3月23日―――AM5:00 イギリス クリステラ・ソングスクール
何故かこんな早い時間に目が覚めたので私は仕事をしていた。
その時、パソコンの受信メールをチェックしていたらこんなタイトルのメールが入っていた。
「ユウイチ・アイザワの消息に関する情報」
それを見た時私は最初誰かのイタズラか誤報かと思った。
だって・・・ユウが生きている筈がないのだから。
ユウはもう死んだのだから。
あの、悲しい思い出のある街で・・・。
だからこのメールはアイリーンあたりが書いたものだと思っていた。
しかし・・・
そのメールの送り主は意外な人だった。
??「送信者は・・・サクラ・ヨシノ??」
サクラ・ヨシノ・・・。
確かユウとほぼ同等のIQを持った天才で「魔女」の血を引く少女だ。
子供の頃にユウに紹介されて一度会った事があったな。
??「でも・・・。何でサクラがこんなメールを・・・。」
私は気になってそのメールの中身を読む事にした。
そこには・・・とても驚くべき事が書かれていた。
おしさしぶりです。CSS(クリステラ・ソングスクール)校長フィアッセ・クリステラさん。
あなたの弟と言ってもよい相沢祐一くんの消息が分かりましたので、お知らせします。
相沢祐一くんは戸籍上では一ヶ月前に華音市で死亡した事になっていますが、彼は生きています。
現に三週間くらい前まではボク達の住んでいた島にいましたし、ボクも彼に何度か会っています。
しかし、ボクの友達の異常を察して、彼は三週間前にボク達の前から姿を消しました。彼は気付いてしまったのです。彼自身の能力と「枯れない桜」は無関係では無い事に・・・。そして、必死の捜索で彼が海鳴市にいることがわかりました。
しかし・・・ボクが調べた時にはもう彼は彼でなくなっていました。記憶を奪われたのです。
「夜の一族」によって・・・。
現在の彼は「夜の一族」と過去に貴女を殺そうとした組織に命を狙われています。
後、彼を世間的に抹殺し、彼のいた街を破壊したのも「夜の一族」です。
・・・その理由は貴女もよくご存知だと思います。
ボクがお伝えする事は以上です。こんな酷な事を知らせて・・・すみませんでした。
芳野さくら
フィアッセ「・・・。」
このメールを読み終わってから私は一言も言葉を発する事が出来なかった。
信じられなかったのである。「夜の一族」のやった事が・・・。
フィアッセ「忍・・・。さくら・・・。貴女達はどっちなの?」
私は小声で呟いた。そして・・・。
フィアッセ「一応この事はエリスとアイリーンにも伝えよう。あの子達もユウの事が好きだったから・・・。」
フィアッセはそう言うと、電話のダイヤルをプッシュした。
フィアッセ(ママ・・・これからどうなるんだろう。)
彼女の心は不安でいっぱいだった。
Tear...
Story.9 朝食と自己紹介
3月23日―――AM 6:00 海鳴市 高町家
風音「んっ・・・。ここは・・・。」
風音ははっとなって目を覚まし、眼鏡をかける。そこはどっかの家のリビングだった。
風音「あっ・・・そうか。ここは高町家だ。確かことりさん達と話した後に高町家に戻ったけど・・・玄関で倒れたんだ。」
そして胸を見ると、包帯が巻いてあり、ちゃんと止血されていた。もう痛みも感じない。
風音「又、フィリスさん達に迷惑をかけてしまいましたね。」
風音はそう言って起き上がった。そしてリビングをよく見ると・・・。
風音「うっ・・・。散らかってますねえ。酒の空き瓶や甘酒のパック・・・。酒臭さが強烈・・・。うわっ・・・このおつまみまだ食べられるのにこんなにこぼして・・・。」
風音は混沌と化していたリビングの状態に呆れる。
風音「・・・掃除でもしますかね。見ず知らずの僕を泊めてくれましたし・・・。」
風音はそう言うと雑巾を見つけて掃除を開始した。
そして15分後・・・
風音「・・・掃除は終わりましたが、皆さんまだ起きませんね。よし。今度は朝食でも作りますかね。」
風音はそう言うとキッチンへと向かった。
AM6:20―――高町家 キッチン
風音はキッチンに着くと冷蔵庫を開けて中身を確認する。
風音「うん。卵に玉ネギにケチャップに人参に鶏肉。これでいきますか。ご飯もさっき炊きましたから。」
風音は冷蔵庫の中から卵などを取り出す。そして、人参や玉ネギ等の野菜をみじん切りにし、鶏肉も小さく切る。そして、その後に卵を数個割ってかき混ぜてフライパンで温める。そんな事をしている内に電子ジャーのご飯が炊ける。数分時間を置いてから、電子ジャーのご飯をもう一つのフライパンに移してご飯にケチャップをかけ、切った野菜や鶏肉をその中に一緒に入れて炒める。そして、炒め終わったご飯を今度は薄い卵焼き状態となった卵の上に乗せた。そして、素早く卵を包む。
