3月22日―――AM6:30 風音市 鳴風家
カタカタカタカタカタカタカタカタ。カタカタカタカタカタカタカタカタ。Pi!
??「う〜ん。上手くいかないなあ・・・」
鳴風秋人は作業が思う通りに進まないのかパソコンの電源をオフにした。
秋人「これは一体どういう事なのだ?」
彼はそう呟くと自分の部屋の机から1冊のファイルを取り出した。このファイルは彼がある事件を調べるために新聞や雑誌等に掲載されていたその事件に関する記事を切り抜きして作ったものである。
パラパラパラパラ。パラパラパラパラ。
秋人「う〜ん。この事件に関してはどの新聞も雑誌も正確に書かれていないな。海鳴市で最近起きた事件は大きく書かれているのに。」
秋人は再び悩み始める。
秋人(まいったな。全くの八方塞がりだ。これだけの事件ならもっと大きく報道されるのが当たり前なのに…なのに何でどの雑誌も新聞も小さな記事になっているんだ?どう考えても、不可解な点が多すぎる。)
秋人は考える。
秋人(何故だ?何故大きな事件として見られてもおかしくないのに、小さな事件として処理されているんだ?誰かが、この事件に関して詳しく報道されると困ると言う人間が圧力でもかけたのか・・・?だと・・・したら・・・。)
秋人の脳裏に最悪の考えがよぎる。
15分後。
秋人「やめよう。これ以上悩んでも仕方の無い事だ。それに・・・そろそろ朝食作らないとな。もうすぐみなもが起きてくる時間だし。」
しかし、この時彼はまだ気付いていなかった。彼が調べていた事件と海鳴市で起きた事件は無関係では無い事に。
Tear...
Story.2 What’s your name?
AM11:30―――海鳴大学病院425病室
少年「―――――んっ・・・?」
カーテンの隙間から差し込む光の眩しさで目覚めた僕は一瞬、自分が何処にいるか理解できなかった。・・・僅かな間呆然と天井を見詰め、ここが病室だと気付いた僕は何故自分が病室にいるのか考え始めた。
少年「つっ・・・!!」
起き上がろうとしたその時、肋骨に痛みを感じた。そして、その痛みのせいか自分が重傷を負って、倒れていた事を思い出す。
少年(そ、そうだ。僕は確かあの坂で重傷を・・・それで、倒れたんだ。で・・・でも、何でなんだろう?)
僕は再び考え始めた。でも、答えは出て来なかった。
その時だった。
ウイーーーン
ウイーンという音と共にドアが開き、誰かが中に入ってきた。
??「あっ、目を覚ましたみたいですね?」
??「よかったです。かなりの重傷でしたから。」
中に入ってきたのは2人の女性だった。一人は白衣を着ていたのでこの病院の女医だと分かったが、何故か小柄で銀髪の人だった。もう一人の女性は、女医さんとは逆にかなりの長身の人で、髪も長くポニーテールになっていた。
少年「あ・・・あのう・・・ここは・・・それと・・・貴方達は・・・。」
女医さんが僕の質問に答えてくれた。
フィリス「はじめまして。私はフィリス矢沢と言います。見ての通りこの病院、海鳴大学病院の女医です。後、こちらは藤宮望さんと言いまして、あの坂、神楽坂で重傷を負って倒れていたあなたを見つけて救急車を呼んでくれた方です。」
望「はじめまして。藤宮望です。春休みを利用して親戚のいるこの街に遊びに来ました。」
二人はそう言って簡単な自己紹介をした。
少年「呼び方は藤宮さん・・・矢沢先生でいいですかね?」
望「あ、すみません。義妹がいるので望でいいです。」
フィリス「私も名前の方でよく呼ばれるので、フィリスと呼んでくれるとありがたいです。」
少年「じゃあ、望さん、フィリスさんでいいですかね?」
望・フィリス「はい。」
そして、しばらく三人で話し合った。
望「でも、神楽坂であなたを見つけた時はビックリしましたよ。何せ、ランニングの途中でいつも通る坂であなたが倒れていましたから。それで、思わず救急車を呼んじゃいましたが・・・。」
フィリス「でも、結果的にはそれで良かったと思いますよ。かなりの深手でしたし・・・。」
マ、マジですか?迷惑かけてしまったな。
少年「そ、そう・・・だったんですか。ありがとうございます。(笑顔)」
望・フィリス「い、いえっ。(かあっ)」
少年「??」
何故か二人の顔が赤かった。風邪をひいたのかな?
