3月22日―――PM  6:20  海鳴市  翠屋
 
 
わかば「ありがとうございました。」
 
 桃子「チーズケーキの方もう暫くお待ち下さい。」
 
 美由希「お待たせしました、ホットコーヒーとタツタサンドです。」
 
 こんな時間であるにも関わらず、翠屋はまだ繁盛していた。その為、病院から帰ったばかりのわかばも仕事を手伝う事になった。
 
桃子「ふう。忙しい。忙しい。全く、ことりちゃんも眞子ちゃんも何処行ったのよ?」
 
美由希「そうだね。休憩にしては遅いね。」
 
わかば「そうですわね。もう50分も休憩していますわ。」
 
桃子「・・・二人とも違うでしょ。全く。風音君もまだ戻ってなかったし、ことりちゃんも眞子ちゃんも・・・戻って来たら三人とも説教ね。(怒)」
 
美由希・わかば((こ、怖い・・・。))
 
怒りバージョンの桃子を見て美由希とわかばはがたがたと震えた。だが、その時・・・
 
 
カラン!!カラン!!
 
 
ドアが開いて次の客が入ってきた。しかし・・・
 
わかば「あっ・・・。いらっしゃいま・・・。」
 
わかばは台詞を言うのを途中で止めた。何故なら・・・。
 
その時入ってきた人間は・・・さっきまで話のネタになっていた神楽 風音と白河 ことりと水越 眞子の三人だったからだ・・・。


 
 
Tear...
 
Story.8 Reason
 

 
 風音達が翠屋に入ってから数分後・・・
 
 
わかば(何で、神楽さんがここに・・・。それに・・・この人達は・・・。)
 
美由希(ことりさんも眞子さんもタイミングが悪いわよ・・・。でも・・・この人は・・・。)
 
二人がお互いの知り合いの連れて来た人間に注目する・・・。そして、その間周りは静寂に包まれる。しかし・・・
 
風音「あっ。わかばさんが何故此処に?それにここの喫茶店のエプロンをしてますけど。」
 
風音のその一言で静寂は破られた。
 
わかば「あっ。神楽さん。お帰りなさい。良かったですわ。道に迷ったかと心配でしたから。」
 
わかばは笑顔でそれに答える。
 
わかば「後、この格好は桃子さんの経営している喫茶店ですので・・・。」
 
風音「成る程。すみませんが、ちょっと奥の席を貸してくれませんか?連れの二人とちょっと話があるので。」
 
わかば「はい。分かりましたわ。」
 
わかばはそう言うと風音達を奥の席に案内する。そして・・・
 
ことり「すみません。アップルパイとレモンティをお願いします。」
 
眞子「じゃあ私はシュークリーム二個お願いね。」
 
ズココッ!!
 
 
それを聞いて風音と美由希はずっこけた。
 
眞子「あれ、どうしてずっこけてんの!?」
 
ことり「そうですよ。風音くんは何にします!?」
 
二人は何もなかったかのように真顔で問いかける。
 
風音「いや、席に着いた途端いきなり注文をしていたので・・・。」
 
美由希「・・・って二人ともここのバイトでしょうが・・・。注文してないで早く手伝って下さい。」
 
眞子「あっ・・・ゴメン。もうちょっと待ってくれない。こいつと話したい事が・・・」
 
眞子はそう言ってバイトから逃げようとする。しかし・・・
 
風音「バイトが終了するまで待ちますから・・・頑張って下さい。」
 
神は彼女達に味方しなかったようだ。
 
ことり・眞子「「えっ!?」」
 
風音「この店に知り合いがいたので、話はバイトが終わってからでも構いません。」
 
ことり(か・・・風音くん。)
 
眞子(神楽のバカ!!)
 
