フィリスは風音に謝った。
それから数分後・・・
風音「じゃあ僕も帰ります。どうもありがとうございました。」
フィリス「はい。どういたしまして。又来て下さい。」
そう言って風音も高町家に帰った。
フィリス「・・・言えませんでしたね。でも・・・その方が良かったのかもしれません。」
フィリスはそう言うとジッと手を見る。
フィリス「やっぱり私のHGSの力は落ちてる・・・。」
よく見ると手は恐怖で震えていた。
フィリス「でも・・・もう引けない。これは私の『因縁』なのだから。それに・・・今の私は一人じゃない。仲間がいる。だから・・・大丈夫ですよね。風音さん。望さん。」
彼女はそう言うと診察室に戻っていった。
to be continued・・・
あとがき
菩提樹「どうも久し振りの菩提樹です。さて今回は・・・。」
なのは「高町なのはです。どうも皆さんこんにちは。」
菩提樹「母親の教育がいいのか礼儀正しいお子さんですね。」
なのは「ありがとうございます。(///)」
菩提樹「23日の話はこれで終わりです。次回は「翠屋」が舞台です。・・・でもどうでしたかね?」
なのは「う〜ん。何とも言えませんね。でも、今回はフィリスさんの戦う理由がハッキリしましたね。」
菩提樹「そうですね。でも、HGSが低下しちゃったからこれからが大変ですよ。」
なのは「それは菩提樹さん。貴方次第ですよ。」
菩提樹「やっぱし・・・。(まあフィリス先生についてはいろいろと考えてるからいいか。)それでは皆さん次回もよろしくお願いしま〜す。」