少年「あのう・・・二人共大丈夫ですか?顔が赤いんですけど?」
望・フィリス「だ、大丈夫です!!」
な、何かやけに力いっぱい否定してくれるな・・・ま、まあいいか。
望「それよりも・・・あなたの名前を教えてくれませんか?まだ聞いてなかったし。」
ごまかしたか。まあいいけど。
少年「そうでしたね。まだ名前を言っていませんでしたね。僕の名前は・・・って・・・あれ・・・?」
フィリス「!?どうかされましたか?」
少年「僕の名前は・・・わからない・・・わからないんです・・・。」
望・フィリス「えっ?」
少年「本当なんです。全然分からないんです。正確に言えば自分の名前だけでなく、何故あの坂で倒れていたのかも、自分の家族についても・・・。」
望・フィリス「え〜っ!!」
二人の驚きの余り絶叫した。そして・・・
フィリス「あ、あのう。望さん。身分証明書等はどうなのですか?ここに搬送される時の服装が学生服でしたから学生証くらいは・・・。」
望「ありませんでした。財布もカバンもチェックしましたけど、身元を割り出せるものは何も入っていませんでした。カバンの中も発煙筒とかサバイバル用の道具ばかりで・・・。」
しばしの沈黙。
望「これって、記憶喪失って言うものですよね?」
フィリス「そうです・・・それしかありません。」
少年「やっぱし・・・。」
少年・望・フィリス「はあ・・・。」
三人で溜め息をついた。何の解決にもならないがついた。
フィリス「本当に困りましたね。どうしたらいいのでしょうかね?」
少年「そうですね。『名無しの権兵衛』って訳にもいきませんしね。」
二度目の沈黙。
望「じゃあ本当の名前を思い出すまでの仮の名前を今から決めちゃいません?」
望さんのその一言が沈黙を破った。
少年・フィリス「えっ?」
望「だってここままだと不便じゃないですか?だから・・・。」
フィリス「それ、いいかもしれませんね。」
少年「たしかに・・・いいですね。」
望「じゃあまずは名字から。」
少年「何にしましょうかね・・・。」
かぐら
フィリス「う〜ん。倒れていた場所にちなんで『神楽』にしません?」
望「あっ、それいい名字ですね。それでいいのじゃないですか?」
少年「良い名字ですね。でも、名字が『神楽』だと名前を決めるのが大変じゃないんですか?『神楽』と言う名字に合う名前なんてそうありませんし。」
フィリス「そうですけど・・・。」
と、その時。
かざね
望「じゃあ『風音』という名前はどうですか?私の住んでる街の名前ですけど・・・。『神楽』と言う名字にピッタリだと思いますし。」
フィリス「・・・それ、いいじゃないですか?私は賛成しますよ。」
少年「僕も賛成です。」
かぐらかざね
フィリス「じゃあ『神楽風音』と言う名前で決定ですね。」
少年「はい。」
それから少し間を置いて僕は笑顔で自己紹介を始めた。
風音「はじめまして。僕は神楽風音といいます。まだ、記憶喪失ですが、望さん、フィリスさんよろしくお願いします。」
望「はい・・・。こちらこそよろしくお願いします。」(かあっ)
フィリス「私も・・・よろしくお願いします。」(かあっ)
風音「あのぅ・・・。本当に大丈夫ですか。又、顔が赤くなってますけど・・・。」
望・フィリス「いいえ。気にしないで下さい。」
こうして僕、神楽風音の記憶探しが始まった。これから起こる事も知らずに・・・。
to be continued ・ ・ ・
あとがき
菩提樹「どうも菩提樹です。何とか大学祭前に「Tear...」の第2話が完成したのでとても嬉しいです。では、今回のゲストは・・・。」
望「藤宮望です。私を登場させてくれた事には感謝していますけど・・・わかばと一緒に登場したかったです。」
菩提樹「すみません。「とらハ3」のキャラも第2話で登場させたかったので・・・」
望「まあ、いいですけど・・・早めにお願いしますね。早めに出さなかったら・・・分かっていますね・・・。(竹刀を菩提樹の首筋に向ける)」
菩提樹「はい。善処します。でも、これから忙しくなるから第3話はいつ書けるのかは分かりません。すみません。」
望「大学祭の後にはアビバの試験ですからね・・・そちらもちゃんと頑張って下さいよ。」
菩提樹「はい。頑張ります。」
望「それでは、Story.3で又お会いしましょう。」