美由希「じゃあそういう事で・・・着替えてください。」
 
ことり・眞子「「は〜い!!」」
 
ことりと眞子は渋々頷いた。
 

 
 PM7:00―――海鳴市  翠屋
 
 
ことり達がバイトに戻ってから40分後・・・閉店まであと30分・・・
 
その時だった。
 
 
??「ぎゃ〜!!のわ〜!!のえ〜!!」
 
隣近所からいきなり物凄くでかい叫び声が聞こえてきた。
 
風音「あのう・・・わかばさん・・・これは・・・。」
 
わかば「あっ。これはフィリス先生が恭也さんの整体をやっていますから・・・。」
 
 
風音「えっ!?」
 
風音はそれを聞いて驚く。
 
風音「でも、整体であんな事に・・・。」
 
わかば「なりますわ・・・。」
 
風音「フィリスさんって何者・・・。」
 
わかば「そう深く考えない方がいいですわよ。」
 
風音「そうですね・・・。」
 
風音はこの事に関して首をつっこまないことにした。
 
世の中には知らなくてもいいことがあると言うがこれは本当だなと思わずにはいられない風音であった。


 
 PM7:40―――海鳴市  翠屋
 
 
ことりと眞子のバイトが終わって、一番奥のテーブル―――そこは、ことり達の貸し切り状態となっていた。
 
風音「じゃあ、話してくれませんか?「呪われた子供」について?」
 
眞子「ええ、いいわよ。でも、どっから話そうかな?」
 
ことり「ここは単純に何故「呪われた子供」が「龍」と「夜の一族」に命を狙われているのかを説明した方がいいと思いますよ。」
 
眞子「OK。じゃあ、そこから説明するわ。」
 
風音「はい。お願いします。」
 
こうして、眞子の説明が始まる。
 
眞子「一言で言えば、「夜の一族」は私達「呪われた子供」の血を吸う事ができないからかな。」
 
風音「えっ?それってどういう事ですか?ちょっとおかしくありませんか?」
 
風音は首をかしげて質問する。
 
眞子「別におかしくはないわよ。「夜の一族」は他人の血を吸って様々な能力を使ったり、自分の力を上昇させたりするけど、私達「呪われた子供」の血を吸った場合はその逆。属性反発作用を起こして、能力値が低下したり酷い時には消滅するって事もあるのよ。これが狙われる理由の一つ目。」
 
ことり「もう一つの理由は私達「呪われた子供」には「夜の一族」の状態変化系の能力は効かないからです。例を挙げれば魔眼とか洗脳とかそう言った類の能力です。」
 
ことりも眞子の説明に付け加えるように続けて説明した。
 
風音「自分達の能力が効かない者への粛清という訳ですか。「夜の一族」が僕らを襲うのかが分かりましたが、「龍」についてはどうなんですか?」
 
ことり「それは・・・「龍」の中に「夜の一族」がいるからだと思います。詳しくは分かりませんけど。実際、彼等は「夜の一族」からの依頼で動く事が結構ありますし・・・。」
 
風音「つまり「夜の一族」と「龍」の繋がりは深いという訳ですか。」
 
眞子「うん。月村 安次郎がその例だし。」
 
風音「成る程。でも・・・あなた達まだ何か隠していません?」
 
風音はことりと眞子に問いかける。しかし・・・
 
風音「・・・。」
 
ことり「・・・。」
 
眞子「・・・。」
 
数分経ったが、三人とも何も言葉を発しなかった。

 
同時刻  海鳴市  翠屋
 
 
桃子「ねえ。わかば。あの子達の話聞こえる?」
 
わかば「いえ。全然聞こえませんわ。」
 
もう閉店時間であるのに関わらず、高町 桃子と藤宮 わかばはまだ翠屋にいた。二人ともあの三人の事が気になったのでこっそり店に残ったのである。
 
桃子「ああ。もう。何で三人とも何も喋らないのよ。今まで何を話していたのか物凄く気になるじゃないの。」
 
桃子はイライラしていた。そして・・・
 
桃子「風音くんがどっちを選ぶのかすっごく気になるじゃないの。」
 
 
どてっ!!
 
桃子のその台詞を聞いてわかばはずっこけた。
 
わかば「も・・・桃子さん。それはちょっとありえないのでは・・・。」
 
桃子「じゃあ・・・望とフィリス先生はどうなのよ。今日会ったばっかなのに。」
 
わかば「そ・・・それは・・・。」
 
桃子「いいもん。いいもん。家に帰ったら望とフィリス先生にことりちゃんと眞子ちゃんの事言ってやるんだから。」
 
わかば「桃子さん。すねないで下さい。でも、何か忘れていません・・・。」
 
桃子「あっ・・・。夕飯の支度忘れてた・・・。今日は晶もレンも帰りが遅いって言ってたから・・・しまった!!」
 
 
バタン!!
 
 
桃子はそう言って急いで高町家へと走る。
 
わかば「桃子さん・・・早過ぎですわ。」
 
わかばは桃子の行動の早さについていけず唖然となった。
 
「では、わたくしも望ちゃんの事が心配なので高町家に帰ります。それでは神楽さんすみませんが、翠屋の戸締りの方をお願いしますわ。」
 
カタン!!
 