風音「よし。オムライスはこれで完成。あとは・・・何かスープでも作りますかね。」
風音はそう言うとオムライスを作るときと同じ要領でスープを作り始めた。
それから数十分後・・・
??「あう〜。寝過ごした〜。ど〜しよ〜。」
??「やかましぃ!いちいち喚くなおさる!!他の人が起きたらどうすんや!?」
青い髪の少女が現在の時間に驚いて大声を上げ、もう一人の緑色の髪の少女がソレを叱っているのだが・・・その声も大きかったりする。
結果としてそれらの大声がその他大勢の目覚ましとなったのは言うまでもない。
そんな大声を聞いた風音は・・・
風音「皆さんも起きてきたようですし・・・・・・皿を用意してと。」
そう言って朝食の盛り付けを始めた。
AM7:00―――高町家 キッチン
食堂に入ってきた人達の反応は面白かった。わかばと大声を出していた二人の少女の三人は口を開けてぽけーっとしてるし、美由希と桃子は「おぉ〜」と感嘆(?意外に順応性があったのは望と黒い服を着た青年とその妹と思える少女だった。
そして、一同が椅子に座って、
風音を除く全員「「「「「「「「いただきま〜す!!」」」」」」」」
風音「…………いただきます。」
まずいっせいに高町家のメンバーが食事の挨拶を行い、それに少し遅れる形で風音が挨拶をした。
青い髪の少女「うん。このオムライス卵がふんわりしててすっごく美味い。」
緑色の少女「そうやな。このスープもいけるで〜。」
大声を出していた二人の少女はそう言いながら、風音の作った朝食を物凄いスピードで食べる。
皆より少し遅いペースで食べていた桃子は今朝食最大の疑問を口にした。
桃子「この朝ごはん作ったの…………誰?洋食だからレン以外だと思うんだけど。」
レンという少女「うちと晶は一緒に寝過ごしましたから違いますよ〜?」
桃子「じゃぁ…………わかば?」
その言葉につられて皆の視線がわかばに集中する。
わかば「いいえ。わたくしも違いますわ。」
桃子「じゃあ・・・ひょっとしたら・・・。」
望「風音さん・・・ですか。」
望がそう言うと今度は周りの視線は風音に集中する。
風音「・・・・・・はい。僕です・・・。」
それからきっかり十秒後
桃子「風音くん…………。」
桃子が風音に話しかけた。
風音「何ですか・・・?」
桃子「翠屋にバイトする気はない?勿論住み込みでいいからさ。」
その言葉に他の人は驚きの声を上げる。
青年「母さん、食事中にそれは無いと思うんだが?」
一番食事に集中していた筈の黒い服の青年が桃子の発した言葉にツッコミを入れる。
そして、周りの人間も「うん。うん。」と頷く。
桃子「そんな事言うけど………最近恭也が忍ちゃんばっかり構って翠屋の手伝いを少ししかしてくれないから大変なのよ。」
恭也「うっ・・・。でもだぞ・・・。彼は記憶喪失だからそっちの方の解決を優先するべきなのでは・・・。それに今は望とわかばもいるんだし、ことりって子と眞子って子も手伝ってるじゃないか。」
風音「えっ・・・。」
風音は恭也の言葉を聞いて驚いた。
望「風音さんすみません。大方の事情は・・・話しちゃいました。」
風音「いえ、いいですよ。少し驚いただけですし。」
そんな事を話し合っている内に全員朝食を食べ終わった。
AM7:35―――高町家 リビング
朝食を食べ終わった後に一同はリビングに集まった。
風音「それでは皆さん。自己紹介をお願いします。」
そう言って自己紹介が始まった。
青い髪の少女「よし。じゃあまずは俺から。俺の名前は城島晶です。料理が結構得意です。後、明心流空手をやっています。」
緑の髪の少女「次はウチや。ウチは鳳蓮飛(フォウ・レンフェイ)って言います。と言いましても母親の方が関西の人ですけど。武道は棒術と中国拳法をやっています。ちなみにそこにいるおさるとは違って文武両道です。」
晶「おい。何だと亀〜。」
晶はそう言ってレンに食って掛かる。
レン「ふん。やるか〜おさる〜。」
晶「ああ。望むところだ!!」
二人が戦闘モードに入ろうとしたその時だった。
??「二人ともケンカしない〜!!」
この中で最年少と思える子供が二人を止めた。
??「晶ちゃんもレンちゃんも自己紹介の時にまでケンカしない!!」
晶・レン「「はい。なのちゃんごめんなさい。」」
二人は正座してシュンとなった。
??「さっきはすみません。では気を取り直して。なのはは高町なのはと言います。おにいちゃんやおねえちゃんとは違って運動とかは駄目ですが、機械には強い方です。」
風音「うん。よろしくなのはちゃん。僕は神楽風音と言います。ここにいる間色々と迷惑をお掛けするかもしれませんが、よろしくお願いします。」
風音は笑顔であいさつした。
美由希「じゃあ今度は私ね。私は高町美由希と言います。剣は御神流という流派を兄の恭ちゃんから習っています。と言いましても、私とは昨日翠屋でお会いしたから自己紹介の必要って・・・なかったですかね?」
美由希は自嘲気味に笑う。
風音「いえ。そんな事ありませんよ。どうもありがとうございます。」
風音がそう言うと次は桃子の番になる。
桃子「私は昨日自己紹介したから・・・・次は恭也ね。」
恭也「えっ?望とわかばをとばしていないか?」
望「私とわかばは昨日風音さんに会いましたので必要ありません。」
恭也「そうか。じゃあ最後に俺だな。俺は高町恭也。なのはの兄で「小太刀二刀・御神流」の使師範代を務めている。」
風音「えっ・・・。御神流って僕と同じ・・・。」
風音はそれを聞いて驚く。
望「ちょ・・・。それってどういう・・・。」
望は恭也に質問しようとしたが・・・。
恭也「悪いがそれは俺も分からない。フィリス先生から一応話は聞いたが、俺自身俺達以外に御神流の使い手がもう一人いたとは思ってもいなかったから・・・。」
風音「そうですか・・・。」
恭也「ああ・・・すまない。力になれなくて。」
風音「いえ・・・。気にしないで下さい。」
こうして、自己紹介は終わった。いろいろな疑問点を残して・・・。
AM10:00―――高町家 裏庭
風音がちょっと庭に出ようとした時、先客がいた。
望「八十一、八十二、八十三・・・。」
望が木刀で素振りをしていたのである。
望「九十七、九十八、九十九、百・・・。」
望は素振りの途中で風音の存在に気付き、素振りを中断した。
望「あれっ。風音さんどうしました?」
風音「いや、この家の庭はどうなっているのかを見たくなってちょっと外に出たら、望さんが素振りをしていたので見ていました。邪魔・・・でした?」
望「いいえ。邪魔ではありませんけど・・・。」
風音「そうですか・・・。でも、無茶しないで下さいよ。昨日の事もありますし・・・。」
風音はそう言って立ち去ろうとする。しかし・・・
望「それは・・・風音さんにも言える事じゃないのですか?」
望は笑顔で反論した。
風音「えっ・・・。僕は・・・無茶なんかしていませんよ。」
風音はそれを聞いて立ち止まる。
望「いいえ、かなり無茶していますよ。自分がボロボロの状態であるのに関わらず、私を助ける為に戦ったり、病院までオンブしたりしたくらいですしね。」
風音「・・・。」
風音は何も言い返せなかった。
望「お願いですから・・・。私達の為に・・・一人で、何でも背負いこまないでください・・・。」
ギュッ!!
望はそう言うと後ろから風音に抱きついた。
風音「ちょ・・・望さん止めてください。」
望「すみません。ちょっと疲れちゃいましたので少しだけこのままでいさせて下さい。」
風音「分かりました。少しだけですよ。」
そう言って風音の顔は少し赤くなる。
望「はい。すみません。」
風音もそこまで言われるともう了承するしかなかった。
そして・・・高町家の人達には普通の、風音にとっては騒々しかった朝が終わる。
to be continued・・・
あとがき
菩提樹「どうも菩提樹です。やっと23日に入りました。さて今回のゲストは・・・」
わかば「藤宮わかばです。やっとあとがきに登場するまでかなり時間がかかりましたが・・・。」
菩提樹「すみません。わかばさんの台詞って本当に書き辛いので・・・。」
わかば「いいえ。お気になさらないで下さい。今回の話でやっと高町の皆さんが登場しましたね。それにフィアッセさんも。」
菩提樹「はい。予想よりも遅くなりましたが・・・。」
わかば「そういう時もありますよ。でも、今回の話では望ちゃんが神楽さんに何気に急接近していますわね。」
菩提樹「はい。ヒロインの一人であるにも関わらず最近活躍してなかったので今回はこういった話にしました。」
わかば「でも、望ちゃんもこれから大変ですわね。神楽さんの事が好きな人は望ちゃんだけじゃありませんからね。」
菩提樹「そうですね。特に前の話に登場した白河ことりさんは要注意ですね。」
わかば「はい。でも、それにめげずに頑張って欲しいですわ。」
菩提樹「それではまた〜。次回は23日の後編です。」