わかばもそう言うとレジに鍵を置いて高町家に帰った。
 


 
PM8:20―――海鳴市  翠屋
 
 
誰も何も喋らないまま数十分が過ぎて・・・
 
眞子「ねえ。神楽って何者なの?」
 
眞子が突然話を切り出す。
 
風音「えっ!?」
 
眞子「いや。夕方の獣人との戦いの時にあんたが私達が捜している人と同じ技を使ったからさあ。ちょっと気になってね。」
 
ことり「ちょっと・・・眞子ちゃん。」
 
ことりは単刀直入な質問をした眞子を抗議しようとするが・・・。
 
風音「すみません。本当の事を言うと・・・分からないんです。「夜の一族」に記憶を奪われてしまいましたから・・・。」
 
 
ことり・眞子「「ええっ!?」」 
 
二人は風音の言った事にびっくりして大声をあげた。
 
眞子「ちょっと・・・それってどういう事なのよ?」
 
ことり「だから眞子ちゃん落ち着いてください。」
 
眞子「で、でも・・・。」
 
ことり「眞子ちゃん!!」
 
ことりは風音に迫っていた眞子を慌てて止める。
 
眞子「ご・・・ごめん。」
 
眞子は風音に謝った。
 
風音「いえ・・・いいですけど。でも、その人の名前を出来れば教えていただけませんか?僕も気になりますし。」
 
風音はことり達が捜している人物の事が気になったのか名前を聞いた。
 
ことり「えっ・・・。」
 
眞子「ことり。どうする?教えるの?あいつの事。」
 
風音「別に教えたくないのならいいですよ。」
 
ことり「いいえ。そんなことありません。」
 
ことりはそう言って一呼吸する。そして・・・
 
ことり「その人の名前は私の幼馴染で相沢 祐一って言うんです。」
 
風音「相沢 祐一・・・ですか・・・。うっ・・・。」
 
風音は相沢 祐一という名前を聞いた瞬間、気分が悪くなり胸を押さえる。
 
眞子「ちょっと神楽・・・大丈夫?」
 
風音「ええ・・・大丈夫です。ちょっと気分が悪くなっただけですから。」
 
風音はそう言うと胸を押さえるのを止めた。
 
ことり「今日はこれで終わりにしません?風音くんの様子も優れないし、もうこんな時間だし。」
 
眞子「そうだね・・・。今日はこれでお開きにした方がいいね。」
 
風音「そうですね。わかばさん達も帰っちゃいましたしね。」
 
三人はそう言って外に出た。

 
PM8:40―――海鳴市  翠屋

眞子「神楽・・・大丈夫?胸、ちょっと血が出てるけど・・・。」
 
眞子は風音の事が心配なのか問いかける。
 
風音「ええ・・・。大丈夫です。こんなの。」
 
そう言いつつも風音の顔はまだ苦しそうな顔だった。
 
眞子「そう。ならいいけど・・・。良かったら送っていこうか?高町家なら道案内出来るし。」
 
風音「いえ。いいです。わかばさんが地図を置いていってくれたので。」
 
眞子「そう。でも・・・気をつけてよ・・・。」
 
ことり「私達は大体ここにいますから又何かあったら連絡して下さい。」
 
風音「はい。すみません。色々と・・・。それでは・・・。」
 
眞子「じゃあね。」
 
ことり「それでは、さようなら。」
 
風音はそう言うと二人と別れた。


 
風音が高町家に向かって数分後・・・
 
 
眞子「ねえ、ことり。一応今日の事は暦先生に報告しといたほうがいいんじゃない。」
 
ことり「そうですね。いろいろ調べて欲しい事がありますしね。」
 
ことりはそう言うとカバンの中から携帯電話を取り出して電話をかけた。
 
 
 
PURURURURURURURURU!!
 
 
暦「はい。白河ですが。」
 
ことり「あっ・・・。もしもしお姉ちゃん。今日すごく祐一くんに似ている人に会ったんだけど。・・・ちょっと困った事があってね。」
 
暦「えっ・・・。」
 
ことり「その人記憶喪失なんだ。だから、祐一くんかどうかを調べる事が出来なくて・・・。」
 
暦「成る程。それは確かに厄介だな。」
 
ことり「だから、DNA鑑定をお願いしたいんだけど。家に帰ったらそっちに彼の髪を送るから。」
 
暦「ああ。すまない。結果が出たらそっちにデータを送信する。」
 
ことり「うん。ありがとう。それじゃあお休みなさい。」
 
暦「ああ。お休み。」
 
Pi!!
 
 
ことりはそう言って電話を切った。
 
眞子「・・・ことり。神楽って相沢なのかな。」
 
ことり「・・・分かりません。でも、その可能性は高いと思います。風音くんも祐一くんも「呪われた子供」ですから。そう。私達と同じ・・・。」
 
眞子「そうだね・・・。でも、私達は私達で出来る事をやるしかないね。」
 
ことり「はい。それでは私達も帰りますか。」
 
眞子「うん。でも、話してる間に神楽の髪を抜くなんて・・・ことりも抜け目ないね。」
 
ことり「あはは。否定できないっす。」
 
そう言って、二人ともそれぞれのマンションに向かう。
 
こうして、それぞれの物凄く長い一日は終わった。これから起こる事に少しも気付かずに・・・。
           
 
 
to be continued・・・
 



あとがき
 
 
菩提樹「どうも菩提樹です。やっと一日目が終了しました。ここまでくるのが本当に大変でした。さて、今回のゲストは・・・。」
美由希「どうも高町 美由希です。といってもこのSSではまだちょっとしか出ていませんけどね。」
菩提樹「いいじゃないですか。恭也くんなんて叫び声だけなんですから。」
美由希「それはそうだけど・・・。でも、風音さんって何者なの・・・?私達と同じ御神流の使い手だけど・・・。」
菩提樹「それはまだ言えません。」
美由希「ならフィアッセに聞こう。彼の事知ってそうだし。」
菩提樹「止めてください。お願いですから。」
美由希「なら、私の出番増やして。(はあと)」
菩提樹「・・・言われなくても増やしますよ。次の話の舞台は高町家ですから。」
美由希「そうなんですか?」
菩提樹「と言う事でそれではまた〜。」
美由希「でも、うちの店ってタツタサンドなんかあったっけ?」
菩提樹「あるということにして下さい。(泣)ちなみにタツタサンドはKIDのあるゲームから採用しました。」